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おっちゃんと呑みたかった。



おっちゃんは、この世にもういない。

駅前の繁華街を通ると、

「大人になったら呑みにいこうな!!」

と、言ったおっちゃんをよく思い出す。



繁華街でどうしようもない若者を沢山助けてくれたひと。

大人の相談相手だったカッコいい大人。

たぶん、進路指導の仕事をしていたおっちゃん。

私も、高校生の多感な時期にそんなおっちゃんに助けられた。

高校受験に失敗して、学費の掛かる私立の美術高校へ行った私は、躍起になって絵を描いていた。

確かに、好きではあったけど

何度も展覧会に出していると、どのレベルでどの力量で方向性でかけばある程度のものと評価されるのか分かってくる。

親にも先生にも、結果が望まれていると思っていたし、結果を出す為の努力をした。

それは徐々に

私がかく必要のある絵ではなくなった。

タイトルと絵のバランスも、絵も、結果のために計算をした。

芸術に答えはないというけれど、

評価する人がいる限り、評価という答えはある。

苦しい。



当時は、東日本大震災後で

精神的に街が疲弊していて家庭も崩壊寸前で

評価しか居場所がなかったような気がしていた。


そんなときに、当日入り浸っていた高校の広報室でおっちゃんに会った。


ギリギリで保っていた毎日に、

ニヤッとしながら酒やけした声で言われた。

「愛嬌あればいいんだよォ!、好きなことしなよォ。」


適当すぎて笑った。



でも、評価じゃないあったかさを感じた。

何百にんもの若者に慕われて

その若者達の立ち上がる力を信じてる姿。

ちょーカッコいい大人じゃんと思った。


大学受験は、

「告白だ!!ラブレターを読むんだよォ。」

と、また適当に素敵なアドバイスをもらった。

結局当日は面接の教授たちに、

告白みたいだと笑われた。

なんか、楽しかった。


そして今は、

絵や評価の答えを必死に探していた時間も、

選んだ道も後悔していない。

自分の人生を自分の責任にしてくれた

適当に聞こえたあったかい沢山の言葉。


でも、おっちゃん、

私達が切り開く未来、

見れてないじゃん。


今も節目節目に思い出す沢山のエールを

本当にありがとうございました。

私達にとっては、あまりにも早い別れでした。

もう数年前のことですが、

あの日の、沢山の、沢山の大人達の涙が脳裏から離れません。




そして今日も、おっちゃん街を通る。






うめきち。