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非正規の派遣で働くあなたへ


もしもあなたの働き方が差別されているとしたなら?





差別されているかも…

というわけで、前回、日本の派遣の賃金の低さを欧米と比較してみた。


前回触れたように、日本の非正規ではたらく派遣社員の賃金は欧州とは比べものにならないほど低い。

日本の非正規の派遣社員は、使う側からみるとなんともおいしい。

使う側にうまみがあるということは、使われる側は弱い立場に置かれているということ。つまり働く人が本当は手にするはずのものを手にしていないということ。

どうしてだろう。

どうしてこれほど欧州の派遣と日本の派遣は違うのだろう。



EUの考え方

そもそも派遣とはそんなものだと信じられているこの国で、派遣のことについて考えるのは難しい。当事者の苦しい悲鳴が、無残にもかき消されてしまう。

「おいおいこのDX時代に何寝ぼけたこといってるの。ネットごらんよ。色々な働き方あるじゃん。そっち行ったらいいじゃん」

なんていわれてしまう。けれどそんな言葉に引きずられてはいけない。それは使う側の意見だ。

本当に苦しいのも、心が不安定になるのも、使われる側。

ここでEUをみると、EUがどれほど働く人を守ろうとしているかがわかる。平等権を決して手放さない。この平等権を一カ所でも手放すと、後々多くの人が不平等な働き方の場にまきこまれることをちゃんと知っている。

だからこそ、EUではたとえ少数でも不平等な働き方は看過しない。

もちろん、

「おいおい、DX時代に何寝ぼけたこといってるの。ネットみてごらんよ。色々な働き方あるじゃん。そっち行ったらいいじゃん」

などという言葉は絶対に通用しない。

自分の時間とスキルを会社に提供し、その対価として受け取るのが賃金ということを誰もが自覚している。

働く場での平等は、働く人にとっては当然の権利なのだ。


EU派遣の2本柱

そのEUでは、企業は働く人を社員として雇う。これに該当しないのがテンポラリーな働き方で、派遣はここに入る。

ただ派遣は単なる有期雇用者とはちがい、直接雇用されない。ふわふわと宙に浮いたような働き方だ。だからこそ、しっかりと保護する必要がある。

そのためEUでは、派遣できるケースを限定している。それは、

■雇用している労働者が一時的に欠けたとき。たとえば病気や休みなど。

■使用側の仕事が一時的に増えたとき。新規プロジェクトの立ち上げなど。

臨時的にしか人を派遣してはならないというルールがある。

そして2008年の労働協約で2本柱が決められている。

それは、

待遇は均等でなくてはならない。その均等とは派遣社員を利用する企業で働く人と均等ということ。

②派遣で働く人は限定的で濫用してはならない


派遣を保護する法律

その2つの保護とは、

①雇用条件は、派遣される期間、同一の職務で働く社員の雇用条件を下回ってはならない。

それから、

②企業に臨時的に就労するよう派遣される。つまり反復継続的な派遣を防止している。

これがEUの派遣労働者を差別から守るための法的保護。

だからこそ、欧米で派遣といえば出来る人キャリアのある人といったイメージが強いのだ。賃金も相当に高い。

日本でもよく、会社に縛られることなく自由に働けるのが派遣といわれるけれど、日本の派遣は会社には縛られないけれど、同時にどこからも保護されない。加えて規制もほとんどないため、反復継続的な派遣社員が多いし、どんな働き方にも派遣が送り込まれる。

これこそがEUが恐れた濫用なのだ。

EUは知っているのだ。働き方の中で、最も保護が必要なのが派遣だということを。

なにしろ働く人自身を契約で動かす働き方なのだから。保護しなければ危険であるという考え方がEUのベースにある。



おわりに

EUと比較すると日本の派遣がいかに守られていないかが分かる。

たとえば同一の職務で働く社員の雇用条件を下回ってはならないというEUのルール。

これを日本に当てはめてみると、年収400万円の女子社員と同じ仕事をするのなら、派遣社員は時給で2,083円以上、社員の年収が500万円の場合、時給2,604円以上を受け取る必要がある。

これが均等であり、働く人の平等権であり、社会が整えなければならない同一労働同一賃金の考え方だ。

こうしたEUのルールをみると、日本の非正規の派遣で働く人は搾取されていることがよくわかる。EUでは中間搾取は禁止されているのだ。

派遣についてわたしたちはもっと知っておいた方がいい。働く人も、その周りの人も、使う側の人も。

知っておく必要がある。

法的に保護されない限り、それは搾取と隣り合わせの働き方だと思った方がいい。


※最後までお読みいただきありがとうございました。


※スタエフでもお話ししています。

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