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新しい文化をつくる魅惑のチョコレート(Minimal山下さんインタビュー)

「今までのチョコレートのイメージを変え、チョレートを生活の中に溶け込ませていきたい」
「チョコレートの新しい文化を2100年までにつくりたい」
「Bean to Barで文明開化していきたい」

普段食べるチョコレートとは別世界の、香り、食感、そして豊かな味を持つBean to Bar Chocolate
初めて会ったはずなのに、一瞬のうちに相手の懐に入り込んでしまう人当たりのよさ。
そして、まるでマシンガンのように矢継ぎ早に繰り出される、魅力的な言葉の数々。

Minimal代表山下さんに魅了され、予定終了時刻を1時間近くオーバーしても、「もっと話が聞きたい」と思っていました。
気づけばnoteに書いたメモの量は約12,000文字と、いつもの2倍に達していました。

食べ終わった後も心と体を幸せな空気感で包んでくれるBean to Bar Chocolateのように、山下さんの創り出した世界観の余韻がいつまでも残る。そんな印象的なイベントでした。

イベント内容

noteには、第一線で活躍するクリエイターを紹介するクリエイターファイルというものがあり、今回はそのためのインタビューという位置づけで行われました。
普段はクローズドで行われるそのインタビューを、今回はNサロンメンバーだけに特別に公開するという、とても貴重なイベントです。

インタビュアーの平野さんを含む7人で山下さんを囲んでお話を伺いました。
物理的な距離の近さが心理的な距離にも作用し、山下さんを近くに感じ、その熱量がダイレクトに伝わってきました。

(この距離です↓)

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登壇者紹介

山下 貴嗣(やました たかつぐ)さん

株式会社βace代表取締役社長
30歳の時に脱サラ。自社工房でカカオ豆から板チョコレートができるまでの全工程を管理、製造する「Bean to Bar Chocolate」に出会い、素人ながらクラフトチョコレートの世界に飛び込む。
2014年、4人の同級生とともにクラフトチョコレート専門店Minimalをオープン。5年目の現在、都内に5店舗を展開。

ちょうどセミナー前日が山下さんの誕生日ということで、Nサロンから誕生日ケーキのサプライズがありました。
こうした、相手を喜ばせる気づかいができるところがNサロンのよいところだと思います。
(ケーキはインタビュー終了後にみんなで美味しくいただきました)

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Minimalについて

Minimalを初めて知ったのは今年の4月でした。
山下さんのnoteを読み、Minimalのブランディングのうまさに心奪われました。

「ビジネスモデル図解しなくては!」

今回のイベントで新たに心に火がつき、ついに図解完成です。
(ビジネスモデル図解についてはこちらをご覧ください)

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Minimalのビジネスモデルのポイントは、チョコレートをただ「食べる」だけのものではなく、「楽しむ」ための商品に引き上げている点だと思います。

1枚1,000円前後するチョコレート。ただ美味しいだけだと、そんなに頻繁には買ってもらうのは難しい。
そこで、Minimalでは継続的にチョコレートを楽しんでもらえるような仕掛けがいくつも用意されています。

例えば板チョコの形。
パキっと割ったあとの形が、スティックやブロックなどの様々な形になるようにすることで、「ガブガブ食べたい時はスティックタイプ」など、気分によって食べる大きさを変えることができます。

また、コーヒーやワイン、スイーツなどとの組み合わせ、チョコレートの魅力を最大限に引き出し、楽しむためのワークショップを開くなど、本当にたくさんの仕掛けがあります。

Life with Chocolate

世の中に大きな変化を起こす人は、自分が実現したい世界観を、誰もにわかりやすい、シンプルな言葉で表現されていることが多いです。

例えば、ファーストリテイリングの柳井さんは「着心地がよい/高品質/ファッション性がある/誰もが手に入る価格」を「ライフウエア」という言葉で表現し、世界中にユニクロを広めました。

山下さんも、「Life with Chocolate」というシンプルな言葉で、「チョコレートが生活の中の中に寄り添い、人生を豊かにするという世界観」を表しておられます。

チョコレートはコーヒーとかワインと同じように多様なので、気分によって食べ方を変えたり、味を変えたりできます。
例えば朝は酸味のあるチョコレートで目を覚まし、気分を高揚させる、会議の前はこれ、眠くなってきた時はこれ、お酒と一緒に楽しみたいときはこれといったように、生活のシーンにチョコレートが名脇役として寄り添うことで、人生が豊かになるのです。
今までのチョコレートのイメージを変えたい。カカオには酸味、果実味、ハーブのような香りが色々あります。例えば、酸のあるチョコレートを焼くと、お砂糖以外に何も入っていないのにレーズンパンのような味がする。
これだったらチョコレートを食べるというところにBean to Barのチョコレートを応用していき、Bean to Barで文明開化をしていきたい。

と、熱く語られました。

既存のチョコレート文化とは別の新しいチョコレート文化を2100年までにつくる

という壮大なビジョンに驚きながらも、山下さんから発するパワーに決して夢物語ではないと思わされました。
「この人と一緒に働けば、きっと新しい世界が見れる」と、強烈な魅力を感じました。

今年社会人15年目ですが、そう思える人と出会う機会は本当に稀です。「Minimalで働く人たちは、山下さんが見せるこの世界観に魅了されているんだろうな」と、羨ましく思いました。

Minimalのコア

「Minimal=最小限」という言葉のとおり、Minimalではチョコレートにとっての最小限であるカカオ豆を大事にしているとのこと。

これまでのチョコレートは足し算でチョコレートをつくってきました。
Minimalは引き算のチョコレート。
西洋発のチョコレートを日本人が日本人の感性でとらえなおしたときに、カカオの産地とか豆とかっていうもののストーリーを背景にもった、嗜好品としての引き算のチョコレートをつきつめていきたい。

投資の優先順位も、その価値観にしたがって行っているそうです。

僕たちは、誰もやったことのないカカオの世界をみたい。
だから、そのためのものをつくるための投資が、投資の優先順位で一番。
それをお客様が体験するための店舗やサービスがその次。
バックオフィスなんかの優先順位は一番低い。最近まで倉庫の横に机置いて仕事していた。社長室や社長席なんかも当然ない。

余談ですが、大手企業で受付がめちゃくちゃ豪華なところがありますが、実はそれはそれで意味を持っています。
受付は企業にとっての顔。そこにお金をかけることで、取引先や見学に来た学生にアピールする狙いが一つ。
もう一つは、直接的には収益を生み出さないところにお金をかけることで、協業を考えているスタートアップを安心させる狙いです。

どちらがいい、悪いではなく、「どういう意味があるのか?」で考えられるといいと思います。
受付がオシャレな企業も、「中に入ったら全然違う」というのはよく聞く話です。

Minimalに話を戻すと、最近はカカオ豆をコアに置きつつ、ガトーショコラなど、板チョコ以外の商品ラインナップを増やしておられます。
その点について、山下さんは、

T型に深掘っていくイメージです。
最初の3年はチャラいことをしないと決めて、カカオっていうもの表現したチョコレートってどう作れるんだっけというのをストイックに深掘りしてきた。
今は4年目、5年目という第2フェーズに入ってきているので、やっとちょっとだけそれを広げていくっていうフェーズに入っている。Lifeの方に寄せていく。

と語られました。

最初は1つのことを極めるというのは、仕事をする上でも、とても重要なことだと思います。
一定以上の知識と経験があり、「これは自分の専門分野だ」というものがあれば、別の分野で仕事をするときも、「自分の専門性をどう応用することができるか?」という点を突破口にすることができます。

Bean to Barを突破口にして生活の中にチョコレートを忍ばせる挑戦に取り組んでいるMinimalが今後どう変化していくのか、とても楽しみです。

自分の言葉で想いを伝えることの重要性

山下さんは1年のうち4ヶ月はカカオ産地に行っているそうです。
そこで現地のカカオ農家とどうやってコミュニケーションを取り、信頼関係を築いているのか。
その秘訣は「言い続けること」だそうです。

現地語しか使えないときは、通訳に全て話しているとおりに訳してもらう。また、日本語でも言い続けて想いを伝えます。

そして必ず毎年会いに行き、1kgでも多く買うようにしています。それを2年目、3年目、4年目と続けていくと、なんとなくパートナーとして見てもらえるようになり、正当な対価を払うことで、10人に1人は信用してくれるようになります。

想いを伝えるときに、自分の言葉で話すってとても大事です。

最近はスマホアプリでもかなりの精度で翻訳ができ、近い将来、同時通訳可能なデバイスも登場すると思いますが、自分の言葉で話さないと届かない想いが絶対にあります。

届けたい想いが自分の中に溢れるとゾーン状態になり、頭で考えるより先に想いが言葉となって出てくるという状態を以前経験したことがあります。
ただただ、相手に想いを届けたいという気持ちだけがそこにあったように想います。

カカオ農家と日本語で話す山下さんも、きっとそんな感じなんだろうなと想いました。

経営者としての判断基準

Minimalは、山下さんとその同級生4人で始めたそうです。

「同級生との事業立ち上げはうまくいかない」

と言われることが多いそうですが、Minimalでは早い段階で、意思決定をする人、責任を取る人を山下さんに決めることでそれを乗り越えられたそうです。

役割として言うべきことは言うけれど、組織を離れたところでは人間としてフェアな関係を保つ。
それが本当の意味でのフラットな組織だと思います。

私がすごいと思ったのは、

Minimalという軸があって、ゴールに対して最適なものは何かというのをいつも考えているので、人の話を聞いて、自分が違うなと思ったらすぐに謝るんですよね。ありがとうと、ごめんなさいはすぐ言います。

という点です。
ゴールやミッションに対しての最適解を選択するのがトップの役割の一つですが、自分のやり方や、しがらみに引きずられてしまうのは、よくあることです。

最近も、

3ヶ月やっていたプロジェクトを止め、ゼロから作り直すことに決めた。
イラストレーターは雇ってしまっていたので、20~30万円がボツになった。

とお話されていましたが、そういった思いきった意思決定ができる人は限られていると思います。

合理性と会社としての目標達成のための道筋に合っているかで判断する。
それを判断するための議論はトコトンやる。

という点に経営者としての凄みを感じました。

最後に

山下さんから伺ったお話で、「これはよかった!」というネタはまだまだたくさんあります。

メインテーマのnote活用術では、

・タイトルは27文字以内という教えを守っている
・思いついたタイトルを書き貯めるファイルをつくっている
・7時半から8時の間にTwitterで投稿するとバズりやすい
・共感8と知的好奇心2のnoteが一番バズる

というテクニック的な話や、自社のブランディングにどのようにnoteを活用しているかというお話。

また、
・創業以来ずっと続けており、延べ参加者が1万人超えのワークショップについてのお話
や、
・ビジネスモデルがめちゃくちゃ好きで、その構造化して応用する話
・フェアトレードの話
・カカオ定期便(サブスクリプション)の話
・お菓子業界の課題と解決方法について
など、

Minimalという組織にとどまらず、お菓子業界、カカオ生産地が抱える社会課題など、広い視野で物事をとらえ、高い視座で考えておられ、たった3時間弱でしたが、「この人なら本当に新しい文化をつくれるかもしれない」と思わせるには十分でした。

メンバーの一人から、

「山下さんは音声メディアでの発信も向いているのではないか」

というコメントがありましたが、自分もそう思います。ぜひ聞いてみたいです。

今後もMinimalに注目です。



いつも支えてくれている嫁と息子に、感謝の気持ちとして美味しいお菓子を買ってあげたいと思います^^