【女】種村有菜作品と女の"自己顕示欲"

時間ができたので、二本連続の投稿。

私がここで名乗っている「フィン」という名前は、タイトルを読んでお気づきの方もいるかもしれないが、漫画「神風怪盗ジャンヌ(以下ジャンヌ)」の登場人物「フィン・フィッシュ」から来ている。有名作品だが、現在のアラサー女性であればリアルタイムで読んでいた人も多いかもしれない。

ジャンヌは、それまで私が読みふけっていた「なかよし」黄金期作品とはまったく違う作風であった。強い意志を持った大きな瞳、豪華絢爛なトーン、「死」や「裏切り」など重い要素を盛り込んだストーリー・・・作品の過激さや作者本人の言動からアンチと呼ばれる人もずいぶん多かったが、この作品の「勢い」はまさに本物であったと思う。種村氏はこれをわずか20歳そこそこで描き上げたのだから、非凡と言わざるを得ない。

ジャンヌを中心に種村作品が熱狂的支持を集めたのは、「女」を自覚しはじめる頃の読者の自己顕示欲を、多彩なキャラクターを配置する事によって見事に表現したからではないだろうか。登場人物は非常にエゴイストなのだが、だからこそ、それが読者の「本音」とマッチした・・・そこに理想的な男性キャラクターが何人も登場すれば、たとえ突っ込みどころが多数あったとしても、少女漫画として、10代の読み物として十分に共感しうるものになると思う。要するに、「女心」を漫画で表現することに非常に秀でている人なのだろう。

フィンは、ジャンヌの中でも特に自分の生き方に正直な女の子だった。裏切りシーン以後のフィンは、実際にどういう評価だったのかは知らないが、私のなかで「フィン>>>>>>>まろん」に切り替わるくらいのインパクトがあった(好き嫌いではなく共感度という意味で)。

魔王になつくフィンは、男性の包容力を求める寂しがりやの私そのものだった。彼女の結末もまた、見方によっては自己中心的すぎるところもあるだろうが、私は非常に「彼女らしい」と思っている。

自分に正直に突き進んだフィン。それが誰かを傷つけるものであろうとも、自分が後悔しないためならどんな手段もいとわない。あてもなくさまよう彼女の姿は、名前どおり魚のようだ。私も、誰になんと言われようとも自分の心のとおり生きていきたい。今はまだ、溺れた魚だけれど。


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