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パセリ供養。


恋愛ドラマを、深夜にTVerで見てはいけない。
ある日、「ウソ婚」第4話を深夜2時からTVerで再生した私は、その後明け方4時まで眠れなくなった。おかげで翌日行った美容院では爆睡し、美容師の方に謝り倒して帰って来た。
このnoteは、「ウソ婚」進藤将暉に感情移入してしまった私が、どうにかこうにか進藤くんを昇華、いや、供養しようとして書いたものである。原作未読につき、色々と解釈の不足があるかもしれませぬが、ご了承いただけますよう。

4話。

進藤くんの立場が切なすぎる。私が全額奢るからとりあえず鳥貴族とか行こう。そして菊池風磨(役名で言ってあげて)、大事な話がある一旦表出ろ。

第4話を観た私の語彙力のなさすぎる感想は、ざっと上記の通りである。

渡辺翔太さん演じる進藤くん。菊池風磨さん演じる匠のビジネスパートナー。そんな二人は、ある日の会食で出会う。
他の参加者が存在を気に留めないパセリに目を留める進藤くん。パセリを手に取り進藤くんに渡す匠。いつしか進藤くんにとって、匠は特別な存在になっていく。

しかしある日、匠の手には結婚指輪が煌めいていた。
この結婚はウソなのか、本当なのか。本当であれば、自分の秘めた恋が終わる。
そして、もしウソだったら、匠の親友としての立場が、揺らぐ。
テンション高めに結婚報告でもされた方が、まだ進藤くんにとっては良かったんじゃないかと思う。そうしたら進藤くんは、ビーサンで結婚式に行けたかもしれない。引き出物のバウムクーヘン食べながら泣くことにはなりそうだけれど。

匠の結婚がウソでも、本当でも、自分の恋は叶わない。
そんな彼から零れ落ちたのが、「結局俺は、パセリじゃん」という一言だった。

パセリ。

あると嬉しい。彩りになる。
でも、無ければ無いで別に困らない。
そんな添え物の象徴として、よく名の挙がってしまう野菜。

でも進藤くんはそんなパセリに目を留める優しさと、その裏返しの繊細さをもった人だった。モノローグを聞く限り、その繊細さ無くしては生きられなかった人なのだろうとも思う。男性が花を買う=彼女さんへのプレゼントですか?と言った花屋のような、そんな何の気ない一言をその身に受けながら、受け続けながら、それでも誰かや何かに愛情を注ぎたいと願って生きてきたのだろう。

そんな彼にとって、パセリを見落とさなかった匠は、恋愛感情以前に人として、とても大切にしたい相手だったのだと思う。もしかしたら、進藤くんにとっての匠は、今まで無かったことにしようとしていた本当の自分に、唯一目を留めてくれた人だったのかもしれない。ただ、そこに「特別になりたい」が付随してしまうのが、恋愛の厄介なところ。

匠の特別になりたかった進藤くん。匠の仕事を全力でサポートして、LINEも丁寧に返して、匠から連絡が来たら全てを差し置いてその場へ向かう。
匠は「了解」しか返してくれないLINEに言葉を綴り、会話を続けようとしていた彼は、何を思っていたのだろうと考える。きっと苦しくて、でも好きな人とLINEを交換出来ていることは幸せで。「今ヒマ?」の一言であんなにも進藤くんを笑顔に出来てしまう匠は、全てを知っているこちらからするとやっぱりちょっとずるい。
携帯の中に収められたたくさんの2ショットだって、きっと、あれこれと理由を考えながら、声をかけて一緒に撮ってもらったんでしょう?
なぜか2ショットがたくさん出てきて、LINEのやり取りの分量が全然違って、相手の幸せは願いたいのになぜか心が悲鳴を上げる、そんな相手がただのビジネスパートナーであるはずがないのだ。

進藤くんは、どうすれば報われるんだろう。
というか、進藤くんに限らず、片想いってどうすれば報われたことになるんだろう。
いつか進藤くんが、匠からのLINEを既読無視できるようになって、「今ヒマ?」に「忙しいから無理」と返せるようになったら、それが幸せ、なのかな。
あれこれぐるぐると思いを巡らせながら過ごす1週間は、想像以上にしんどかった。

5話。

匠の家に向かった進藤くん。匠と八重の馴れ初めを聞く中で、話は八重の生い立ちへと移る。親を亡くした八重に対して「寂しかったね」ではなく、「寂しいね」と言葉をかける進藤くん。感情は過去形にはならない。そのまま心の箱の中にしまわれる、という会話の中で、進藤くんの蓋が、揺らぐ。

「なんかたまに勝手に蓋があいちゃって、困る」

ああ、進藤くんから匠への恋は、蓋をあけたら過去形にしなければいけなくなる恋なんだろうな、と思った。匠にとって八重ちゃんは幼馴染で初恋、という事実がある中で、「好き」を現在形にしたまま伝えることは難しい。そして叶わぬ恋にとって、思いを伝えるチャンスは一度だけ。「好きです」「ごめんなさい」「でも好きです」の繰り返しは赦されないから、蓋をあけて受け取られることのなかった「好きです」は「好きでした」に形を変えて消化すべきものになってしまう。一度冷蔵庫から取り出してしまった野菜は早めに食べなければいけないのと同じこと。
蓋を開けて、箱から取り出してしまった恋心は、進藤くんが苦手だと語っていた温くなったプチトマトのように、蓋を開ける前より鮮度を失ったものになってしまうんだろう。

だから、進藤くんが本音を伝えないのは、恋心をパセリやプチトマトにしないためなのかな、とも感じた。自分にとって大切な感情だからこそ、煌めいたまま心の箱の中にしまっておくという進藤くんの決断は、自分の恋心に対する一種の誠意でもあるのかもしれない。
進藤くん、とても強い人だなぁ…と思った。

そして、進藤くん…もとい、パセリの強さに気づいていたのが、匠という人の素敵なところなのだと思う。
匠がパセリを食べる理由は、残されて可哀相だからではなく、
普通に好きだから」。
この言葉を聞いた進藤くんの嬉しそうな顔といったら…おい菊池風磨そういうところが好きなんだよ!!と、進藤くんに成り代わって叫びたくなった私である(だから役名で呼んであげて)。
パセリはどんな料理にもいるけれど最後まで生き残る、だから最強なのだと持論を展開する匠は、やっぱりとっても眩しく見えた。きっとこの人は、色んな人の良いところに気づいて、それをフラットに受け止めてくれる人。

進藤くんは既に、匠にとって必要で、大切な存在だったのだ。


進藤くんは5話の最後、匠に「結婚おめでとう」と伝える。
少なくとも進藤くんの中で、この恋は幸せなものとして箱にしまわれたのだな…と思ったら、何だか涙が止まらなくなった。そんな箱の中のしまわれた記憶が、いつか自分や人の生きる糧になってくれるのではないかとも思う。
優しくて繊細で、でもとても強い進藤くんが、これからも幸せでありますように。

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