心に、もうひとりの自分を飼っている。
記憶がなくなったりはしないから多重人格の類ではないと思うのだけれど、時々コントロールが効かなくなって、自分の意識とは離れたところで暴走する時がある。

私は彼女のことをドロシーと呼んでいる。もうずっと、10年くらい一緒にいる。

3年くらい前までは全然コントロールできなくて、そもそもドロシーがドロシーだと認識したのも、授業に行けずに保健室で泣いていた高校時代のことだった。その頃はもう少し違う名前で呼んでいた気がするけど、忘れた。

おそらく、12歳くらいのクソガキだ。口だけ達者になった小学生みたいだ。

3年くらい前まで私はガチのメンヘラだったけど、いまはそうじゃないと思っている(いやメンヘラだろ、と思う方もいるかもしれないけれど、そこに関しては人によって物差しが違うから心のうちに留めておいてほしい)。違いは、ドロシーをコントロールできるかどうか。

メンヘラを脱したはずだった。
だけど突然、ドロシーが暴走を始めた。

ドロシーの口癖は、「お前なんか死んだ方がいい」。私はドロシーに、何度も死ねと言われる。

最近ちょっとおかしかった。
些細なことでイライラする。いつも以上に。
他人と張り合う必要のないところで、勝手に自分の劣等感を膨らませてイライラする。

別に他人の自慢話なんて放っておけばいいじゃん。マウントなんて取らせておけばいいじゃん。その人だって多分自信ないんだよ。アレルギーみたいに過剰反応してばかみたいだよ。おかしいよ。

最近は異常なほど過剰反応した。

イライラする。
お前はおかしいんだよ。
社会不適合者。
ワガママクソ女。
イライラする。
身の程を知れ。
仕事できないくせに愚痴言うな。
お前は無価値。
イライラする。
死んじゃえ。
死んじゃえ。
死ね。

私が自分を許せるのは、ドロシーを許せたときだと思っていた。ドロシーごと愛せたときだと思っていた。

でもそんな日が一向に訪れない。ドロシーはいつでも私を殺そうとする。やめてよ。私は生きたいよ。無価値だなんて言わないで。生きてるだけでいいって言って。許して。ごめんね。何もできないくせにいつも愚痴ばかり言って、何もできないくせに自分勝手で、何もできないくせに生きてて、ごめんね。

ねぇドロシー、私はこのままずっと、あなたに嫌われたままなのかな。ねぇドロシー。このまま生きていても、私はあなたに死んじゃえって言われ続けるのかな。

悲しい。苦しい。目の前が真っ暗だ。頭がぐちゃぐちゃだ。ドロシー。誰か。助けて。

私は今日も、ドロシーのせいにする。ねぇごめんね。私があなたのせいにしている限り、きっとずっと、私たちは和解できないね。