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Rushコーチ、Kurutami(くるたみ)の、話。 〜選手の猛反対を乗り越えて、チームの礎となった男の話〜

くるたみ(https://www.youtube.com/user/kurutamitube)は、2018年9-10月あたりからRushに新たに参画した、コーチ兼マネージャーである。
現在はRushベースの寮長も兼ねており、ファンの方たちからは恐らく大会前後に突発的に始まる「SEKIRO配信」という名の、深夜のYouTube配信でのチームの現状や課題、裏側に関するトークがお馴染みかと思う。

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(でかい、本当にでかい。ガチ目の柔道部出身というのもあるがまじででかい)

その経歴は周囲からすれば、「謎」の一言で済んでしまうような人間だ。
まず、CoD経験はほぼ無いに等しく、ましてeスポーツをや、だ。
しかし彼は現在、Rushの「eスポーツチーム」を支える柱であり、私自身が経営やビジネス側の領域に集中することが出来ている理由でもある。

しかしそんな彼の参画は困難を極めた。

立ちはだかる壁・グリード

「うららさん、あの人は絶対駄目。わかる、あのタイプは絶対無理です」

私の心の声(うーーーーわーーーーーでたあああああ グリードの第六感風のただの偏見!!いや分かるけど!!普通なら苦手なタイプだって分かるけど!!)

この日、BO4の特別番組の収録が恵比寿の某スタジオであり、その帰りに近くの店に入った時だ。
くるたみをジョインさせたいというのは、私自身はその一ヶ月くらい前確定していた。なのでここまで色々根回ししておいたつもりだったのだが、甘かった。(orz ←まさにこんな感じだ)

まず去年の反省というか、eスポーツチームの運営・強化において、
「強い男のコーチ」が必要なのは自明だった。
Rushには、圧倒的に男が、父性が足りない。
強く厳しく、共に壁を乗り越えてくれるような人間が必要だった。
もちろん当時から私以外のスタッフは男が多かったのが、ただ男なら良いわけではないのだ。圧倒的に何かしらで選手より強い男が必要だと感じていた。もちろんできればCoDも強いとベターなのだが、残念ながらなかなかそれは難しい。

なので昨シーズン終盤ぐらいからずっとグリードには、
「eスポーツ活動のレベルを、来年は部活の強豪校レベルにあげたい。ただ交流戦やって個別にランクマ回してるようじゃアメリカとの差が埋まらないよ。まず部活の顧問みたいな厳しい人が、うらら以外で必要だと思うんだよ」
とちらほら話題にあげていたのだ。
意外だと思われるが、グリードは高校まで、ウィンレッドは中学までゴリゴリの体育会系だ。両者とも陸上選手で、千葉県と北海道の上位選手だった。しかもグリードは、兼部でソフトテニス部も所属していた。学校はソフトテニスの全国クラスの強豪校で、いわゆる厳しい日本の部活動を経験してきている。(この両名は筋トレにも余念がなく、日本のゲーマーには珍しい体格をしている。)

心の声
(えーーーー部活の顧問みたいな人いたらいいよねえって話同意してくれてたじゃんー!!涙)

しかもグリードだけでなく、ルークも難色を示していた。
自分たちの領域に、CoDの事を全く知らない、なおかつ
<凄く押しが強そう・・・> 
な人が来て口うるさく言われるのが嫌だったのだろうと察した。
さてどう超えていこうか。

私の中でくるたみの採用は確定事項であり、翌年度の成功の要だった。
しかしグリードの頑固さは正直岩より固いというのはここ数年でよくわかっている。
諦めるな、グリードは時間がかかるだけで時間をかければ、必ず良さを理解する。
チームのみんなも、まだくるたみをよく知らない。
日本人離れした凄まじい巨体の、明らかに癖の強そうな風貌にたじろいでるだけだ・・!きっと大丈夫だ。
長期戦を覚悟した。

くるたみとの出会い

私がくるたみと出会ったのは、2016年に行われたハースストーンの夏期大会だった。(春季かも・・?
私はその日eスポーツの大会ってどんな感じなのかな、と、ハースストーンのルールを一個も知らない状態で秋葉原にでかけたのである。
ブリザードさんとその当時からお付き合いがあったので関係者パスを頂き、ほとんど人が座っていない関係者席に腰をかけた。
その時後ろに座っていたのが、くるたみだ。

「あ、関係者さんですね!」
「あ、全然関係者じゃないです、一般人です!あいてたんで座りました」

ww Σ(・∀・)まじか!!

しかしノリが良い 。なんでそんな話になったのか覚えていないが、その場で意気投合し、すぐに彼がオーストラリアにいたこと、ゲームが凄く好きで格闘ゲームコミュニティに縁があること、近くのオーディオ機器販売店で働いてる事、年齢が同い年であること、カードゲームも好きなこと、など色々な話をした。
試合が始まると、私がさっぱりルールがわからず観戦方法が分からないでいたため、色々教えてくれた。ビール奢るから後ろでこのゲームの見どころ教えて欲しい!と頼み、その日一日、個別実況解説をしてもらった。あまりにそれが上手なので、本当に一日楽しめた。
彼の実況解説が無かったら、その日優勝したGundamFlame君のヨグサロン発動時や、優勝の瞬間を今日まで覚えてる事はなかっただろうと思う。

その後、2016~2017年にかけて、Wekidsで何度かカードゲーム会やハースストーン大会鑑賞会などのオフ会を開くたびに顔を出してくれた。
2017年の初頭には、ハースストーンの韓国人プレイヤーの子と大会を共同開催した。その際、本配信の裏番組として初心者向け解説配信を企画したのだが、真っ先にくるたみの顔が浮かんだ。この配信は、視聴数こそ少なかったものの、ハースストーンを元々知らないような元ゴールドマン・サックスの女友達がたまたまTwitterのタイムラインで気になったらしく、
「気づいたら全部見てた!!」
とTwitterでDMをくれた。
いい思い出だ。

「くるたみっちは、ゲーム関係の仕事とかしたいとかないの?」
「あーまぁ別に今はいいかな。今の会社結構自由がきくし、音響関係は得意だし上司もいいし。しばらくはこの仕事する予定」

Wekidsは、ゲームのマーケティングを食い扶持としてる会社だ。
この当時の弊社は、ゲーム公式生放送の制作から配信、台本制作までやっていた為、くるたみのようにゲームの面白いところを本質的に抽出し、誰にでもわかりやすく噛み砕いて伝えられる能力は貴重だった。

(得意な事で働けて、良い環境としかも上司もいいなら、離れる理由ないな。いつかまた機会があればいいな)

それから、本当にたまにTwitterで見る事はあっても、2018年5月まで約1年半以上特に連絡することも無かった。特になにか理由があったわけでもなく、お互い忙しかったのだと思う。

くるたみが久しぶりに連絡してきたのはTwitterDMだった。
Rushの話は正直個別にくるたみにしたことはなかったのだが、6月のアナハイムのあとに「いいもん見せて貰ったわ!」や、GP入隊の告知のあとに
「GP、正解!」と連絡をくれていた。GPに関しては、なんなら私よりもずいぶん長く彼のYouTubeでの活動などを見ていたらしく、良い選手なのに報われていない、と前々から思っていたらしい。

そんな2018年の5月、くるたみから「eスポーツとパラスポーツの相性がいいと思うんだよな。」と雑談まじりのDMをもらった。
障害者支援などを通じて、eスポーツの「人材育成」「社会復帰」に貢献しうる要素を発揮、発信したい、その為に持続可能な事業化を考えてる、と。

そこからは、怒涛の相談の嵐!
事業化に向けて、くるたみは事業計画書を数カ月間必死に書いていた。
Wekidsオフィスにも何度かきてヒアリング、計画書を書いてはDMで送ってきて、私は出来る限りの知恵と知識でフィードバックした。
フィードバックしては、数時間後にすぐその修正案を出してくる。
人間、本気の時の行動量っていうのは尋常じゃない。
あぁよくいる「eスポーツでこういうことしようと思ってるんだよね」で止まってる人じゃない、この人は本当にこれを成し遂げたいんだな、と心から思ったし、今もずっとそう思っている。

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私は、人の言葉をあまり信じない。
信じてそうに見える時は、恐らくそれは演技だし、
とりあえず信じてみるか、くらい。
でも行動は信じる。
半端ない熱量がある人間は行動が伴う。
行動は信じられる、その質と量に比例して信頼出来ると思う。


その事業計画は、結局はうまくいかなかった。
何日も、何ヶ月もかけて、仕事もやめて、
自費で投資家説明に地方までいった努力も、お金も、時間も、
全部泡となって消えた。

「うちで一緒に、Rushのコーチをしてくれない?」


と、そこで初めてお願いした。
1年半以上前からずっと一緒に仕事をしたいと思っていたし、事業計画の相談に真剣にのりながらも、Rushのコーチとして適任だと思っていた。
その事業計画がどういう結果になってたとしても、きっと頼んでいたと思う。

Rushのコーチ、スタッフとしての話をした後すぐに届いたやりとりを掲載する。

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この1年、Rushを見ていた人なら、「なるほど」なのではないかと思う。
マルチゲーミングへの拡大はさておき、今のRushの礎を築いている施策の源泉になっている事が分かると思う。それまでは私一人だったから出来なかった事ばかりだ。
選手やチームの、もっともっと本質的に持ってるものを育てる事、そしてそれを、発信し、コミュニティへ還元すること。

Rushを、今年急速に違うレベルに押し上げてくれたのは、紛れもなくくるたみである。
まさに丁度約1年前のこの出来事が、Rushを大きく変えたのだ。

とはいったものの、グリード・ルークは当然この将来は見えていなーーーーーーーい!!!!!!!!!

そう見えていないんだなー!!!!!!
仕方ないんだけどさー!!!!!!!!!!

そんなこんなで最初は一苦労。
まずグリード達には、

「Rushの人、としてじゃなくて、Wekidsの人だから、ね!
うららのサポートをしてくれる人だから、ね!
うららがうららの為にいてもらってるのでそれは文句ないでしょう!ね!!」

ということで、くるたみと戦略を練り、当初は本当に選手達との関わり方などは意図的にめちゃくちゃ限定した。本当に少しずつ少しずつ関わることにしたのだ。交流戦中のDiscordも最初は、ほぼ発言禁止。
でも「いる」ってことを意識してもらいたかったので、常に入っていた。
くるたみは、信頼を勝ち取るまでは徹底的に「役に立つ」事だけに集中した。アプデが来れば都度内容をまとめるし、何時間もかけて検証した。ストーリー君(アメリカ人コーチ)のFBの和訳、最新情報の連携、練習方法の試行錯誤・・
それはそれは大変な作業だったはずだと思う。

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今も続けてるものと、やめたものといろいろあるが、試行錯誤はたくさんしてきた。
そこまでするコーチ、マネージャーは、本当に貴重だ。

5-250の惨敗のあと、すぐに問題と向き合った。
この1年、どんな時も諦めなかった。

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本当に、毎日毎日、本のページを一枚一枚重ねるように、ゆっくりゆっくりと、着実に、信頼を重ねてきたと思う。
遠征で行ったラスベガスのリビングでは、みんなと朝まで話した。
くるたみのこれまでの人生や経験、
地元では有名なお金持ちの家に生まれたこと、
事業で成功も苦労もした後、高校生の時に癌で亡くなった父親のこと、
その後貧乏してからの方が幸せだった事、
北海道でトップ2の全寮制の柔道強豪校にいた時のこと、
進学のこと、オーストラリアへ単身向かったこと。

みんな、覚えてるかな。
くるたみは、男の子が夢を追いかけて生きる為に必要なことを、
1番よく知って、教えてくれる。
諦めずに必死にやる事、
自分にとって大事な事を知る事、
利他精神を、おもいやりを持つことー。

今では、グリード・ルークだけでなく全員が、揺るぎない信頼をくるたみに寄せてると思う。
現在は契約を、WekidsからRushに変更した。
名実共にRushのコーチであり、マネージャーである。
(もはやシェフでもある)

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あとがき

書きながら、私自身は反省と、恥ずかしい気持ちになった。
今シーズンは、私自身の未熟さが度々露呈してしまった1年だったように思う。戦績が悪かったり、日常での態度や練習方法が少しでも気にいらないと、何時間にも渡って不満を浴びせてしまった事もある。その度に、どれだけ嫌な想いをさせたかと思うと、言葉に詰まる。
言い訳をすれば、期待と信頼が大きいからでもある。
くるたみなら、なんとかしてくれる、なんとかしてくれる、と思えば思うほど、心が逃げれば逃げるほど、焦るほどに自体は悪化していたように思う。
それでも、何度となくあった衝突を乗り越えて、そして
「すべては選手の為」と一度も目的をぶらさず、
今日Rushにいてくれていることに感謝したい。

全幅の、時に全幅過ぎる、信頼を込めて。





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