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《夢》問:この言葉を正しく記すこと

夢で、


「ロッカー、やっぱり今期も借りようと思うんだよね、教科書多いし」

特別仲の良いわけでもない友人が、すでに授業の始まっている教室で声をかけてきた。

わたしたちの教室のロッカーはどれもサイズが不揃いで、大きくて物がたくさん入る場所は早いもの勝ちになる。授業に集中したかったが、声をかけられたので渋々振り向くと、ロッカーの仕切り板は以前にも増して凸凹なサイズになっていて、小さいところは靴ぐらいしか入りそうにない。これはたしかに、早くロッカーを確保しておいた方が良さそうだ。

授業中なので先生に見つからないよう、椅子からおりて床に這いつくばり、教室の後方へ匍匐前進のように進んでいく。思えばこの授業が終わってからでも遅くはなかっただろうに。

ロッカーまでやっと辿り着いたが、場所取りをするためにはなにか物を置かなければならないことに気づいた。這ってここまできたのだから、当然両手にはなにも持っていなかった。焦ってポケットを探ると、出てきたのはアンパンマンのグミ。これでもいいか、と、少し大きいロッカーにそれを置き、またそっと席に戻ろうと振り返る。

問:この言葉の順番に並べ替え、正しく記すこと

一瞬、頭の中が真っ白になった。黒板は訳のわからない言葉の羅列でびっちりと埋め尽くされ、平仮名と漢字が大半を占めていることから日本語であるということだけがわかる。急いで自分の席に戻り机に配られたプリントへ目を落とす。同じく日本語の、なにかしらの文章になるであろう平仮名と漢字の問題が、A3の用紙に何問も並んでいた。先生は問題の解説をしているが、それが何の問題のことなのか、教科書のどこのページの話なのか、一向に見当がつかない。

そもそも、授業を少し聞き逃すだけで何ページの何の話をしているのかわからなくなってしまう癖があるのだった。端的に言えば集中力が無い。物心ついた頃から自分で自分の集中力の無さにはこっそりと悩んでいて、今日こそは最初から最後まで聞き漏らさない覚悟で臨んでも、今度はその「力強い覚悟」のほうに意識が行ってしまい、結局は失敗に終わってしまうのが通例だった。思いつく限りの方法を全て試しても、授業を乗り切る集中力だけは身に付かないままであった。

授業中に声をかけてきた友人を恨めしく一瞥すると、彼女はすでにカリカリとペンを走らせ問題を解いていた。誰かわたしと同じように、内心途方に暮れている人はいないか、教室を見回してみた。頭を上げているのはわたしだけだった。また今日も、わたしだけだった。

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