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「『中庭同盟』は読まない」宣言につきまして


【概要】

先日、2022年6月4日、私は以下のような宣言を出すに至りました。

 こちらについて、もう少し細く説明しなければ、様々な誤解を生じるようなので、補足したいと思います。

 私にとっても、まだ生々しく被害の記憶の残る出来事に関わり、読み苦しい点もあるとは思いますが、特にこれから小野不由美原作の『ゴーストハント(悪霊シリーズ)』(以下GHと略します)ファン界隈に参加する方に知っておいて頂きたい内容です。

 五月末以来、友人一名とともにGH界隈で遭遇した悪質な嫌がらせや、誹謗中傷に対処してきました。その事件の詳細については、複数の方の被害が関わっており、また自身の被害が表沙汰になることを望まない方もいらっしゃいますので、これ以上詳しく述べる気が無い事は変わりません。

 私や、周辺の方に探りを入れるような事もやめて下さい。

 「『中庭同盟』は読まない」と宣言するに至ったのは、事態を解決しようと試みる中で、この同人誌をめぐって、あまりに多くの物事や人間関係が歪んでいる事に気付いたからです。

 端的に申し上げれば、現在のGH界隈では、かなりの数の、当該の同人誌の不正コピーが横行しているという疑いが拭えなくなりました。また、それらに対する感覚も、他の界隈に比べかなり麻痺しています。


【『ゴーストハント』界隈と『中庭同盟』】

 今更説明の必要はないでしょうが、『中庭同盟』(以下中庭と略します)は小野不由美先生自身がファンクラブペーパーに掲載していた、『ゴーストハント(悪霊シリーズ)』及び『十二国記』の短編小説を、ご友人が一冊に纏められ、追加短編も加わった、ファンにとっては「ほぼ公式の外伝集」といった性格も持つ同人誌です。同人誌自体に非常なプレミアがつき、現在は入手も閲覧も、難易度の高い物になっています。

 私自身、小野不由美作品全般のファンであり、この同人誌の名前くらいは知っておりました。当然内容への興味もありました。

 しかしながら、実際手にするハードルを思えば、そうまでして読むほどの情熱はなかった、というのが正直なところです。実際、現在普通に流通しているリライト版、及び、適正価格で手の届く、古書の類の内容で十分満足してもおりました。ですから、『ゴーストハント』ファンの一人として「読めるなら、読んでみたいなあ」と素直に思う程度の関心はありましたが、無理に手を伸ばす気は無かったのです。

 私が『ゴーストハント』関連の二次創作を、最初にpixivに公開したのが2021年の6月28日ですから、私のこのジャンルでの活動歴は現時点でほぼ一年弱、となります。

 その間、Twitter上などで、同作品関連の知り合いが増える中で、この同人誌に奇妙な意味が付加されていることを肌身で感じるようになります。単に読みにくいという以上に、その所有や、読んだ経験の有無がある種のステータスを生み、読んだ人は「既読です」とプロフィール記します。また、その内容について会話が出来る人が、ある種、ファン界隈中の上位カーストとも言えるものを形成していて、未読の人は妙に遠慮をするというような、新参の目には奇異に映る物事が多々存在しました。

 この時点で奇妙な状態だとは感じていましたが、個人的な活動の上ではそれほど気にしていませんでした。

 その後、2022年5月末頃、私自身と友人一名が巻き込まれたトラブルが発生しますが、この詳細については、上記の通り複数の方のプライベート、それもかなり辛い経験が関わりますので、ここで述べることは致しません。

 しかし、その対応の過程で、界隈に『中庭』の不正コピーがかなりの数出回っていること、更には現在大っぴらに「既読」を名乗っている人のかなりの数が、不正コピーに手を出したことを隠した上でそう名乗っているという疑いを、かなり強く抱くに至りました。

 手に入りにくい資料や、稀覯本、稀覯版の不正コピーの回し合いは、どのジャンルでも多少は存在する問題です。

 一件ごとに、適正な引用の範囲内に当たるかは微妙な事ですし、全てを暴き立てて断罪するような罪悪か、というと、そこまでのことでもないように思います。

 ですので、この場合私が問題にするのは、あくまで作品ファンとしての道義についてです。

 『中庭同盟』特有の問題とは、この同人誌の所有や、読んだ経験の有無が、ファンの間に歪んだ位階関係を生じていること、及び不正手段でそれを読んだ人間が、そのことは隠した上で、読んだ側の未読の人間に対するマウント構造に参加するのに憚りがない事です。

 これは、他の界隈と比べても、かなり異常な状態であるように思います。

 本来、全ての人の手が届くでもない、原作者が公式扱いもしていない同人誌の内容を、読んだ、読まないでファンの間に位階が生じる事自体が間違っています。それを読むまでに苦労した分、未読の相手に自慢したい気持ちが生じたとしても、それを露わにした時点で、大人気ないのは明らかでしょう。

 私が目にした「既読組」の、未読の人間に対するマウンティングや嫌がらせ、「既読」同士の結託や、被害に対する見て見ぬふりは、「ついうっかり」などというレベルではない悪質なものでした。私が接したものはほんの一部であり、実際の被害にあった人数、苦しみの総量は相当なものであると想像せざるを得ませんでした。

 この状態が、原作及び原作者への敬意という点で、そぐうものではない事は明らかです。


【『中庭』問題から「読まない」宣言】

 二次創作や、他の行動を通したファン活動は、大前提として、原作および原作者への敬意を備えたものであるべきです。

 ところが現状、Twitterを主にした「GH界隈」に参加すれば、必ず『中庭』の問題に突き当たります。

 人間関係のどこかに「既読組」は存在する事になるし、既読/未読の間の位階関係に気付かない訳にも行きません。誰かから「『中庭』読みたいですか?」と持ちかけられる事もあり得ます。そしてその時、相手の持っている『中庭』が正当な手段で所有しているものか分からず、それどころかかなりの程度、不正なものではないかと疑ってかからねばならない状態になっています。

 もし自分が、正当な手段で読むことが出来たとしても、それでは「既読組」同士として、その内容を話題にしようとする、その相手の『中庭』が正当なものであるかどうかも分からないのです。

 これでは事実上、『中庭同盟』に触れた時点で、原作及び原作者への筋を通すことは不可能である、と判断せざるを得ませんでした。端的にはそれが、私が「『中庭』は読まない」と宣言するに至った理由です。

 もちろんこれは、私が界隈におけるごく新参者であり、そもそも『中庭』に触れる前であったから取れる態度です。

 正当/不正を問わず、すでに『中庭』を所有し、読んだ人、又は親しい相手が読んでいる、持っているという人においては、それぞれにもっと複雑な思いや判断が生じるでしょう。私は自分の態度が唯一の正解と言う気もありませんし、他の人が同調してくれることを期待している訳でもありません。

 現在の条件の元で、いかに基本前提である、「原作と原作者への筋」を通しつつファン活動を続けるか、という事を考えた時、この他の結論が下せなかったというだけなのです。それがすなわち、「私は『中庭同盟』を読まないし、それについての話も聞かない」という宣言でした。

 この態度は、貴重な同人誌としての『中庭同盟』の価値や、収録作品の魅力を否定するものではありません。正当な方法でそれを読みたいと思う気持ちも、自然なものだと思います。

【新規の方へ、注意喚起】

 ただし、これから『中庭同盟』を読もうとする人には気をつけて欲しいのです。

 「中庭を読みたいですか?」「見せましょうか?」「コピーをあげましょうか?」「読んで聞かせましょうか?」という申し出に安易に乗るのは危険です。

 著作物の無断再配布が、法的にもアウトであるということがまず一つ。

 申し出た人の所有する『中庭』が、正当なものかどうか判断するのは難しく、かなりの程度、不正の可能性を考えなければならない事がもう一つ。「不正なものかも」という可能性を拭えない時点で、それに手を出すのは、基本的な原作、及び原作者への敬意を損なうものであることはよく自覚しておいた方がいいでしょう。不正な手段で読んだならば、その事実、及び内容については、自分一人の胸に留めて口外しない程度の覚悟が、本来必要であると思います。

 その上でなお、私が危険だと思うのは、やましい手段でそれを読んだ事で生じる、人間関係の歪みに巻き込まれる事です。不正だと知った上で差し出された『中庭』に手を出せば、その秘密で繋がった人間関係に嵌まり込む事になります。お互いやましいだけに、互いの行いに目を瞑り、手段の不正さは隠したまま「既読組」を名乗るという事のおかしさにも口出し出来なくなります。結果その周辺で起こる様々な嫌がらせやマウンティング、誹謗中傷にも目を瞑る事になります。そんな状況の中で、何人もの方が創作をやめたり、界隈や作品自体に嫌気がさして離れる結果になっています。中には、始めから筆を折らせる目的で、不正と分かっている『中庭』を渡したのではないか?というケースもありました。その弊害は決して無視できる程度のものではありません。

 安易に『中庭』に手を出せば、結果、『中庭』をめぐる価値観の歪みの中で、被害者ではなく加害者の方に成り果てるかもしれません。

 読むな、と言うのではありません。よくよく考えて、注意深く振る舞って下さい。ファン活動の上で、一番大切にしたいものが何なのかを見極め、責任を引き受けて、自分の振る舞いを決めて下さい。

【おわりに】

 現状、「『中庭同盟』は読まないし、その話も聞かない」と結論せざるを得なかったということは、私にとっても悲しい事です。

 ただしこの状況は、いつからか積み重ねられたファン界隈の愚かしさの結果です。ある意味自業自得であり、ほんの新参ではありますが、その一端に連なる以上、私にも責任があると考えます。それをどう果すか、ということを考えた時、他の結論は出せませんでした。

 これは私の結論です。

 繰り返しますが、これが唯一の正解と主張するものでも、他の人に同じことを期待するものでもありません

 ただ、これからこのジャンルに参入する方、活動歴の浅い方には、『中庭同盟』をめぐる問題のこの側面を知っていて欲しいし、その上でよく注意してほしいと思います。これ以上の被害者が出てほしくない、というのが第一に願う事です。

 尚も、自分の『中庭』が不正なものだと知りつつ、堂々と「既読」を名乗り、マウント構造に参加している方の事はよく分かりません。何故自分の被害は訴えながら、同時に自分が目を瞑ってきた、筆を折り、あるいは気持ちの方が折れて、界隈を去っていった他者の苦痛は無かった事に出来るのか?これからも無いことにしていくつもりなのか?

 そんな事が出来る動機も、感情的な折り合いの付け方も分かりません。

 少なくとも、そこで行われていることは「ファン活動」ではないし、生まれるかもしれなかったたくさんの作品を葬り、ひいては界隈自体を殺していく事です。そんなことに目を瞑らなければ参加できない人間関係が「ファンダム」である訳がないし、そこが『ゴーストハント』界隈であるなどとは私には思えません。

 そんな関係は私には必要がありませんし、興味もありません。

 あなた方の閉じた世界で勝手にやっていて欲しい。

 しかし現状、『中庭』に手を伸ばしてそこに巻き込まれない事は難しいようです。ですから私は『中庭同盟』は読みませんし、その話も聞きません。

 方法はわかりませんが、現在の状況が解決し、全ての『ゴーストハント』ファンが気持ちよく活動出来る状態になって欲しいと願っています。何よりも思うのはその事です。


2022年6月17日 うめこ

※追記 『中庭同盟』『中庭』が「未収録短編」という言い方になった場合も、伴う問題は変わりませんので、各位でご注意ください。

 

 

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