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タイムマシーンはすでに実在する ― 早い者勝ちが早い者負けになる瞬間 ―

現在は、ドローンが何の不思議もなく飛びまわり、無人レジやカードで人もお金も見当たらなくなり、自動運転がもうそこまで来ている世の中です。
では、次に来るのはタイムマシーンだと思っているあなた、あなたは時代遅れです。
あなたの気づいていないところでタイムマシーンはすでに実在しているのです。
もう小説の世界ではなく、リアルタイムで時間が歪められているのです。
ここでは、そのタイムマシーンがどこにあるのかをご紹介し、みなさんをその世界にいざないます。

まだタイムマシーンなんてあるわけない!
過去にもう一度戻れたり、未来に足を踏み入れたりできるわけないと思っているみなさん、このコラム読了後に口をあんぐり開けた表情が目に浮かびます。

時間が歪められた世界。
その世界は株式市場で起こっています。

まず、簡単にインターネット株取引をご説明します。
株を買いたい(売りたい)ときには、2種類の方法があります。
1つめは「指値(さしね)注文」と言って、買いたい(売りたい)値段をあらかじめ指定しておくことにより、その値段以外での「約定(やくじょう)」(売買成立)はほぼなくなり、安心してトレードできます。
しかし、この「指値注文」の弱点は、現在値が買いたい(売りたい)値段からどんどん価格上昇(下落)していった場合には買う(売る)ことができず、指をくわえて眺めるしかなくなってしまうのです。
それを防ぐのが、「成行(なりゆき)注文」という2つめの注文方法です。
これは値段を指定しないで即買い、即売りできるのです。つまり早い者勝ちです。
詳しく説明すると、「成行買い注文」を出した瞬間、その時に出ている売り注文の最も低い価格で取引が即座に成立します。また同様に、「成行売り注文」を出した瞬間、買い注文の最も高い価格で取引が即座に成立します。

たとえば、下図をご覧ください。

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                 (SBI証券のある銘柄の板を抜粋)


上図左側が「売り板」(いくらで売りたいかという指値注文)で、右側が「買い板」(いくらで買いたいかという指値注文)で「板」という言葉を使います。
真ん中がこの株(銘柄)の価格です。おそらく現在値は買い注文と売り注文がぶつかる722円~736円の間にあると思われます。この株(銘柄)は100株単位ですので、最低7万2~3千円で1つ買うことができるのです。
たとえば、ここで「成行買い注文」100株を入れると、「736円」(73,600円)で約定します。
一方、「成行売り注文」100株を入れると、「722円」(72,200円)で約定するのです。

つまり、売りたい人は1円でも高く売りたいし、買いたい人は1円でも安く買いたいという心理の表れがこの「板」で表現されているのです。


さて、ここまで株の売買の基本をご説明しました。
ではいよいよタイムマシーンの話に突入します。
時間の歪みについてですので、時間についてご説明します。
たとえば「成行買い注文」を10:00:00(10時)ちょうどに入れたAさんと、10:00:01(10時00分01秒)に入れたBさんでは、一歩早かったAさんが「736円」で約定し、一歩遅かったBさんは「736円」が直前で売れてしまったため、一段上の「740円」で約定するのです。
つまり、早い者勝ちですので、「成行注文」は1分1秒が大事なのです。

ここまでは株をしたことのない方でも納得できる内容ではないかと思います。
しかし最近、理不尽なことが起きるのです。
それは、早い者勝ちのはずの「成行注文」において、しばしば「早い者負け」するのです。
上図の例で言うと、「成行買い注文」を10:00:00(10時)ちょうどに入れたAさんと、10:00:01(10時00分01秒)に入れたBさんでは、一歩早かったはずのAさんが「740円」で約定し、一歩遅かったBさんが「736円」で約定するのです。

なぜでしょうか?
これは、AIを使用した「アルゴリズム取引」というシステム売買によるものだからです。

「アルゴリズム取引とは、一度に処理しきれないほどの大口の注文を、プログラムによる自動取引により、時間・価格・出来高に基づき、より小さな注文に分割して発注する取引方法の事」(Wikipediaによる)

外資系証券会社はさらに高速化した「アルゴリズム高速取引」を使用して、1秒間に「1万回」の取引が可能となったのです。
1秒間にです。
そして、時間の歪み、逆転が起きるのは、さらに「コロケーション・サービス」と言って、東京証券取引所の売買システムに近接した場所に外資系証券会社のサーバーの設置が許容されると、この時間の歪み、逆転現象が起きるのです。

つまり、私が「成行買い注文」を入れたのを「アルゴリズム高速取引」が察知し、自動売買による「成行買い注文」が一歩遅れて(上述ではたとえですので1秒にしていますが、実際は0.01秒とかそれくらいの微差です)なされますが、高速取引なので、私の注文を追い越して約定してしまうのです。ちなみに私もNURO光(超高速光インターネット)回線を使用していますが、それでもアルゴリズムには負けてしまうのです。‎
極論すると、「アルゴリズム高速取引」を持った外資系証券会社は、個人のトレーダーに嫌がらせができるのです(まあ、億単位で取引している外資が100株単位の個人をいちいち相手にするとは思えませんが)。
しかしご安心ください。
これを避けたいのであれば、安全に「指値買い注文」で取引すればよいのです。

もし、これを体験したい方がいらっしゃれば、証券会社に口座を開いて、インターネット株取引をしてみてください(あくまでも自己責任でお願いします)。

買った瞬間、それは未来が過去に、過去が未来になる瞬間。
株取引はタイムマシーンをこの目で見ることのできる特異な世界なのです。

(注:全銘柄で常にこの現象が見られるわけではありません。1回の取引が1分から10分に1回など、閑散とした銘柄で外資が集めていると思われる銘柄でしばしば見られる現象です。誰もが知る有名で流動性の高い銘柄ではこの現象を把握するのは困難です)

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