浮世絵の絵具ー細工紅③

従来の復刻版で使われる赤絵具は化学合成絵具ですが、江戸時代は紅花から精製されていました。この絵具を「細工紅」「片紅」「彩色紅」と呼びます。

自分は伊勢半本店さんの細工紅をこれまで使用してきました。これは2008年に行われた立原位貫氏の浮世絵復刻プロジェクトに合わせ復元されたもので、現在も製造・販売されていますが、採算面に於いて今の自分には使用が厳しく別の入手方法を見つける必要がありました。(今回の水滸伝だと一枚当り最低でも7グラムの細工紅が必要です、細工紅は1グラム1200円するので赤の絵具だけで8400円かかります。)
自分で作ってみようと思い、頼ったのが町田市にある大賀藕絲館(おおがぐうしかん)です。戦後米沢市の紅花研究家 故鈴木孝男氏が当時途絶えていた江戸時代の紅づくりの研究を重ね浮世絵に使用された片紅を復元されました。その技術は現在同館に受け継がれています。販売されてるか分かりませんでしたが、過去に美術館でのワークショップもされていたのでヒントはあると思いました。結果作り方の教示を頂き原料となる紅花餅(はなもち)も購入できました。また特別に精製された片紅も分けて頂きました。(細工紅と片紅の名称の使い分けが何に基づいているかはわかりません。それぞれが使用されている名称でここでは記しています。)

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今回の水滸伝はこれを使っています。(上写真左が精製されたもの。同右が紅花餅。下写真は絵具にすべく精製された片紅の水分を切っているところです。)

製法に関してはまだ試していないので研究後お知らせします。(紅花餅とは摘み取った紅花を発酵、乾燥させたものです。発酵により紅花内の赤色素がより多く生成され、乾燥させることで保存が効きます。昔から紅花はこのようにして全国の紅製品(口紅、食紅、染色等)を作る人たちのもとへ渡っていました。)

2018.11.28

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