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ジャガーと満月と虹と | 世界遺産、イグアス国立公園 #02

「月虹」という言葉は、最近になって知った。

月虹(げっこう、英語: moonbow[1][2])は、夜間に月の光により生じる虹。月光虹[2]、ムーンボウ[1]とも。

出典: wikipedia

いかにも珍しそうだし、その現象を観察するにはいくつかの条件が重なる必要があるらしい。

1、 満月またはその前後の夜であること
2 、小雨程度の水滴があること
3 、虹が出る側の空が暗いこと

満月前後に行くと運良く小雨があり、月の光が当たるが、他の灯りが邪魔しない場所。たまたま今回の旅先には、そんな条件の揃う場所があった。

真夜中のフルムーンツアー

前回触れた悪魔の喉笛へのトレッキング前夜。深夜0時を回る頃、私たちはホテルのとある一室に集められて点呼をしていた。

今回宿泊したBelmond Hotel Das Cataratasでは、宿泊客を対象として満月前後の夜にトレッキングツアーが用意されている。そしてその目的の一つが、例の月虹を見に行くこと。

この時期はまだ流行病の影響があったのに、欧米からもたくさんの観光客が訪れていた。

まずは英語話者とポルトガル語話者の2つに分けられて、それぞれのグループで説明を受け出発する流れに。私はポルトガル語グループに入り、南米観光客のパーティーについていくことにした。

1組に1つ、懐中電灯を渡される

熱帯雨林の中は想像以上に深く真っ暗で、見上げる満月は想像以上に明るかった。

ふと、飲み会で遅くなった帰り道を思い出す。

都会にいても満月はたしかに明るいのだけれど、街にはやはり灯りがたくさんありすぎるのだろうな。

こうやって暗闇の森の中から見上げる満月はまるで別物のようで、いつもとは違う月の存在感に、ちょっと不思議な気持ちに。

ちなみにここイグアス国立公園内は、ジャガーの保護地区にもなっている。実際この旅行の帰りには、バスの車窓からちいさな子ジャガーが道を渡るのを見ることができてしまった。(子ジャガーがいるということは…)

そしてジャガーは夜行性。そんな場所なので、ホテルから目的地まで懐中電灯を無意味にいろんな方向に投射して大いにヒトの存在をアピールしながら進んで、ようやく私たちのグループも無事にイグアスの滝に到着したのだった。

幻の虹と出会う

暗闇で目にする滝は、昼間に見たものとは全く別物の佇まいだ。

昼間はたくさんの観光客に囲まれて観光地らしい顔をしていたのに、今では月の光とひんやりした空気、そして滝の音だけが響き渡っている。

そしてその真ん中で、月虹は静かに七色の光を放っていた。

右中央に見える月虹
月明かりで空が明るく写るが、実際は真っ暗
ちゃんと七色あった

そして月虹を見てから振り返った時にもう一度はっとした。

煌々とした月明かりが注ぎ、暗闇の中で滝と霧が浮き上がるように光を反射する光景。

この幻想的な景色は、今でもよく思い出せる。

はるばる南米まで来て深夜にジャガーがいる熱帯雨林を歩いてまでしても、きっと景色を見に行く価値はありそうだ。

熱帯雨林のリゾートホテル—《Belmond Hotel Das Cataratas》

今回宿泊したBelmond Hotel Das Cataratas。ブラジル側で唯一国立公園内に立つホテルで、コロニアル時代のインテリアが詰まった瀟洒な空間で洗練されたサービスや食事を楽しむことができる。

日没前頃に夕食を予約すると、滝はもちろん、目の前で刻々と色が変わる空を眺めながら食事をすることもできる。

この日の夕食はペルー料理のセビーチェ、ブラジル料理のムケッカ(海鮮などのシチュー)、フィレミニョンのステーキなど。

(左)サーモンとホタテのセビーチェ
(右)ブラジルの郷土料理、ムケッカ

このあたりの料理は日本人の口に合うものが多くて、南米の伝統的な料理を基調としながら、日本人の味覚にもよく合う絶妙な味付け。どの一皿も繊細な味でとてもおいしかった。

レストランからの夕暮れ

そして青々とした熱帯の木々がシルエットになっていく景色は、まさに南米ならでは。

ずいぶん遠いところまで来たなあと感慨深く思って、何枚も写真を撮ってしまった。
こんな素敵なところに行ってきたんだよ、と人に見せたくなる良い思い出ができたのだった。

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