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名作コピーの時間

最近参考にしている本の中に、名作コピーの時間という本があります。これは、雑誌ブレーンで連載されている企画で、広告業界の錚々たるクリエイターの方々が、自分にとっての名作コピーを3本ずつ選ぶという内容です。

この本がそれぞれの仕事に対する熱い想いや、なぜそのコピーが好きなのかが詳しく知れて、紹介している人の人間性まで垣間見えるのが面白くて何度も読み返しています。本を読んでいたら、私もコレがやりたい!!という気持ちが沸々と湧いてきたので、今日は私にとっての名作コピーを3本を紹介させてください。


□「書けそうで、書けない」永遠のお手本たち

文章を書くことは好きだったし、コピーの勉強をするまでは「キャッチコピーなんて、たかが15文字くらいだし余裕でしょ。」と思っていました。だけど勉強しているうちに気づきます。言いたいことをたった十数文字にまとめることが、どれだけ難しいことか。いいコピーは身体の中にスッと入って、なるほどなぁとストンと心の中に落ちる感覚があります。そういうコピーと出会うと、いかに自分がふわっとぼんやりしたコピーを書いているか、思い知らされるのです。これから紹介するのは、そんな私が日頃からお手本にしているコピーです。


1.一目で義理とわかるチョコ

1本目に選んだコピーは、ブラックサンダーのブラックバレンタインキャンペーンの『一目で義理とわかるチョコ』です。義理チョコってやっぱり少しネガティブなイメージがあるけれど、ここまで潔く開き直られると一周回って、義理チョコもなんかいいかも?と思ってしまう。この広告を一度見ると、今までは候補にもなかったのに、毎年義理チョコを買うたびにブラックサンダーを思い出してしまうほどのインパクトがあります。一文字もムダがなく、読んだ時の語呂感もいい。見た人にストレートに想いが届く、私が一番すきなキャッチコピーです。


2.結婚しなくても幸せになれるこの時代に、私は、あなたと結婚したいのです

TCCの最高新人賞も受賞したキャッチコピー。社会人になりたての2017年4月の朝、テレビから流れてきたCMで見ました。朝の準備で時間がないのに、冒頭のボディコピーにまず惹かれ、テレビの真ん前までわざわざ行き、釘付けになって最後の最後で度肝を抜かれました。時代がめちゃくちゃ的確に表現されていて、そうそう、私が言いたいのはこういうことなんだよ!と、CMを見て首を上下に大きく振りたくなりました。これは私だけじゃなくて、多くの女性の共感を得ていて、何度もSNSでバズりましたよね。私はよく「コピーが抽象的でぼんやりしている」と言われるので、解像度の高いコピーを書くぞ!と気合いを入れる時は必ず一度、このコピーを手で書いてから仕事に取り掛かります。


3.想像力と数百円

昭和59年のキャッチコピーなのに、今でも全然伝わるし古臭くないのがすごい。1984年なんて、私が生まれる10年前なので、30年以上経っているとは思えない…。多分、いまわたしが文庫本のコピーを書くことになったとして、本を読むことで想像力が身につくという機能に辿り着くまでに、どれくらいの時間がかかってしまうんだろう…とこのコピーを見るたびに考えてしまいます。でも、コピーライターってそういう仕事だなといつも思い出させてくれる。このコピーは私にとって、物事に隠れている本質を見つけ出して、言葉にすることの大切さを教えてくれる教科書のような存在です。コピーに行き詰まった時は、想像力と数百円…想像力と数…と何度も頭の中で繰り返して自分を奮い立たせます。


□私の血となり、肉となれ

コピーを書く時間が増えたことで、気付いたことがあります。いいコピーは、解像度が高いということ。そのたった数十文字の文章で、情景がはっきりと思い浮かんでくる。最近は、解像度を高く!ぼんやりしない!と、常に頭で考えながらコピーを書きます。それでもやっぱり、なかなか難しい。そんなときは、私の血となり、肉となれ!と思いながら、年鑑の中のコピーたちを写経して、身体の中にいいコピーを叩き込む日々です。