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もし光源氏がフランス革命にいたら 氷艶2019


映画館で高橋大輔を見た。平安装束を着て、氷のうえを踊る光源氏。「氷艶2019」のディレイ・ビューイングである。


ひとことでいうと、たいへんおもしろかった。おもしろかったっていうか、伊勢海老とトリュフと松阪牛とキャビアのカレーみたいな?

キャストは、フィギュアスケーター、歌手、俳優、和太鼓奏者、ダンサー、宝塚女優、子役、とまあすごいし。

ストーリーも衝撃展開。源氏物語だよ、源氏物語のはずなんだけど、冒頭アラジンで、途中ベルばら的展開もあって、後半は完全にレ・ミゼラブルで、最後はエリザベートみたいな。衝撃展開。それでいて、結構泣いてる人もいて。

キャストも演出もストーリーも、すべてが過剰で、なんかもう、なるほど世の権力者はこうやって世界を楽しむのかと思うような感じでしたわよ。

横浜アリーナのスケートリンクが舞台で、そこにプロジェクションマッピング。白くて大きな舞台に、映像はとても映えるのね。そこに出てくる役者はもちろん、基本的にスケート靴履いて滑る。荒川静香が十二単の裾をひいて滑ったりとか、まあかっこいいし、スケートでの殺陣とか(どうして源氏物語で殺陣があるのかはおいておいて)スピード感あってぴったりだなあと思ったり。


なんやかんや言ったらきりないのだけど、とりあえずストーリーの解釈の自由さがピカイチでしたね。源氏物語の変奏は大好きなのだけど、こんなにアクロバティックなのは初めてで大興奮。光源氏によるフランス革命だった。

どうして、光源氏が女物の着物かぶって市場に出てって、りんご盗って町の人に怒られるんだとか。
どうして、朱雀帝が若紫に横恋慕して、拒まれて彼女を牢獄に閉じ込めて、毒殺しようとした盃を彼女が奪って身代わりに死ぬんだとか。
どうして、民衆が弘徽殿女御の圧政に反発して、海賊たちとともに自由と平和を求めて光源氏を中心に立ち上がるんだとかね。


書ききれないほどトンデモ展開があるんだけど、こうやって見ると、エンタメとして自分たちの慣れ親しんだ型がよくわかる。

非常にわかりやすいヒーローモノだ。悪役によって得るべき王位から退けられた主人公が、艱難辛苦に出会い、ヒロインの愛を確かめあい、結果、人民のために王となる!(けど死ぬ)という。この型に、源氏物語キャラをキャスティングするとそうなるのねという発見。


それ含め、ふつうおもしろかったし、高橋大輔の光源氏も悲哀があってとてもよかったし、平原綾香の藤壺も儚い美しさで説得力があり、荒川静香・弘徽殿女御は完全にディズニー・ヴィラン殿堂入り。なにかで見られる機会があればぜひに。


うめざわ
*身体性って、ものすごい説得力があるのだとただ感じましたよ。アスリートかっこいい。


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