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2023/12/13 メリダもプルポ

“メリダの目抜通りに入る角を曲がって10mほど行ったところ、二軒目のプルポ(たこ)屋に入ってみて!ボクはその後とても楽しかったし、もしそうならなくても心地よい安息が得られます。とても感じのいい店“

これは今回の巡礼でボクから皆さんへ送れる確度の高い言葉だ。そこで5人のスペイン人と出会い、楽しい巡礼を経験した。ちなみに一軒目の店はデカくて熱烈強引な客引き、それは年末のアメ横並みの勢いだ。メリダにはきっとプルポ屋は沢山あるが、二軒目に吸い寄せられた我々。ロドリゲスさんは飛び出してきて店の前を通り過ぎるトニーを叫んで呼び戻した。

ロドリゲスさんと梟(ふくろう)とは今朝パラスデレイのカフェで初めてご一緒した。ボクらが先に出発したのにいつの間にか抜かれていた。ハイペースに息が上がったボクをみかねたトニーが、廃墟の倉庫みたいな所で休憩してくれた。彼らはその間に抜き去ったのだ。
トニーはトレランチャンピオンを彷彿させる軽快な身のこなしだった。ボクも調子いいはずなのにどんどん引き離されて、まるで調子が悪いかのよう。彼はボクのトレッキングポールが調子悪いのに気づいて自分のを貸してくれたり、休憩の時にエネルギー補給の食物をくれた。宿も既に選んでくれている。至れり尽くせりなのだけれど、とにかく力の限りついてこい!みたいな。進むペースは早いが休憩は少ない。彼と一緒にいると独特の張り詰めた感じというか、まるで聖なる時間みたいなそんな空気が漂った。彼がカミノの本を書くつもりだと言ったから?いやどちらかといえば彼の自分に厳しい性質?信仰心からかも。スペイン人的なファミリー感や社交性と相まるので、強制感はないけれどもダラけ感もない、絶妙なテイストを味わう。ただ、これは真剣なビジネスの話と同じようなアイスブレイク後の時間なんだという、そういう彼の思いはひしひしと伝わった。

メリダ手前の街で大きな川にかかる橋の上から。全体的に川の水量が多かった印象。温暖化の影響?

メリダに戻る。4人でプルポを食べていると若い2人組が入ってきてボクらのテーブルで止まった。ロドリゲスさんが呼び寄せたのか、トニーが格好いいからか。他に団体客がいなかったからかも。彼らはホセとその兄。とても若く、そのせいかロドリゲスさんは全員分奢ってくれた。彼は60代らしいが、だからと言ってそんな必要はないのに。こういう時の高齢者の振る舞いはどこの国でも同じなのかも。ごちそうさまでした。
ちなみにロドリゲスさんはこんなことを言う。何度も。

「彼(フクロウ)は私のパートナーではない」

朝も昼も言った。毎回大笑いしてしまう。別にパートナーでもOkayだよwまあロドリゲスさんがそういう世代だからかも、ということで片付ける。

メリダの街を出てしばらく行ったところ。左から梟、ホセ、ホセ兄、ロドリゲスさん。多分

実はこの日の午後をボクはあまり覚えていない。ひたすらついていって、気がついたら15時過ぎ(30kmほど歩いたのに!早い)くらい、アルスーアの検問所みたいなところで出身地などを報告し、トニーについていって近くのホステルにチェックインした。

覚えていないが、確かひたすら観察していた。それで彼らの興味や性質をなんとなく把握したおかげで翌日、そこそこコミュニケーションが取れた気がする。
先週末のテレビで、役者さんがどうやってセリフを覚えるかという話題が上がっていた。活字を全部暗記する人もいれば、筋を理解して後は単語を拾うという人もいた。ボクはこの後者に似たことをずっとやっていた。スペイン人同士が話すのをみながら話題とか合意するところを追いかけつつ、聞けた単語を拾う。その意味ではスペイン人が複数人いたのは幸運だった。しかも彼らが初めて同士だったので、暗黙知が少なくてハタからでも理解しやすかったと思う。
彼らが喋っているのをみているだけでボクが話せることが増える、理解が深まる。自己啓発的なトレーニングはグループワークがいいと聞いたことがある。これはその理由の一つかもしれない。

そもそも英語で話している時でも、ボクは相手の身振りや表情で筋を大まかに理解し、単語を拾っている。それを初めて自覚したのは実は今回の旅である。空港からレオンに向かう電車の中でボクは隣の席のスペイン人と話していた。ペンか何かを拾おうとして視線が床、つまり彼以外に移った途端に真っ白になった。シートに戻って彼の顔を見ながら聞き始めたら、またやりとりが成立した。その自分の、曲芸みたいなハッタリ具合がなんとも可笑しい。

イベリコ豚に種類があるという新事実。真ん中のライン。ロモという、しっとりしたハム。超美味

パラスデレイからアルスーアまでの29.2km

追加情報、もしこのアルスーアという街に泊まるなら出発地点付近の白っぽい小綺麗なホステルに泊まるといい。部屋と浴室は綺麗で広くそれぞれにオイルヒーターがあって好きなだけ洗濯物が干せた。ホテルは家族経営で5歳くらいの女の子と若い夫婦で近所の人たちといわゆる豊かな生活を送っていらっしゃる。今回はトニーが社交的なおかげで和やかな関係が出来上がり、横でやりとりを聞いていたボクも2、3質問できたりして。5歳くらいの女の子とも“人見知らないでよー“くらいのやりとりができて、まるでスペイン人になったような気分を味わえた。

今後スペイン旅行するような機会があれば自分もここにも立ち寄りたい。そして同じバールにいってレモンビールでも飲みながら、ロモをつまんで「あの頃はスペイン語分からなくてさー」なんて言いたいな、と空想する

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