◆アイサツ

　ドーモ、海中劣と申します。こちらの記事はニンジャスレイヤーTRPGの小説風リプレイとなっております。ニンジャスレイヤーTRPGについては下記の記事をご覧ください。

　今回挑戦したのはニンジャスレイヤー公式の【イセ・ブルーオーシャンと秘密のロブスターの力】を元にした個人製作のシナリオです。

　挑戦するのはローン持ち重サイバネミリタリー狂人ニンジャ、サルーテ＝サン！

◆サルーテ　（種別：ニンジャ/重サイバネ）　　DKK：3  　　名声（フリーランス）：14
カラテ　　　　5		体力　　　11
ニューロン　　9		精神力　　8
ワザマエ　　　13	脚力　　　7/N
ジツ　　　　　4		万札　　　8（ローン12）

攻撃/射撃/機先/電脳　　6/20/11/13
回避/精密/側転/発動　　14/15/15/13
即応/緊急　　　　　　　1/0

◇装備や特記事項
　所持品　：『ZBRアドレナリン注射器』
　スキル　：『●連射3』『●マルチターゲット』『●時間差』
　　　　　　『◉重サイバネ』『◉シャープシューター』『◉ウィークポイント射撃』
　　　　　　『◉使命感（◉聖戦士読み替え）』
　　　　　　『◉◉タツジン：ミリタリーカラテ』
　　　　　　『◉知識：銃器』『◉知識：サイバネティクス』
　　　　　　『◉狂気：虚無衝動』『◉狂気：謎めいた儀式』『◉◉狂気：自我希薄化』
　ジツ　　：『★レッサー・キリングフィールド・ジツ』
　装備　　：『LAN直結型ハンドガンx2』
　　　　　　『バクチク・グレネード』『パルス・グレネード』
　サイバネ：『▶︎▶︎サイバネアイLV2』『▶︎テッコLV1』『▶︎▶︎クロームハートLV2』『▶︎▶︎生体LAN端子LV2』
　　　　　　『▷高性能赤外線ターゲッター』『▷内蔵型パルスダガー』『▷第二の心臓』
　　　　　　『▷回避パターン解析プログラム』
　生い立ち：『○元湾岸警備隊』

　それではやっていきたいと思います！

◆本編

（（（マケナイデー！）））（（（ガンバッテー！！）））

　イセの脳裏にバイオザリガニたちの声援が木霊した。最初は朧気にしか聞こえなかったその声は、イセがすべてを諦め意識を手放しそうになるたび、より強い声となって彼女のニューロンをキックした。

◆イセ・ブルーオーシャン （種別：モータル）
カラテ　　　　1    体力　　　2
ニューロン　　7    精神力　　9
ワザマエ　　　3    脚力　　　2
ジツ　　　　　0    万札　　　0

◇装備や特記事項
ヨロシデリンジャー（オノミチ・カスタムハンドガンx1とみなす）

『●マルチターゲット』『●時間差』『◉忠誠心：ヨロシサン』x2
『◉知識：バイオ系メガコーポ（ヨロシサン）』『◉知識：生物学（甲殻類）』

「おい、起きてるか」部屋の重い鉄扉が甲高い音を立てながら開き、イセは光の筋に瞼を刺されて呻き声を上げる。「大将が話を聞きたいってよ。出な」猫めいた縦長の瞳孔を持つ小柄なニンジャが親指で後ろを指した。イセはのろのろとした動きで立ち上がり、水溜まりの中でハサミを振るうバイオザリガニたちに愛おしげな視線を向けてから部屋の外へ出る。

「変な真似しやがったら俺のカマ・ブレードで切り刻んでやるからな」小柄なニンジャ……カマイタチはイセの背中にブレード状に飛び出した肘骨の切っ先を当てながら凄んだ。彼は暗黒メガコーポであるヨロシサン製薬の手によって生み出されたバイオニンジャなのだ。

　そしてカマイタチに命じられるがままハンズアップして通路を歩くイセはそのヨロシサンに所属する人間であり、バイオニンジャのプロダクトにも関りがある上級研究員だ。そんな彼女が何故自社製品であるバイオニンジャに脅されているのか？

「大将！連れてきたぜ！」やがて2人は『監　室』のプレートが貼られた扉の前に辿り着く。「中に通せ」扉の奥から男の声。「オラ、入れってよ」カマイタチは扉を開き、イセを乱暴に押し込んだ。イセは危うくつんのめりながら部屋の中にエントリーする。そしてそこにいた男たちの姿を見て、嫌悪に顔を顰めた。

「ドーモ、イセ＝サン。フォレスト・サワタリです」「フロッグマンです」ベトコンめいたニンジャ装束の男と、腰に干乾びた袋のような物体を吊るした男がアイサツする。「だいぶ憔悴しているな。ナムの水が合わんか」「……別に何も問題は無い」イセはあえて気丈に振舞った。囚われの身とはいえ、弱味を見せたくないのだ。

　そう、イセは現在、フォレスト・サワタリ率いるサヴァイヴァー・ドージョーの捕虜となっている。とあるプロジェクトに参加しているときに発生した事故でその現場にいたイセ以外の社員が皆死んでしまい、唯一生き残った彼女もサワタリの協力者である重サイバネニンジャに身柄を攫われてしまったのだ。

　不幸中の幸いだったのは、イセがサヴァイヴァー・ドージョーのバイオニンジャたちに惨たらしく殺されたり、肉体に不可逆的な損傷を与えられたりするようなことにはならなかったことだ。そのことについてサワタリに尋ねると、ここはハノイ・ヒルトンではないとの回答が返ってきた。そうならない保証も無いという脅しと共に。

　もうひとつイセにとって幸運だったのは、彼女が高い知能とサワタリたちが求める情報、その両方を持ち合わせていたことだ。サヴァイヴァー・ドージョーの面々はバイオインゴットの補給問題について常に頭を悩ませており、イセはインゴットの貯蔵されている施設についての情報を提供し続けることで己の身の安全を確保しているのだ。

　イセが愛社精神に満ちたヨロシ研究員であればそのような身内の情報を売るような真似はしなかっただろう。だが彼女は伏魔殿ヨロシサンで生き残ってきた人間であり、上昇志向を持った研究員であり、抜け目のない女であった。

「……次のインゴットがあるのはトネ湖近隣にあるヨロシサン研究施設……その大型冷凍保管庫だ」「フゥーム」イセとサワタリ、そしてフロッグマンの三人は額を合わせ、サワタリが何処かから調達してきたチャブテーブルの上に広げた地図を覗き込む。イセはネオサイタマ北西にある区画にペンを走らせ、丸を描く。

「ここにはヨロシ研究員たちがそれぞれの実験道具や研究成果を保管しておくための冷凍保管庫がある。当然インゴットも大量に備蓄されているだろう」「そうすっと、ちょいと警備が厳しんじゃねえのか？」とフロッグマン。「問題無い。先日の輸送機墜落事故の影響で殉職したであろう研究員たちが使用していた施設だからな」イセは皮肉げに鼻を鳴らした。

「いいだろう。情報提供に感謝する。フロッグマン＝サン、皆を集めてくれ」サワタリは地図を巻いて懐にしまい、指示を飛ばした。「これよりブリーフィングを行う。今回の物資強奪作戦は、おれとノトーリアス、サルーテ＝サンが向かう」

◇◇◇

「俺は認めねえぞ大将！」ハイドラの三つ目が彼の感情に呼応するかのように赤く輝き、薄暗い下水道にセンコめいた線を描いた。「部外者のそいつばっかり贔屓しやがって！」ハイドラは床に座って装備の点検をしているサルーテを指差し、がなり立てた。サルーテの表情は分厚いゴーグル、布製メンポ、ヘルメットに覆われており、窺うことは出来ない。

「よさねえかハイドラ！大将が決めたことだ！」「でもよお兄者！」「無駄口を叩くなーッ！」フロッグマンの制止も聞かず、なおも食い下がろうとしたハイドラをサワタリが一喝し、黙らせる。「……今から説明する。全員よく聞いておけ！」サワタリはその場に集まった面々の顔を順に見て、メンバーの選定理由を話し始める。

　今回の任務は極低温下にある冷凍庫内で行われる鹵獲が主目的であり、バイオカエルと一体化しているフロッグマン、動物をルーツとするバイオニンジャであるハイドラ、カマイタチはそのポテンシャルをフルに発揮できない恐れがある。肉体を液化させて戦うディスターブドも同様だ。つまりは消去法である。

「関係ねえよそんなこと！俺はニンジャだぜ！俺にやらせてくれよ！」だが、事情を聞いてもなおハイドラは納得しなかった。ここのところ任務で外に出ることが無かったために殺戮欲求が発散出来ていないことも関係しているだろうか。

「ふうむ」仮にそうだとするならば、イセのいる本隊にハイドラを置いたまま自分が任務に出てしまうのはうまくない。「……分かった。だが決して独断専行をしないと誓え」「ヤッタ！俺に任せておけよ！」サワタリはそのように考え、ハイドラの同行を許可したのだった。

◆フォレスト・サワタリ　（種別：ニンジャ）
カラテ　　　　10　　体力　　　17
ニューロン　　7　　精神力　　13
ワザマエ　　　11　　脚力　　　6/N
ジツ　　　　　5　　万札　　　20

攻撃/射撃/機先/電脳　　10/11/7/7
回避/精密/側転/発動　　11/11/11/12

◇装備や特記事項	
　マチェーテ二刀流、タケヤリ、サバイバルナイフ、ショートボウなど多数（カタナx2とスリケンとみなす）
　『●連続攻撃２』、『●連射２』、『●時間差』、『●マルチターゲット』、『●弱点：ナム妄想』、
　『◉頑強なる肉体』、『◉不屈の精神』、『★◉即死耐性』、『★◉トラップ設置戦術』

『●弱点：ナム妄想』：
　フォレスト・サワタリは彼自身の精神とグエンニンジャソウルがもたらす狂気にさいなまれている。
　アトモスフィアがハード化した場合、サワタリの回避ダイスは−１個され、
　以降戦闘終了まで１ターンごとに−１個ずつ増えてゆく。
　また上記とは別に、味方のバイオニンジャが一撃で２以上の『火炎ダメージ』を受けて【体力】を失った場合、
　サワタリのナム妄想はナパーム幻覚によって悪化し、サワタリ自身も直ちに【精神力】を１失う。

『★◉トラップ設置戦術』：
　サワタリは『連続側転』によって移動した手番中に、
　「その他の行動」としてトラップ設置を行ってもよい。
　トラップを設置できるのはこの手番中に彼が通過したマスで、
　かつ他のキャラや罠が存在していないマスに限る。
　サワタリは【ワザマエ】判定を『難易度：HARD』で行い、成功した個数までのトラップを設置できる。
　トラップの種類は以下の２種類が存在し、設置時は色分けなどで区別する。
　設置時はこの２種類を自由に混ぜてよいが、同じマスに２種類のトラップを置くことはできない。

　「致命トラップ」：『ダメージ１』、『回避：NORMAL』
　「捕獲トラップ」：『回避ダイスダメージ２』、『回避：NORMAL』
　　　　　　　　『ボス級の敵』でない者が捕獲トラップを踏んだ場合、そこで直ちに移動を停止する。

　マップ上に同時に存在できるサワタリのトラップは、最大で合計6個までである。
　トラップは味方には作用せず、手番中にこれらのマス上を移動した敵は、その都度回避を強いられる。
　一度発動したトラップはマップ上から取り除かれる（回避された場合は残り続ける）。

◆ハイドラ　（種別：ニンジャ/バイオニンジャ）
カラテ　　　　9　　体力　　　11
ニューロン　　4　　精神力　　4
ワザマエ　　　6　　脚力　　　5/N
ジツ　　　　　6　　万札　　　10

攻撃/射撃/機先/電脳　　9/6/4/4
回避/精密/側転/発動　　9/6/9/10

◇装備や特記事項
　『●連続攻撃２』、『◉頑強なる肉体』、『◉ハイドラの異常再生』、『◉即死耐性』

『◉ハイドラの異常再生』：
　戦闘中、各ターンの手番開始時に、ハイドラは自動的に【体力】を１回復する。
　またここで【精神力】を１消費した場合、【体力】を１ではなく
　【ニューロン】＋【ジツ】値の判定成功数だけ回復できる（難易度：NORMAL）。
　この判定時に6の出目が2個以上あった場合、部位破壊による能力値ダメージも即座に全再生する。
　上限を超えて回復することはない。
　火炎ダメージを受けてしまった場合、受けたダメージ部だけ、そのシナリオ中の【体力】上限も減ってしまう。

（愚かな。物見遊山にでも行くつもりなのか？やはり爬虫類がモチーフのバイオニンジャは知能も低い）その様を部外者であるイセは冷ややかな目で眺めていた。

　イセもただ何の意味も無くサワタリたちに情報を提供していたわけではない。彼女の狙いは研究施設に保管されているとあるデータとDNAだ。それはかつてヨロシサンに所属していたナカタという名前の研究員が残した研究資料だが、イセにはアクセス権が与えられていなかった。

　許可を得るための手続きをしている間に、他の研究員に研究成果を奪われてしまうかもしれない。もどかしい思いを抱えていた彼女にブッダは思わぬ形でチャンスを与えた。つまりイセは　サヴァイヴァー・ドージョーのニンジャたちを利用してそのデータを手に入れようというのだ。ハック＆スラッシュである。

（この野蛮なニンジャ共を出し抜き、私はヨロシ本社へ戻る。甲殻類の可能性を証明するために……！）イセの瞳に理想の炎が燃える。はぐれニンジャたちの捕虜となってからも消えることの無い夢の輝き、ヨロシサンCEOになるという野望の火が。

　……その様をサルーテのサイバネアイが淡々と記録していた。『イセ・ブルーオーシャン』『ヨロシサン所属』『上級研究員』……イセに関する情報が次々とサルーテの網膜に表示され、本人の与り知らぬところでイセのより詳細な情報がIRC-NETから引き出されていく。

『カンゼンタイ計画に参加』『甲殻類生物の研究』『同テーマの研究員』『ナカタ研究員』『ロブ１００１１０１』不意に、サルーテの視界にノイズが走った。何らかのカウンターハッキングを受けたのだ。彼はイセから視線を外し、装備の点検作業へと戻った。

プロト・シンセシス（その２）へ続く