/航海士/Radar のベクトルって実務上どう使っているんだい!

新人航海士・航海士を目指す学生に向けて、私が実務上どうRadarを使っているか紹介したいと思います。

1.前提知識

Radar・ECDISは、センサーを切り替えることで、
対水速力(Log Speed)・ 対地速力(OG Speed)どちらも表示することが出来ます。

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Sensorを変えたときは、右上のSpeedの表示だけではなく、
「本船と他船のSpeed/ Co の表示」「ベクトル・Trail」も変わります。

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※同じRadar画像なのに、Sensorを変えると、ベクトルも変わる。

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※Sensorを変えると、CTW・STW(対水)、COG・SOG(対地)も変わる

2. 「Radar はLogで使え!」は本当か

「Radarを対地で使用していると、検査の時に指摘される」と言われます。
これはなぜか?
Radarは基本的には、避航操船のために使うものです。
RadarをLogで使用するのは、「見合い関係の判断を間違えないため」です。

※「図説 海上衝突予防法」(福井淡 (原著), 淺木健司 (著))より引用

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上図の通り、船と船の見合い関係は、ベクトルをLOGで使用した時と一致するので、見合い関係の判断を間違えづらくなります。
これは、よく学校で習う話だと思います。

しかし、Logを使用することで、逆に判断を間違えやすくなるケースもあります。

3. Vector(OG)を使った方がよい場面

上述の通り、「船 VS 船」の判断は、LOGの方が良いです。
ただし、「船VSその他」の判断をする際は注意しなければいけません。

① Berthing/ Unberthing
出港時、あるPilotから「ベクトルがおかしい」と指摘されました。
Berthから直角に離れているはずなのに、ベクトルの向きが違うと。
原因は、「SensorをLOGに設定していたこと」でした。
下図を見てください。

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OGにしていれば、Pilotの感覚とベクトルの表示が一致します。
「船VS 船」の関係を判断するときと違って、「本船(船) VS Berth(地面)」の関係は、OGの方が判断しやすいのです。

※Berthing/ Unberthing時は本船のSpeedが遅いので、外力の影響が大きくなります。結果、LOGとOGのベクトルの差は大きくなります。これもPilotが混乱した一因だと思います

② Buoy (example: Suez, Port Said)
Buoyも、ベクトルをOGで使用した方が、操船者の感覚と一致します。
下図は、ある海峡のRadar映像です。Currentが約4-5ktsありました。

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No.8 はBuoyにも関わらず、動いているように見えます。
BuoyはOG Speed(対地速力)がほぼ0です。LOG(対水)で考えると、外力と逆方向に同じ力がかかります。(下図参照) 結果、対水のベクトルを見ると動いているように見えるわけです。

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例えば、Suez、Port saidのApproachなど、Buoyの間に向かってApproachする際は、ベクトルをOGで使用した方が分かりやすいです。

※Anchor船を避けるときもOGの方が分かりやすいです。
下図は錨地のRadarのScreen shotです。
LOGにすると、Anchor船が動いているように見えます。

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③ Way Point と同航船(example: Singapore)
同航船を避航する際は、「追い越すのが変針前なのか、変針後なのか」気にすると思います。
ベクトルを使って判断するならば、OGを使った方が分かりやすいです。

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上図の場合、ベクトル (Log)で判断すると、変針点前に同航船を抜くように見えます。
しかし、Way pointに到達する時間はOGで考えなければいけないので、変針点後に抜くという判断が正しいです。
例えば、Singaporeなど、同行船・変針点が多い海域では注意しなければいけません。

4. まとめ

実際の経験を踏まえて、Radarのベクトルの使い方について紹介しました。
「Radarは、常にLOGで使う!」と覚えずに、場面場面で最適なセンサーを使うべきだと思ってます。

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