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君のすべてを見たい

君は真っ暗闇の中で下着一枚になったことをぼくに告げた
素直に嬉しい気持ちを伝えてはみたけれど
本当は君のすべてを見たい

ラブホテルに入れば
あらゆる明かりを君が塞ぎ回るのはいつものこと
大画面のテレビを消してスロットマシンの電源プラグを抜く
ベッドの操作パネルを毛布で覆い非常口の誘導灯をタオルで隠す
ポチっと光る壁のスイッチはその前に洋服まで吊るす念の入れよう

わずかな光源も見逃さない君には感心するよ
おいでとそばに抱き寄せたのはいいけれど
本当は君のすべてを見たい

君の唾が甘いことは知っている
君の髪の毛がかぐわしいことは知っている
深く息を吸い込むように嗅いでいたいところは他にもある
君があのとき喉を音がするほど動かすことを知っている
君があのとき背中を綺麗に反らせることを知っている
丸いお尻のすべすべした肌触りにはいつも感動さえしている

頭の先胸の先足の先まで口づけで辿ってみたから
君の裸身が美しいのは暗闇の中でも明らかなのに
まさか
般若が笑っているわけじゃないよね
緋鯉が泳いでいるわけじゃないよね
本当は君のすべてを見たい

下着をすべて剥ぎ取ったら
君に内緒で明かりを点けてみるというのはどうだろう
行為の最中に
突然ビッカビカに辺りを明るくしたら君はどう思うかな
怒るかな悲しむかな泣いてしまうかな

大丈夫そんなことはしないそれが約束だったから
君が何を秘匿し何を大切に守っているのかぼくにはわからないけれど
ただときどきそういう残酷な気持ちが
どうしようもなくぼくの中に生まれることがあるんだ

君のすべてを見たいから
君のすべてを見たいから

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