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松本人志が作った「即興アイドル」たち

キャラクター作りの天才・松本人志。これまで、彼は数々のキャラクターを生み出し、コントのなかで自ら演じてきた。それは、1980年代の『4時ですよ~だ』あたりからずっと続いているわけです。『4時ですよ~だ』のときは「まっっったけ!」が好きでした。
 
のちに映画作品で登場するような、練りに練ったキャラクターもたくさんいるでしょうが、即興的なものもある。とりわけ、『ガキの使いやあらへんで』のフリートークは、その場限りのキャラクターの乱れ打ちです。
 
というわけで、今回は、私が大好きなキャラクターで、「即興アイドル」ものを2つ紹介します。もちろん、女性アイドルなので、松本自身が演じるというのではなく、プロデュースする側に回っています。
 
ひとつは、『ガキの使い』のDVDシリーズに収録されたフリートークから、「スン・ヨギョン」。作曲者としていろいろな曲を提供してきたという設定で、まず、演歌歌手の「クルマダヨシト」に、「おいなりさん」を楽曲提供。
 
ついで、アイドルにも楽曲提供。歌のタイトルが、「裸足のおいなりさん」とてんどんをかます。そのアイドルの名前は?と浜田さんに訊かれ、とっさに「スン・ヨギョン」(!)と答えた松本さん。
 
発想がすばらしすぎる。「韓流」の「は」の字もなかった時代に、どうして韓国風の名前が思いつくのか(しかもアイドルとして)、皆目見当がつかない。これは笑った。死ぬほど笑った。何かしらの記憶があって、そんな名前がとっさに出たんだろうけど、やっぱりキャラ作りがうまい。
 
もうひとり、私の思い出に残る(思い出補正ありだと思いますが)、松本流の即興アイドルは「奈良鹿子」。これは、大阪=東京を行き来していた時代の深夜の番組で、『ツキイチダウンタウン』か『ダウンタウンスペシャル』のどちらかで登場した。
 
ウィキ的には、『ダウンタウンスペシャル』1989年11月24日放送「新人アイドル売り込み大作戦」なんでしょうねぇ。
 
記憶が確かなら、劇団☆新感線の若手女優さんだったはず(名前も憶えていて、ウィキで確認できた)。この女性をアイドルとして売り込もう、という企画。松本さんは、この方が奈良出身なので、即興で「奈良鹿子」と命名。それだけで笑った。腹痛かった。
 
松本さんが泉五十四郎(いずみいそしろう)風のダンス講師に扮して、ダンスレッスンを行ったりしていたと思う。ダンスの途中で、スタジオから見えるからと、「そごう!」と叫んだりする即興レッスン。のちの『ごっつええ感じ』にもダンス講師のコントがありましたが、あれの原型でしょう。
 
松本さんが笑いの原点にしているのは、「カモシカの足のような足」というギャグ。よく世間でいわれる「カモシカのような脚」やったら、人間の足が「カモシカ」それ自体になって気持ち悪いやろ!というツッコミギャグです。ダウンタウンの初期の漫才にも、このギャグは入っていました。
 
それでいうと、「奈良鹿子」も「ガララニョロロ」も「トカゲのおっさん」も、半身半獣のキャラクターですよね。これ、松本人志の笑いを考えるうえで、絶対に無視できない要素です。先日の「伝説の一日」での漫才でも、ケンタウロスに言及していたなぁ。
 
ただ、「半身半獣」というのは、あくまでも数々のキャラクターのうちの一部分にすぎない。大切なのは、松本さんがキャラクター作りの根本は、異なる要素を組み合わせた「ハイブリッド性」にあるということです。

では、また次回。(梅)

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