日本における「スナップ」文化は終わったと思った

鈴木達朗氏x富士フィルムの新型カメラのプロモーション動画が「盗撮だ」「嫌がる人を撮るな」と批判殺到、即日削除されたという。

これに関するツイートや記事などをざっと見て感じたのは、「日本におけるスナップ写真・動画文化というのは、終わってしまったんだな」ということ。

カメラ付き携帯電話が普及する以前は、町中でカメラを構えてる人をもっと許容する空気が、この日本にもあったと思う。だが誰もが携帯電話で写真を撮り、それを拡散できるようになった結果、逆に撮りづらくなったとすら感じる。

ここで思い出したのが、『快!撮!アジア旅の写真術』という、1997年に出版された本だ。もちろんとっくに絶版になっている。

何年も前、我が家の本を片っ端から自炊するために裁断しスキャナーで読み込ませ処分していった。だがこれは、いまだにそのまま紙の本として残されてる、ごく少ない本の中の一冊だ。自炊・処分することを思いとどまらせるものが、なにかあったのだろう。

その中にこんなページが有る。

被写体が通過するだろう地点に、あらかじめピントを合わせておく。
置きピンをした地点を通過した人物が通過する時に「撮ってもいいか?」と断るのは愚の骨頂。私の経験からすると、怒る人はまずいない。サンキューという子も中にはいるが、きょとんとしながら通りすぎる人がほとんどだ。

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前方からやって来たベチャをねらい打ち。戒律が厳しいイスラム女性も、じつは写真を撮られるとうれしいのです。

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隠し撮りは写真週刊誌のスクープ・カメラマンにおまかせ、ではもったいない。町中のスナップ撮影でも、ノーファインダーを積極的に使ってみよう。

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さて、今回の騒動と、この97年に出版された本で言われてることを比較して、どう感じるだろう?

「カメラを構えるとまわりの人びとが警戒し、せっかくのシチュエーションが台無しになる場合がある」というのは、今回の富士フィルムの動画で鈴木達朗氏がカメラを向けた人が嫌がる素振りを見せてることを見れば、よくわかる。ではこの本で紹介された「攻撃的ノーファインダー」はどうだろう? これこそまさに盗撮じゃないかと、今の時代、もっと大騒ぎになりそうだ。

じゃあ結局、町中のスナップ写真というのは、どういうものを撮って良いのだろうか?

渋谷の街を歩いてると道路の端にカメラを構えたり、中には三脚を据えて撮ってる人をたびたび見かける。ああいう感じなら、今回の事件のようにいきなりカメラを向けられるのと違うから、良いのだろうか? だが今回の件で「被写体の許可を取れ」という意見もたくさんあるが、カメラを据えて撮影したもので、写った人全てに許可を取れ、そうでないなら公開するななんて話になってしまうのだろうか?

いくら考えてもきりがないし、答えも出てこなさそうな気がする。言えるのは「揉めるのが嫌なら撮るな、撮っても公開するな」という時代になったんだなということだろう。海外は日本に比べてまだ緩い気がするが、それもいつまで大丈夫だろう? 実はもうマナー違反の時代になってしまってきてる?

ユーチューブで公開されてる街ブラ動画、飛行機の搭乗レビューやその他のいろんな動画にも、撮影者や許可をとった被写体以外が写り込んでいるものはたくさんある。最近、それらに全てモザイクをかけているものが増えてきているように感じる。従来なら撮って公開してただろう空港職員やホテルマンですら、ちゃんと隠してる動画も出てきている。

これから先、SNSやインスタなどに公開される写真や動画は全て、食事や建物、モザイクのかかった人だらけのものになるのだろうか。大勢の顔が映し出されるのは、「カメラに映り込む可能性があります」という事前告知を了承した人々だけによって構成された空間、たとえばコンサートやライブ、集会等だけになるかもしれない。
新宿駅南口の台風の実況中継も、レポーター以外の通行人の顔全てに自動でモザイクが入るのは、時間の問題のような気もする。

それはとてもつまらないと思うが、かと言って「攻撃的ノーファインダー」を堂々と言ったり肯定できる牧歌的な時代は、もう戻ってこないだろう。
自分も旅や町中での写真を撮らなくなることは無いだろうけど、公開にはこれまでよりもより慎重にならざるをえないだろうし、そうなると撮影自体面倒くさくなってしまうかもしれないなと思った。
自分だけが思い出として見返せればそれでいい、それはそうなのかもしれない。だがそれは、ここ20年近くかけて作り上げられてきた、SNSなどに写真を載せ、共有し、イイネ!を集める時代の、終わりの始まりなんだと思う。

最後におまけとして、このアカウントを紹介しておきます。特に何も書かないでおきます。あくまでも紹介だけ。

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