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欧米の働き方が女性に優しいわけ

さて、いきなりですが…。

あれほど頑張っていたのに…素敵な先輩だと憧れていたのに…あの人も結局は子ども産むまでの人だったのね…。

働いていて、そんなことを思われたことはありませんか?

頑張っていても辞めていく女性。それは日本人女性の働くことへの意識が低いからでしょうか?それとも夫の妻への理解が無いからでしょうか?

決してそうではありません。

というわけで、今日は働き方について考えてみたいと思います。




全く違う働き方

あなたは「メンバーシップ型雇用」「ジョブ型雇用」という言葉をご存じですか?

最近、「ジョブ型」という表現を良く目にしますが、この言葉を最初に使われたのは浜口桂一郎先生※です。なぜ新しい言葉が生み出されたのか。それは日本と欧米の働き方を明確に区別するためです。

この2つの言葉を比較してみると、日本と欧米の働き方が根っこの部分から違うことがよく分かります。

それでも、かつては欧米と日本の働き方には似た部分がありました。けれど1970年代以降、両者の働き方の差はどんどん開いていきました。ここではその詳細には触れませんが、それでも、変化し続けた欧米と変わらない日本、その両者間で、女性の働き方と生き方には大きな違いが生まれてしまったのです。




雇用形態の違い

そこで、日本の雇用と欧米の雇用をざっくりと3つの点から比較してみます。その違いに、あなたはきっと愕然とするはずです。

採用方法

採用方法は根本的に違います。

たとえば、日本の雇用の最大の特徴は新卒一括採用です。ところが欧米の雇用は、既存のポストの欠員補充公募です。

つまり、日本では学生の就活の競争相手は学生ですが、欧米では欠員が出るとスキルを持つ人がそのポストに応募します。その際、年齢も性別も問われません。ですから必然、学生の就活の競争相手は社会に出ている大人ということになります。


給与

給与も驚くほど違います。日本は、武士は食わねど高楊枝式の、じっと辛抱強く我慢して待つスタイル。けれど欧米は、西部劇のバーで出てくる代金引換払いのようなスタイル。

日本の雇用の特徴は賃金後払いで、欧米の雇用はそのポストに対する給与が支払われるという仕組み、ということです。

ご存じのように、日本企業の大卒の初任給は入口で金額が抑えられていて、ほぼ同額です。ただ結婚して子どもが生まれ、教育費がかかるようになる頃には、家族が養える程度の給与額になっていきます。ですから、途中で退職して転職先で同じ額か、それ以上の給料を手にできなければ、若い時に先送りした給料を取り戻せないとも言えます。ところが、欧米では時間が経過しても給与金額は上がりません。もっと高給を望むのであれば、相応のポストにチャレンジします。そこでは、若者であっても高いスキルを持っていれば新卒でいきなり高給取りということも普通におこり得るというわけです。


職務

どんな仕事をするのかという点も、全く異なります。

たとえば、日本の雇用の特徴は人事の力が強いですが、欧米の雇用は欠員が出るとそのポストにふさわしい職業資格を持つ人を採用します。

日本では、入社後、あるいは研修後に配属が決まる、また、配属先の発表があるまで、営業なのか事務方なのか、東京勤務なのか札幌勤務なのか分からないというケースさえあります。人事の発表を待つしかないのです。けれど欧米では、応募する人は職務記述書に書かれた業務内容を見てチャレンジしますので、働く前に既に自分の職務をきちんと理解しているわけです。




暮らしと職場が繋がった社会

世界経済フォーラムの「ジェンダーギャップ指数」で日本は毎年グズグズとお尻の方に居続けています。政治と経済の部門で男女格差が大きいからです。そして、その経済格差を生み出し続けているのが「メンバーシップ型雇用」という働き方です。

日本女性は、どんなに優秀でも30~40歳であっさりと職を手放します。それは「メンバーシップ型雇用」が長時間労働とセットだから。この働き方には、夫婦二人ともが仕事を辞めずに子育てをするという選択がそもそも組み込まれていません。ですから、よほど環境を整えなければ途中で挫折しますし、無理をしずぎて体調を崩す女性が少なくありません。

「ジョブ型雇用」であれば、ポストを得ると長期働けますし、長時間労働もありません。一度家庭に入っても再チャレンジができます。けれどこの国では、優秀な女性でも家庭に一度入ると一人前の労働者としての復職はなかなか叶いません。

「メンバーシップ型雇用」は、会社と家庭を一体化した社会を作り上げています。だからこそ仕事とプライベートの区切りが曖昧で、体力のない人や、頑張りすぎる人は、体調を崩したりメンタルを悪化させかねません。



結びに

「メンバーシップ型雇用」「ジョブ型雇用」、この2つの働き方の違い、お分かり頂けましたでしょうか。力尽きて辞めていく女性も、そんな働き方に見切りをつけて辞めていく女性も脱落者ではありません。個人の権利がはっきりとしないない「メンバーシップ型雇用」が女性から社会で働き続けて成長する機会を奪っているのです。

家族を中心として組み立てられた「メンバーシップ型雇用」では、個人の甘えは許されません。個人より社会、個人より経済成長、個人より国の繁栄が求められます。家族を中心に組み立てられているというのに、皮肉にも、子どもを産むことや親の介護をすることはペナルティになることさえあります。制度が家族をバラバラにすることさえあるのです。

常にパートナーを探し、離婚することが普通な欧米には、家族に対する冷ややかな印象があるかもしれません。けれど彼らは、パートナーや家族を、一緒に生きる人を、求めてやまない人たちなのです。だからこそ、彼らは平等を手放そうとしないのです。男女が平等に働き、助け合えることを大切にしているのです。そう、「ジョブ型雇用」は、労働者個人が幸せに生きる権利や財産が守られる制度なのです。

※参考: 浜口桂一郎『働く女性の運命』2015文春新書



#メンバーシップ型雇用
#ジョブ型雇用


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