『サファイア・ワルツ』についての覚え書き
はじめまして。
この短編小説は私の3作目にあたり、1999年に初稿が完成したものです。
アメリカの作家、イーサン・ケイニンの短編集『エンペラー・オブ・ジ・エア』(文藝春秋)の訳者あとがきで、翻訳者の柴田元幸氏が、 〈老人を主人公とした〉作品もあるが、ケイニンの小説は〈その老人たちにしても、どこか十六歳の少年が変装しているような趣がある〉と述べています。
私はこの一節に感銘を受け、ならば未熟な私も背伸びをし、精一杯変装したうえで、成熟した大人の老人を主人公にした一人称小説