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馬の脂肪


 皆さん、こんにちは(^^)

 今回は脂肪について記事を書こうと思い筆を取りました。是非とも最後までお付き合い頂けますと幸いです。
 また、今後の記事作成の励みになりますので、共感や納得出来ると思ったらイイネやフォローを頂けますと励みになります。
 そして、皆様には日頃より私の馬体診断ツイートへお付き合い頂き、感謝の気持ちで一杯です。
 私の表現は多少難しいかと思いますが、今回はその皆様の頭の中の「?」を1つ取っ払うべく「脂肪」の記事を作成しようと思い立ちました。
 この脂肪についてですが、現在私の中では馬体診断の核となると言っても過言でないぐらい大きな評価材料となっています。重要に感じているため事あるごとに「脂肪が…脂肪が…」と口癖の様に言葉を並べていますが、反応などから皆様の「?」を肌感覚として凄く感じる現状でもあります。その辺りの温度差を解消したく今回はこの記事を作成するに至りました。
 是非とも読んで頂き、共通認識のもと馬体診断ツイートを楽しんで頂きたく思っております。またこの記事は悪魔で個人の見解であり、間違いもあるかも知れません。単なる馬体好きの一考察として読んで頂ければと思います。何卒よろしくお願い致します。

 では、本題へ参りましょう♪

 まず単刀直入に結論から参ります‼︎

1.結論
 なぜ脂肪が大事か…、それは…
 三代栄養素の中で最も多くのエネルギーを供給するのが「脂肪」だからです。

 もうこの時点で「ピン!」と勘づく方も多いかも知れませんが、そうです、脂肪は「体力」と関連性があるのです。
 そうと知れば、もはや馬体診断において無視する事は出来ませんよね。


2、タイトルホルダーの馬体と一般的な定説
 そこでまず、2021年の菊花賞馬、タイトルホルダーの馬体を確認して頂けたらと思います。
〈※馬体写真は著作権の観点から掲載する事が出来ませんので、各自ネット検索の上ご確認よろしくお願いします。〉
 今でこそ無類のスタミナを誇る馬として周知の事実であるタイトルホルダーですが、それらの情報を一旦リセットして全くの初見の気持ちで検索した馬体写真を見て下さい。

 Q:ステイヤーとして抜群の能力を秘めていると第一声目に言える自信ありますか?
(ここでは血統論は一旦排除して下さい。馬体だけからいかに読み解くかをストイックに追求する為です。)

 私はありません。なぜなら、一般的に世に出ている馬体のコンフォーメーションで述べられている様な、いわゆるステイヤーの形状に合致しないからです。
 そして、私がこの記事を書きながら見ている画像は、スポニチの「達眼」と言う連載で鈴木康弘氏がコメントされている記事に添付されている菊花賞時のタイトルホルダーの馬体写真です。
コメント内容を参照すると、この方をもってしても「体形よりも気性が3000m向きと言えるでしょう…。」との事で、採点は80点とされています。
 では、次に実際に以下の図解の様に、画像に線を引いてみて下さい。


 肩端と坐骨に垂直な線、キ甲と爪の底辺との平行線、これにより四角形が浮かび上がります。一般的に言われている例に習えば、「正方形ならマイラー、長方形ならステイヤー」と言う定説に当て嵌める事が出来ます。さて、タイトルホルダーの上に現れた図形はいかがでしょうか?私が引いた線は決して長方形ではありません。上記の様に鈴木康弘氏が「体形よりも…」と述べた事が理にかなっており、コンフォーメーションの根底の定説が1つ否定された事がお分かり頂けたかと思います。しかしながら、仮にタイトルホルダーがその後の長距離路線で活躍出来なかったのならば、このコンフォーメーションの妥当性を残しても良いと思うのですが、その後も無類のスタミナを見せつけるレースは続き、2022年の天皇賞春では逃げ切りで、かつ7馬身差の圧倒的な逃走劇を見せつけるに至りました。この時から、私は世間一般で言われているコンフォーメーションの正当性を疑問視し始める事となりました。
 更にそれまでの馬体診断に於いて、胸の深さや腹袋の立派さの目測(時には定規で測ったりもしました)から心肺機能の良さやスタミナ・タフさを推測してレース結果の吟味していましたが、胸が深いからと言って長距離戦で馬券に良く絡む訳でもなく、腹袋が立派だから底力を要すレースで良く好走する訳でもなく…、それらの検証を中期的かつ集中的に実施し結果、裏切りは多い可能性が高いとの結論に至りました。
 この様な経験を経て、私は馬体診断歴十数年の中で初めて「一旦コンフォーメーションから離れる必要がある」との考えに至りました。
 しかしながらコンフォーメーションを全否定する訳ではありません。もちろん、馬体診断の基本としてまずは必ず押さえなければいけないのがコンフォーメーションであり、馬体の成り立ちの基礎中の基礎を学ぶ物でもあります。私も十数年の間、失敗してはそこに戻り、また失敗しては戻りを繰り返して来ましたので、疎かにする気持ちは全くありません。後々はまた戻る事だってあるかも知れません。しかしただ、色々な検証の結果、一般的に言われているコンフォーメーションでは足りないし、どうしても説明が付かないと感じる事が多くなったと言う訳です。
 特に私の場合、馬体診断を図解付きで構造を解説するスタイルにて発信していましたが、構造から能力を推し測る事は出来ても、その時々の調子のバロメーターの説明がフワッとしてしまうと言う悩みを抱えていました。状態の良さを「毛艶や血管の浮き上がり」で判別する方法もありますが、これも中期的かつ集中的な検証で否定されました。更に「銭形」と言うのは毛艶が美しい時に現れる模様ではあるのですが、これは「セレン」と言うミネラルを適切に投与すれば出る物であり、一時期(昭和の頃)は好走の秘訣として、それを投与する事がブームとなるほど熱気を持った事象でもありますが、時代は一巡して、ある対談記事の中で、記者が元調教師にこの「銭形=セレン投与」の事を質問した際、ハッキリと「効果は特にない」と仰っている様子が記載されていました。また毛艶と言うのは光の加減やカメラの性能にも左右されますから絶対的な信頼と言うよりも、「懐疑的ながらも頼りたい安心感」と言う意味合いがある様な気がしています。

3.ヒシイグアスと低脂肪
 そんなこんなで、「あ〜でも無い、こ〜でも無い…」と悩みに悩んでいる間に22年宝塚記念のフォトパドックが公開されました。
 私はこの時以下の様なツイートをしていましたが、今見返すと脂肪の事を理解してなかったなぁ〜と反省しています。


 この時、評価こそAにしていますが馬券を買うに至らず、結果2着に好走してから「何で?」と深く追求が始める事となりました。他の馬体と見比べて何が違うのか?とにかく見比べました。(この時大阪杯で勝ったポタジェと交互にずっと見返していた記憶が残っています。)そこでようやく「ハッ」としました。「脂肪が少ない‼︎」と。それからと言う物、ヒシイグアスに類似する馬体を探しては軸として買って観察を続けました。その様子が以下のツイートに残っています。


 しかしながら、この仮説で買った馬は一向に好走せず、説として実を結ぶ事はありませんでした。その理由は、脂肪が少ない馬を買っていたから…。
 一旦ここで脱線し、私自身の話をさせて頂きますが、私は小学生の頃、肉が大嫌いでした。ご近所の家族同士の集まりで焼肉バイキングに行くとなった時は泣きじゃくって拒否して、挙げ句の果てに車の中でセブンイレブンのおにぎりを食べると言う暴挙に出る程KYな行動を取った事があります。そのレベルでとにかく肉が嫌いでした。その理由が「脂肪がぐにゃぐにゃしていて気持ち悪い…」であり、未だに角煮やステーキの脂肪などは食べると吐き気を催します。書きながら胃と食道がソワソワしています…笑
 なぜこの様な話をしたかと言うと、私の中で「脂肪=悪」と言う公式が無意識に出来上がっていたため、競馬においてもこの公式が無意識に発動して、数ヶ月間、科学とは真逆の仮説を検証するハメになったと言うバイアスによる失敗のお話をしたかったからです。
 しかしながら、失敗は成功のもと…、脂肪が少ない馬の好走率が低いと言う検証結果だけは残りました。
 そしてこの間、私に気付きをもたらす一頭が現れます。

4.ダノンザキッドの三段変形
 私が「脂肪=悪」と捉えて馬体診断をしていた時の事です。私の仮説とは真逆の馬体が好走しました。それは関屋記念3着で馬券に絡んだダノンザキッドです。競馬ラボさんのページから22年新潟記念のダノンザキッドの馬体を探して見て頂きたいです。そして22年宝塚記念で2着に好走したヒシイグアスと比較すると真逆の馬体だと言う事が分かると思います。ダノンザキッドは何だかコロンとしていて、ヒシイグアスに見られた凹凸感が無い…、「=脂肪が多い馬は嫌う」として馬券から外して失敗しました。しかし上がり3Fは32.6秒を叩き出しており、この辺りで薄々仮説が間違っている事に気付き始めました。次走は毎日王冠で登場し、馬体はコロンからスッキリへ変化し、今見ればまだまだ肩の後方や腹に脂肪が残っている事を確認出来、この時は前走の脂肪が身になっていると感じ自信を持って軸にしました。そして迎えたG1マイルCS、ここで肩の後方が凹み腹袋が張ると言うシルエットに完成しています。ただヒシイグアスのギリギリ感と比較するとダノンザキッドは身が付いている印象を受けますが、私はここで3段変形の最終変化の様に感じ再度軸にしました。その時のツイートが残っていましたので添付しておきます。


 このダノンザキッドの三段変形を見て、脂肪を調整する過程が雰囲気として確認する事が出来、1つの考えに辿り着きました。脂肪が少な過ぎる好走率は下がるけど、程よいバランスに整った馬を見抜く事が出来れば、フォトパドックで調子のバロメーターを測る事が出来るかも知れない…と馬体診断十数年にして、恥ずかしながらようやくそう言う当たり前の事に気付いた瞬間でもありました。
 しかし、ここで1つ最大の疑問点が立ちはだかります。ではなぜ脂肪が少ないヒシイグアスはG1で好走出来た?しかもかなりタフさが必要な宝塚記念で…。悩みました…だって答えが矛盾しているから…。マイラーと比較する事がそもそも間違っているのか?でもそれは脂肪を捉えると言う観点でみると元も子もない話になってしまうので、しっかり向き合いたい…など自問自答していました。そして、ついに答えが分かりました。それは23年2月に行われた中山記念の事です。ヒシイグアスが熱中症で死の淵を彷徨ったと言う記事が明るみになりました。ここでようやく腑に落ちました。極限に脂肪を絞った馬体でタフなレースを全力疾走し、エネルギー切れかつ体温調整機能も失ってしまったのだろう…と。(※ヒシイグアスの好走には脂肪だけで語れないもう一つの答えがあると、今私は考えています。その要因をこの記事の1番最後のまとめの章で少し触れています。)
 そして、そのレースではヒシイグアスは薄めの程よい皮下脂肪をまとった状態でフォトパドックに登場し、復帰戦も見事に勝利で納めました。そして、そのレースにはダノンザキッドも出走していましたが11着と惨敗しており、これまたヒシイグアスとは真逆の結果を招きました。この2頭は水と油なんでしょうね…笑

 この様な経過を経て、脂肪の大事さに至った訳ですが、ここから更なる探求が始まります。
Q:そもそも脂肪とは?
Q:動物が脂肪を蓄える仕組みってどんな感じなの?
Q:馬体を見る上で、どこにどの程度の脂肪が付いていればいいの?
 などなど、深掘りする事が沢山ありました。それらを以下に説明して行こうと思います。


5.脂肪とは…
 まず脂肪の定義を間違いなく伝えるために、チャットGTPを起動して、脂肪について文章を作成して貰うことにします。

 "脂肪は栄養学的な観点から、有機化合物の一種で、生体のエネルギー源として重要な役割を果たす栄養素です。脂肪は身体の多くの機能に関与し、以下のような重要な役割を持ちます。"

 お〜チャットGTP素晴らしい‼︎
 もうこの時点で、なぜ馬体診断において脂肪が必要不可欠である事は理解して頂けたと思います。
 そして続きます。↓

<脂肪の役割>
①エネルギー貯蓄
余分なエネルギーは脂肪として貯蔵され、必要時に利用。
②エネルギー供給
炭水化物と同様にエネルギー源として利用。
1g当たり約9kcal
※脂肪以外の三代栄養素(糖・タンパク質)のエネルギーは1g当たり約4kcal
③脂溶性ビタミンの吸収
ビタミンA、D、E、Kなどの脂溶性ビタミンの吸収を助ける。
④体温調節
皮下脂肪は体温を体温を維持するのに、絶縁材として重要な役割を果たします。

 もはやここまでの事実を知ってしまったら、もう脂肪の事を理解して馬体診断をせざるを得ませんね。単純に捉えて、1g当たりのエネルギー量が糖やタンパク質の2倍なのですから。
 ただ脂肪を評価する上で絶対条件があるのですが、それは「脂肪の量が適度でバランスが取れている事」となります。人間社会における「脂肪」はメタボのイメージでネガティブな物を持たれていますが、それは過食・運動不足・ストレスが原因と言われています。しかし馬については自動的に優秀なトレーナーが付き、様々な機械を駆使して運動したりそのデータを収集して体調を管理されたりしています。そしてそれらは、言葉のコミュニケーションが成立しないパートナーであるがゆえ、高機能かつ頻繁に行われていると私は想像しています。更にそれらの活動を支えるのが資金潤沢なオーナー達と言う…、いわば競走馬は究極のRIZAP状態に身を置いている状況であり、脂肪量についてはどの馬もバランスが取れているとの仮定する事が妥当だと思います。
 では、その様なバランスが取れた状況にも関わらず、なぜ脂肪を細かく評価した方が良いかと言うと、その残し方・削り方によって調教師や厩舎の方が抱いている思いやその馬に期待するパフォーマンスなどが読み解ける可能性が高まるからです。
 脂肪はエネルギーの貯蔵庫の役割を有しますから、そのエネルギーをレース前後でどう使いたいのか、そこを想像する事で行間を読む事が出来ると私は考えています。
 章のタイトルを脂肪とは…としましたが、ここから先に進むと、今度は「代謝」の話へ突入し、より複雑さを増しますので、今回はここまでの内容を押さえて頂けたらと思います。
 「栄養とエネルギー代謝」について更に知りたい方はイイネを押して時が来るのをお待ち下さい。


6.脂肪の評価の考え方
 では、その評価すべき脂肪はどこに付いているのか?皆様はもうそこが知りたくなっているのではないでしょうか?
 その答えは、22年宝塚記念のヒシイグアスの馬体を指標として、他の馬体と見比べていく事で少しづつ脂肪の実体が浮かんでくると思います。ここは馬体写真を並べて比較して洞察あるのみです。感覚的には、ベッコリ凹んでいる様に見える所を脂肪が埋める様なイメージです。
 ちなみに「これは凹んでいるからそこを埋める組織が脂肪なんだ」と乱暴な仮説を提唱している訳ではありません。ある根拠を元に構築した仮説であり、今回は以下にその根拠と仮説を説明して行こうと思います。

 ではまず、ここで皆様にクイズです。
 スクロールを止めてください!
 Q:「体内に独特な形で脂肪を溜め込む代表的な動物を1つ挙げて下さい。」
 ここで一旦画面を伏せ、いろんな動物を想像して答えを導き出して下さい。答えは下にあります。

 ・・・

 さて、画面に戻って来て頂けたと言う事は答えを思いつきましたかね?答えの確認をどうぞ!
(※答えは1つではないかも知れませんが、私が提示したい動物は、分かり易く異様な形をした脂肪組織を上手く駆使していますので代表的なと動物とさせて頂きました。)

 では、答え発表したいと思います…
 それは、ラクダです🐪

 皆さん正解されましたか?
 ラクダは砂漠に生息し、水や栄養素に恵まれない可能性が高いため、食事にありつけた時には摂取したエネルギーをコブに貯蓄しておいて、必要な時にそこからエネルギーを作り出して活動するという戦略で繁栄しています。そのコブの主成分そのものが「脂肪」なのです。そして、それがなぜ背中に乗せているか?を考えたのですが、ラクダと馬は同じく四つ脚動物であると言う事に着想を得て、吊り橋構造またはパンダクラブ構造を適応出来るのではないか?と言う仮説の元、重たいコブを胴付近に位置させておく事は理にかなっているのではないかと推察しました。(※吊り橋構造またはパンダクラブ構造についてはネット検索を推奨します。検索が面倒臭い方の為に簡単に一言でまとめておきます。→重たい腹袋を吊り下げて高速で移動するのに適した脊柱と四肢の配置関係による骨格構造の事…としかまとめられません…、やはり検索推奨です笑)
 その推察を元に馬に戻って考えを進めると、やはりラクダ同様に胴付近に脂肪を蓄えて置く事が同じく理にかなっていると想像出来ます。現に馬の腹袋は凄まじい容量を有しており、それをその構造で支えて動いているのですから、あらかた間違いではないか?との推理を前提として以下に話を展開していきます。
 脂肪を突き詰め始めてから数ヶ月、モヤモヤを一気に解消する日が急に訪れました。それは友人の結婚式に招かれて熊本へ行った時の事でした。熊本と言えば馬刺し!せっかくなのでちょっと良いお店に足を運び、下の写真の定食を頂きました。


 この機会を逃すまい!と、お金の事は気にせず、とにかく沢山の部位の食感を味わえる定食を注文しました。確か、ランチで1番高いコースでしたが、これにヒレステーキが付いて3800円ぐらいで食べれたので結構リーズナブルではないかな?と言う印象が残っています。
 そして、最初に食事を運んで来てくれた店員さんが、肉の名称の説明をしてくれたのですが、それをしっかりメモしてました。笑


 ただその場では、馬肉の知識など持ち合わせていませんので、帰りの電車の空き時間を利用して馬肉について調べ始めました。すると、何と言う事でしょう!私が欲していた情報がわんさか出て来くるではありませんか。「コレコレ!!!」とテンションが上がったのを今でも覚えています。確かその日は阪神JFでリバティアイランドが優勝したのですが、そんなの関係ないと言わんばかりに熊本から博多に着くまでの間、ひたすら「馬肉」の事だけを調べていました。
 特に私が知りたかったのは、脂肪の含有量が多い部位の名称で、まずは「脂肪=トロ」の短絡的な発想から検索を始めました。その結果、馬肉の中トロに当たる部位は肩ロース・バラであり、大トロに当たる部位は三角バラと導き出されました。
 では、それを筋肉に置き換えてみます↓
・肩ロース→肩上方の筋肉
・バラ→肋間筋など
・三角バラ→鋸筋や外腹斜筋
 特にバラ肉は興味深く、前バラと後バラと言う表現で区別されており、前バラは別名「オビ」と呼ばれており、いわゆる「腹帯」を連想させる名称が付けられています。後バラについては、特上霜降り、極上霜降りと言われる部分であり、それはいわゆる「腹袋付近」の事でした。
 他の部位にも興味がある方は、馬肉について検索をかけてみて下さい。図はもちろんの事、部位ごとに肉質が分かる写真も掲載されています。今回は画像を引用して添付する事も考えましたが、著作権の問題もありますので控えさせて頂きます。お手数ですが、各自でご確認よろしくお願いします。
 この様な視点で見ていくと、馬の脂肪は肩から脇腹、腹底のラインに分布が存在している事が分かります。そしてここでこの章の冒頭に立ち返って頂きたいのですが、「ヒシイグアスを指標として、感覚的には、ベッコリ凹んでいる様に見える所を脂肪が埋める様なイメージ」との説明をしていた部分をもう一度思い出して下さい。これに大トロを当てはめて見ましょう。大トロは最もサシの入りが良いオビと三角バラ(鋸筋部)と言われていますので、まさにピッタリとピースがハマります。ヒシイグアスに大トロを付与すればダノンザキッドみたいになる事が想像出来るかと思います。また鋸筋と言うのは、画像の◯で示した部位で体表から確認出来ますが、本体はかなり大きく、頸部から脇腹辺りで肩甲骨の下に存在しています。詳細は馬筋noteで後々取り上げて行きたいと思います。


 そして、大トロの部位の脂肪が少なくなればなるほど肩周りはスッキリと映る様になり、いわゆる「肘離れが良い」と言う言葉に繋がっていくのではないか?との考えに至っています。
 ちょっとここで1つ言っておきたい事が浮かびましたので記載しておきます。仮に「肘離れ」の定義がズレていたとしても、馬体診断の世界と言うのは曖昧な言葉が多く、検索しても明確な答えが出て来ない場合が良くあります。「肘離れ」もその言葉の内の1つで、今回も捉え方はもしかしたら間違っているかも知れませんが、しかしそれは構造を理解する事で周りまわって似た事を言っている事になるのでは?と言う…血液型O型らしい大雑把理論をここで提唱させて頂きたいと思いました。
 さて、話を元に戻しまして、ラクダの所でも推察した様に、馬も胴体付近に脂肪を蓄積している可能性があると述べましたが、概ね吊り橋構造とパンタグラフ構造を利用した戦略である事を裏付ける事が出来るかと思います。ただ馬にはコブが存在しない分、重心線上(オビ・三角バラの部分)に脂肪を蓄える事で邪魔をせず、バランス良く高速移動をする戦略で繁栄してきたのかな?とも想像出来ます。
 そして興味深いのが中トロの肩ロースであり、それは肩上方と言う記載があります。そして、これまた難しいのが肩ロースと言う概念は特定の筋肉を指すものではなく、肩上部の部位を指すとあります。「特定の筋肉を指すものではない」と言われましても、肩の上方にある筋肉は僧帽筋や菱形筋などまたは棘上・棘下筋や三角筋・上腕三頭筋の上部辺りまで含まれるのかなぁ?と想像するしかないと思うのであります。そうであれば、キ甲が抜けない頃の若駒などではこの辺りが野暮ったく映るのも合点が行くのですが。そしてここで1番最初の菊花賞時のタイトルホルダーの馬体に戻って頂ければと思います。あの写真も肩ロース付近の線が明瞭でなく脂肪に覆われている事が確認出来ます。23年菊花賞を制したドゥレッツァも同様の事が言えます。そう言う意味では骨格的に馬体のコンフォーメーションでは説明が付かなくとも、脂肪を観察する事で体力面の評価が可能となる事例であり、タイトルホルダーとドゥレッツァの2頭に共通する特徴ではないか?と私は考えています。
 さて、ここまでは馬の前駆と中駆の脂肪について言及して来ました。残す所最後は後駆の脂肪になります。後駆の脂肪を理解するためにまずコレを押さえる必要があります。それは「脂肪の含有量は白筋 > 赤筋である。」です。それは白筋と赤筋の特性を俯瞰する事で想像がより具現化して来ます。白筋は速筋とも呼ばれる速い(俊敏な)運動、特に無酸素運動の遂行に適しています。かたや赤筋は遅筋と呼ばれ持久力、有酸素運動の遂行に優れています。この様なそれぞれの性質から、赤筋に対して燃費効率が悪い白筋には脂肪を付与する必要性がある事は、ここまで読んで来て頂いた方ならば何となく察しが付くと思います。
 また筋肉に含まれる脂肪の含有量と述べていますが、これは「筋間脂肪」と言う名で表記され、筋束と筋束の間や周りに存在し、筋肉を保護したり、柔軟性を提供する役割があります。ここで非常に興味深いのは、柔軟性を提供する事です。一般的に白筋と赤筋では、赤筋の方が柔軟性に優れると言われています。しかし、白筋は筋間脂肪を豊富に持つ事でそのデメリットが解消されており、本当に自然の摂理は上手く出来ているなぁと感心する程です。そして更に面白いのは、競走馬は調教を終えると胴の後方から後駆にかけてボリュームダウンすると言う事実です。それは回転数や運動量、反発・推進力などの様々な要素において前駆に対して後駆の方がエネルギー消費が激しいからなどの理由が挙げられます。よって、フォトパドックでもトモのボリューム感を見る時には、一般的にはトモの幅や半腱半膜様筋のスジが浮くなど直感的・比較的に分かり易い言葉が良く使われますが、そう言う数量的な見方よりも、運動やエネルギー消費・脂肪の増減などを意識しながら質を推察することで、考察により深みが出るのだろうと思っています。またフォトパドックの馬体と言うのは、レースの10日以上も前に撮られている写真でもあり、最終追い切りを控えた馬体でもあります。よって後駆にかけてのフォルムは大きく増減する可能性がある事を加味して評価したいところです。

7.まとめと新たな道
 この様に脂肪の優位性に着目してここまで述べて来ましたが、最後に1つお伝えしなければいけない事があります。
 三大栄養素の中でもエネルギー供給量が多い脂肪ですが、実は低負荷の運動を長時間継続する際に利用が促進される反面、短時間・高強度の運動には適さないと言う性質があります。よってエネルギーを考える際には脂肪だけではまだ不十分と言う事になります。そこで登場するのが「ミトコンドリア」です。このミトコンドリアを知るか知らないかで調教・調整への考え方が大きく変わります。が、これについて説明すると凄い量になってしまいますので、それはまたの機会に譲るとして、とりあえず今回のまとめとしては脂肪は持続的な運動を補佐し、特に調整過程においてエネルギーの供給を果たす事に優れているため体力のバロメーターとしても利用する事が出来、その測定を元に運動量を決定・実践する事で馬の能力アップに繋がる重要な組織…と言う所で締めたいと思います。


8.あとがき
 日頃から牧場などで用いられているボディーコンディションスコア(BCS)と言うものがあります。
 これに対しては、私がとやかく言うよりも、以下URLで詳しく述べてありますので参照して頂ければと思います。↓
 https://jbba.jp/data/pdf/mr71.pdf
 では、なぜ脂肪を語る上でこのボディーコンディションスコアを1番最後に持って来たかと言うと、正直フォトパドックでは機能しないと考えに至ったからです。と言うのも、外厩や厩舎関係者の測定を元にGOサインが出される訳で、私たちが見るフォトパドックの馬体はBCSで言う所のだいたい4〜6に収まります。ただ見方として凄く優れていると思うのは、部位ごとに点数を付ける点です。馬によって脂肪が付きやすい場所など個体差が出る事は必ずあると思いますので、首やキ甲、肋骨の透け具合、背筋の状況、トモ(大腿筋膜張筋部や尾根)など複数箇所の視診・触診を行い評価されるとの事です。この記事を読んで、馬体診断に初めて脂肪を取り入れる事を考えて下さった方は、まずこのBCSを理解して脂肪診断の道へ踏み出して欲しいと思います。


 以上です‼︎
 長らくのお付き合いありがとうございました。
 今回この様な記事こそ書きましたが、私もまだ脂肪については分からない事が沢山ありますし、勉強しなければいけません。まだまだ不完全な馬体診断ツイートですが、今後も色々な視点で可能性を探りつつ発信を続けて行きたいと思っていますので、皆様と一緒に知見を深めて行けたら幸いです。
 これからもどうぞよろしくお願い致します。

 では、またの機会に‼︎

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