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たぬきの冷や汗(エッセイ)

先日、弟が両親を沖縄旅行へ連れて行ってくれた。
両親ははじめての沖縄だったため、とても喜んでいた。
弟は大手飲料会社やレストラン、ファミレスなどに素材を卸している下町の飲料会社に研究職として入社した。伝統はあるようだが、同族系の中小企業では出世はあまり見込めなかった。

入社して15年くらい経ったころ、弟から会社を辞めたいと相談を受けた。私がひとりで法人設立し、順調に経営していたのを親から聞いていたのだろう。弟も退職後に独立を考えていた。独立できなくても転職する意思は固いように思えた。
しかし、私は「転職するな」と説き伏せた。何時間も時間をかけ、独立のむずかしさと会社員の良いところをアドバイスした。
弟は会社に踏みとどまった。もう一度、会社でがんばってみると後日連絡があった。

そして今年、役員就任したと聞いた。私はうれしかった。親を沖縄に連れて行ってくれたことも併せて、私ができなかったことをやってのける弟には頼もしくもあり、頭の下がる思いでいっぱいだ。私と同じ道を歩まず、正解だった。

5歳年下の弟は、歳も離れているせいか、子供のころからケンカの相手にもならなかった。それどころか弟は私を慕ってくれた。
私が巨人を応援していれば、弟も巨人を応援し、母から買ってもらった巨人の野球帽をかぶるようになった。
私がパリーグでは近鉄を応援していると、弟もファンになり、近鉄のユニフォームを彩ったTシャツを着るようになった。
私が卓球場に弟を連れて行き卓球を教えると、いつしか卓球の大会に出るくらいになった。
私がおやつを弟と分けて食べるとき、大きいほうやおいしそうなほうを狙っていることを明らかにすると、じゃんけんで勝った弟は必ず私が狙ったほうのおやつを取り、得意げにほっぺを膨らませながら食べていた。

母はよく弟の誕生日に近くの洋菓子屋からケーキを買ってきた。貧しかった家族の年に一度の小さな贅沢だった。
それは茶色のチョコで身を包み、耳の位置にはアーモンドが挟まれた、たぬきの顔をしたケーキだった。
弟は満面の笑みを浮かべ、フォークを口にくわえながらたぬきを置いたケーキ皿をくるくる回し、たぬきを物色する。
「どこから食べようかなー」
母は弟のこの笑顔を見るためにパートをがんばっていると、私によく言ったものだった。
私もこのひとときが好きだった。

私はいつしか、おやつを弟と分けて食べるとき、大きいほうやおいしそうなほう「ではないほう」を指さして、「お兄ちゃん、これ食べたいなあ。絶対じゃんけん勝って、これ食べるぞー」と煽っていた。
すると、じゃんけんで勝った弟は私が指さしたほうのおやつを取り、得意げにほっぺを膨らませながら食べていた。
私は残念そうに指を鳴らし、内心狙っていた指ささないほうのおやつを仕方なく、食べるようになった。

(写真:内容とは一切関係あります。弟と多摩川遊園地にて)


◇◇競馬予想
さて、本日は秋華賞。
⑮コントラチェックを狙う。
夏の上がり馬より春の実績馬を狙うのが馬券の王道。京都内回りなら逃げるこの馬にうってつけ。騎手ルメールならゴールまで持たせる。コントラチェックの兄ムーンクエイクも応援している。

(勝馬投票は自己責任でお願いします)

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