浮世絵の素材ー和紙①

江戸時代、多色摺りの浮世絵には一部上物には越前奉書という紙が、その他多くには政(まさ)(伊予政・伊予奉書)という紙が用いられました。さらに幕末には「地政」と称して、古紙を原料の大半に用いた漉返しの紙が江戸近郊で漉かれ、安価な芝居絵等に用いられていたと言われています。

現代の復刻には一般的に越前奉書が使われています。越前奉書、伊予奉書共に現在も生産されていますが、当然の如く時代の変化、及び製法の変化があり、江戸時代のものとは別物です。
浮世絵版画にとってそれを構成する素材は絵の味わいを生み出す重要な要素です。特に紙は絵の土台となるもので重要です。絵具の発色にも影響します。オリジナルと様々な復刻作品における観察と比較から、オリジナルの持つ味わいは、当時の木版画職人の個人的な技術ということ以上に、そこで使用されている素材に負っているところが大きいと、自分は考えています。経年による変化を考慮しても、今の素材ではオリジナルの持つ自然で素朴な感じは出ません。
装飾品としての絵としての綺麗さだけでなく、オリジナルの浮世絵の「味」も含めた美しさを再現するには、可能な限り江戸の紙に近いものが必要だと思っています。

2017.7.20


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