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マイ・ワーマタ・デイズ ~vol.5 仕事好きな元呑兵衛が産休を迎えるまで~

酒と酒のある空間が好きな、もとい、好きだった、東京在住30代前半の総合職の女です。仕事も経験を積むほど面白さが増す中、ある日マタニティライフがスタート。vol.1では「呑兵衛からの卒業」、vol.2では「乗り切れツワリ」、vol.3では「安定期と言われる所以」、vol.4では「ハピマタライフとは」と、妊娠初期から中期にかけてのことを書き留めてきました。

vol.5は、妊娠26週目から34週目、妊娠中期から産休に入るまでの、仕事から離れる寂しさを感じていた頃のログです。

ー妊娠26週目ー

保育園の見方が変わった。

保活について、苦労話を先輩方やネットから散々浴び、私の住区を告げれば「激戦で大変らしいね」と言われ続けてきた。そんな心構えがあり、ベビーが生まれた直後は貴重な時間をできる限り心穏やかに過ごしたいと思った私は、つわり明け直後から区役所にレクチャーを受けに行った。そして園見学は混雑時期を避け早々に終わらせ、夏を迎える頃には戦略を決定し、後は時期が来たら申請するだけにしておこうと計画。とにかく最悪な保育園でなければどこでも入れたら御の字だろうと思っていたものの、これが園見学を重ねるうちに、お友達と絡みながら走り回り、ミニチュアサイズのキュートなトイレでトレーニングに励み、こんな見学者にも笑顔で挨拶してくれる元気な子供たちを見たこと、それと、ひとつひとつの活動に意味があることを丁寧に解説してくれた園長先生たちのおかげで、保育園の見方が変わってきた。保育士さんたちは、園内はもちろん散歩で行く先の公園の遊具や衛生面までも気にかけ、子供に与える影響を日々細かに考え続けているということを知った。こだわっている保育園の手作り離乳食は日頃自分たちが食べているものより余程良い材料だったりするし、お日様の差し込む広い園庭でお友達と毎日思いっきり遊べて、そこで集団行動という社会が学べる。そして、保育士さんというプロの教育を受けられる。親にはテンプレートのように「0歳から保育園に預けるなんて可哀そう」と言われ、実際親が働きたいという都合で預けるのだが、保育園に通うのは仕方ないとか、決してネガティブなものでは無いと思うようになった。我が家なりの優先順位を付けて結論を出したい。

ー妊娠27週目ー

通勤の負担軽減のために。

満員電車は、自分の体力的な不安と、周りからしても妊婦がいたら迷惑だろうと思うので、勤務時間を1時間前倒しに変動させてもらい、ピークを避けている。朝のラッシュもそうだが、働き方改革の効果か、特に定時直後の品川駅構内の通行者密度は凄まじく、しかも一日の疲れを背負ったサラリーマンがひしめき合うということで息もしにくい。これが1時間早く通過するだけで全く違って、他人と身体が触れること無く電車に乗っていられるし、5回に1回位だが座れたりもする。さらに負担を軽減する方法として、駅までのバスも当停留所始発を駆使することにした。住まいの最寄りのバス停にはたまたま操車場があって、今さらながら当停留所始発の便が紛れていることに気付いた。そうとなれば、併設されている営業所を訪問、事務処理をする窓口のおじさまに、発着する全路線の当停留所始発便を全て知りたいと、お腹の膨らんだ私は恐る恐る(のつもりがたぶん堂々と)申し出た。お忙しいなか面倒な依頼を申し訳ないという思いでいっぱいだったが、おじさまは快く、なかなか手間取りながらも該当する全路線分コピーを出力して丁寧に教えてくれた。親切な対応のおかげで、毎朝の通勤の平和だけでなく、産休中の外出や育休中のベビーカーでのお出掛けに利用できそうな、意外な時間帯に意外な方面に向かう操車場発の臨時路線も知れた。今後の楽しみまで増えて感謝である。後日、バス停に貼られている時刻表を見ると、当停留所始発便が分かるものに差し替えられていた。おかげで以前より始発便は混むようになった気がするが、他の利用者にも役立っているならそれは良しである。

ー妊娠28週目ー

仕事もベビーも、準備は前倒しで。

今まではポコッと子宮の壁に当たる程度だったのが、昨日辺りから子宮をなぞるように触ってきたり、同時に複数箇所を押す感覚があったりして、胎動にベビーの大きさと力強さを感じるようになった。我が家にやってくるその日に向けて自宅のレイアウトを変えたり、無印良品で収納を増やしたり、最低限必要なグッズを選び始めたり。この機会にとずっと気になっていた外注のお風呂クリーニングも入れた。3時間奮闘してくれて水垢からフィルターまですっきり。いつ入院となっても、破水しても対応できるように、準備は前倒しで完了し安心しておきたい。

ー妊娠29週目ー

元呑兵衛が良く聞かれること。

「たまに飲みたくならない?」と、良く聞かれる。私も妊娠前、それが気になっていた。実際は体調が不安定になるので、自然に飲まなくなった。でも、美味しい食事の時に、日本酒やワインといただいたらもっと美味しいだろうと思うことは、度々ある。夏日のランチビールが羨ましいことも否定できない。聞かれるたび、そんな事を答えている。

ー妊娠30週目ー

定例飲みメンバーによる壮行会。

妊婦の誘い方って難しい。私も妊娠前まで、時間や場所はどう配慮すべきなのか、そもそも誘っていいのか、妊婦の状態が未知で悩んだものだ。しかも人によって体調も気持ちも千差万別。そこで、元々人の集まる場所が好きで、比較的体調の良い私の答えは、「誘ってもらえるととても嬉しい。でも体調が分からないので、当日の参加を確実と言えなくて申し訳ない」だ。もし注釈を加えるなら「当日の参加を約束できないので幹事が務められない。あと禁煙なのと、一次会までで。万一何かあった時にタクシーで自宅や病院に向かえるエリアだと安心」と添えたい。過去の私は「飛んでいくのでぜひ誘って。フットワークの軽さが売り。声があれば幹事やるよ」だったので、その変化は大きい。会社の同じフロアの、部署を横断した気の合う飲みメンバーが、そのあたりを察した様子で、「●月●日空けといてね」とさらっと誘ってくれた。私の壮行会だった。中には気さくな役員の方も居て、夏前の澄んだ夜空の下、テラス席のソファに深く腰掛けさせてもらい、10数人と賑やかで楽しい時間に浸った。慣れない主役にしてもらった時の嬉しさは、これまで会場探しやアサインなど業務外も張り切って幹事業に手を出してきただけ倍増するような気がした。

ー妊娠31週目ー

仕事が減っていく寂しさ。

任される仕事は自分の組織人としての価値の物差し。自分が生み出してきた仕事や人脈もある。今まで大事に育ててきたそれらを、スマートに抜け漏れなく引き継ぐのが産休に入る者の使命だが、順調に手から離れ、タスクが日に日に減り、ネットニュースを読んでいる時間ばかり増えると、素直に寂しいものである。私はやはり仕事をしている自分が好きみたい。

ー妊娠32週目―

産休のご挨拶。

挨拶まわりの時間や体力は厳しいのと、異動でもなく私の場合9ヶ月もすれば戻ってくるので、社外関係者には直接のメールやFacebookで産休のご連絡を発信した。思った以上に返信や「いいね」が返ってきた。斜陽と言われがちなFacebookもこれだけの多くの人が見ているのかと驚いたくらいだ。何か対応があってもいいように最終出勤日の1週間前に発信したのは正解で、寄せられる数々の温かいコメントに感激しながら余裕をもって返信できた。社外に伝え終わると、気持ちは一気にお休みモードに移行し始めた。

ー妊娠33週目ー

最終出勤日。

産休は異動と違うので、また暫くして戻る人間が必要以上に挨拶に回っても若干うっとおしい気がして、時間と加減に配慮したかった。先ずは同じフロアにいるトップ、社長と副社長は出社が早いので、人もまばらな早朝に丁重にご挨拶。それと、妊娠中よく声をかけてくれたりアドバイスをくれた女性の先輩方や仲の良い人たちには、今後もよろしくとばかり、ランチ時間に可愛いお菓子を持って話しに行った。他に挨拶をしておいた方が良いと思う人たちには、手ぶらも何なので小分けの煎餅を持って、時間を掛けないよう気にしながら速やかに席をまわり、最後に、直接迷惑をかける上司や自部署のメンバーには定時前の終礼で、ご挨拶と共にひとりひとりに選んだ紅茶やお菓子をお渡しした。全ての引き継ぎの最後に、自分のアドレス帳の備考欄へ「産休・育休中」と登録し、メールの自動返信設定を完了した時、いよいよと思えた。お祝いや御礼にと戴いた大きな紙袋をがさがさと下げて退社。家に着くと、最後に主人が大きな箱を持って出迎えてくれた。箱には、綺麗とは言えない大きな手書き字で「10年間お仕事お疲れさま」と書かれている。それは素材と肌触りの良いパジャマだった。入院用に前開きのものが必要で、でもお値段が張るからと購入を迷っていたメーカーのものだ。これまでそれなりにも仕事を頑張ってきて良かったと思える、心温まる一日だった。

ー妊娠34週目ー

産休生活のはじまり。

通勤ラッシュを避けて蔦屋書店入り。スタバは全てのメニューでエスプレッソをディカフェに変更できる。カフェによってディカフェの良し悪しは様々だが、スタバのそれは苦味もまろやかさもあって美味しい。充電のある人気の窓際席も、平日朝となれば空いている。ビル群と小綺麗な身なりで颯爽と歩く人達を眺めながら好きな本を読むこの時間は、家でソファに転がっているより澄んだ気持ちでリラックスできる。マタニティヨガと、夫協力の長距離散歩のおかげで、身重と言えど腰痛などのマイナートラブルもなく、姿勢も崩れることなく足取りは軽い。カラダが軽ければ心も軽やかである。勤続10年で迎えた初めての長期間の休み。とはいえ旅行に飛び出したり飲み歩くこともできずに暇を持て余す自分を不安視して、初めの1週間は1日ひとつ以上リハビリの如く予定を入れてみた。無事に、未知の産休生活がスタートした。

~妊娠から産休までの私の拙いライフログはここまでです。お読みいただきありがとうございました~

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