見出し画像

背伸びの夕暮れ

背伸びをしてオシャレな服を着たら
それだけでモテるような気がして
わざと人が多くいる場所に出掛けてみたよ

美術館
ショッピングモール
船が停泊している公園

いっぱい女の子がいて
可愛い子も顔がタイプの子も
見つけることはできたよ
見つけてはもらえなかったけど

なんかやりきれないな
自分より全然オシャレをしていない人が
綺麗な恋人を連れて歩いていた
ますますこの世の無情を知った夕暮れ

何か大きな声で叫びたい気持ちだよ
たとえばベンチに立ち上がり
斜陽に染め上げられた係留船に向かって
思いの丈を肺が潰れるまで

後ろ髪にリボンを結んだ女の子
履き慣れないハイヒールでこけそうになりながら
ぼくの前にフレームインして
ひとり長い間船を見つめていた

萎れそうな姿で女の子は立ち去ったけれど
想像の余地を与えてくれる十分な時間を
ぼくにプレゼントしてくれた
そういうこともある
そういうこともあるよ

とっぷりと暮れた道を駅に向かいながら
ぼくはこれからもオシャレをしようと誓う
今度はたくさんの子じゃなくて
たった一人の女の子にモテるために



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?