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マンガが、クラウドファンディングをするためのいくつかのノウハウと失敗について<前編>

アップルの創業を中心に、70年代のシリコンバレーを描いた『スティーブズ』。こちらを英語に翻訳するため、アメリカのクラウドファンディングサービスKickStarterで、"Japanese Manga STEVES Global Publishing Project"というプロジェクトを行なっています。現在の達成率(2018年12月14日現在)は、こんな感じで、およそ30%といったところです。

クラウドファンディングは、新しいサービスとして注目されていますが、実はもう<法則>めいたものはすでにあり、初動を見れば、ほぼ成功するか否か、わかると言われています。なにやら単行本の売れ行きみたいな話ですね(笑) 
数字は色々で、24時間で25%とか、72時間で40%とか。それに当てはめると今回のプロジェクトは、失敗する可能性が高いと言わざるを得ません。

実は、スティーブズは、2度クラウドファンディングをやって、2度成功しています。(もうひとつ関係したのはありましたが、主体ではないので)

1度目はこちら。2012年です。CAMPFIREさんで行いました。
いまでこそ、日本でクラウドファンディングといえば、CAMPFIREを思い浮かべる方も多く、今でこそ数百万円クラスのプロジェクトがたくさんありますが、まだ当時は、これでも最速最高額だったんじゃなかったかな。少なくともそれに近い数字だったと思います。まだまだ手探りで、リターンもなんとなく雰囲気で作っていたのを覚えています。Excelで表を作って、目標額は超えるから、まあいいか的なノリでした。そもそも「失敗して恥をかいても気にしない漫画家、紹介してください」とCAMPFIREと(提携? 関連? 子会社? ごめんなさい、そういうのどうも疎くて)つながりのあったブクログの方に言われて、思い浮かべられず、自分で引き受けた、という経緯だったし。ところがたくさんの方にご支援いただきました。その節は、ありがとうございました。
ブクログさんが、メルマガで告知をする前に、目標額に達成してしまって後、どうしたら良いか、チーム全員わからず、なんとなく手持ち無沙汰のまま終了してしまったのも今ではいい思い出です。この頃では当たり前の追加支援のノウハウ<ストレッチゴール>も当時は気づいてませんでした。とはいえ、高額リターンは必ず入れるべし、というノウハウはこのとき得たものです。

これがきっかけとなって、小学館のビックコミック・スペリオールで、連載が始まります。イベントなどでは話してましたが、実は、スティーブズは、連載当初、英語版も海外で同時に配信する、という計画がありました。しかしコスト面などの事情から断念。3巻目くらいのときだったかなあ。やはり海外展開があきらめられず、1話目を翻訳して、1巻の残りの翻訳費をクラウドファンディングで募集するという計画を立ちあげました。これは結構進んで、実は1話目の翻訳は、このときにTokyo Otaku Modeさんの手によって完成していました。

ところが、こちらは某事情でプロジェクト立ち上げ直前に頓挫。もちろん編集部とも足並みをそろえていたのですが、大きな会社というのは、あれこれ難しいですね。もちろん大きな会社の恩恵も受けてた連載だったので、残念ではあれ、恨みつらみの類はいっさいないので、そこは勘繰らないように。

そして連載終了後に、始めたクラウドファンディングがこちらになります。

そうなんです、これ、実は連載中にやろうと思っていたプロジェクトの名残なんです。連載中にやっていたら、と思わないこともないですが、ほんとに遺恨はないからね! 小学館の年末のパーティも顔出すし!

この頃になると、マンガ関連のクラウドファンディングもちらほら増えてきました。
・続編を出したい
・単行本未収録分を出版したい
あたりが多いでしょうか。<翻訳>というのは、そこそこ珍しいかと思います。こちらも多くの方にご支援いただきました。このころになると運営側にもかなりクラウドファンディングのノウハウが溜まってます。リターンの設計なんかも、運営のFAAVOさんに、かなり綿密に提案してもらいました。運営と相談する、というのはクラウドファンディング成立には大事ですね。

とはいえ、このリターンの大変さを学んだのもこのプロジェクトでした。リターンの作成はもちろん、発送や進捗報告など、とてもじゃないけど、片手間でできる作業量ではありません(結果、お待たせしてしまった案件もあり、もうしわけありません)。

プロジェクト立ち上げのときは、サービス精神溢れてるものだから、心底「なんでもやるよ!」くらいの気持ちでいるのですが、実際にそれを行おうとすると、連載1本分くらいの労力がかかります。それが後からじわじわとのしかかってくる。もしクラウドファンディングを考えている人は、そのあたりのことも考えておかないと、大変なことになります。

なにはともあれ、当時、抱えていた連載に支障が出始めてしまいました。このままでは、いずれ連載を休むことにもなりかねない事態です。

……ちょっとまずいことになってきました(続く)


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