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世界経営者会議レポート(ファーストリテイリング柳井CEO)

「ライフウェア」という新しい概念を世界に定着させた、ファーストリテイリング柳井CEOの「世界経営者会議」でのプレゼンテーションの書き起こしと感想です。

「世界は日本の企業を待っている」

「日本の経営者、個人はもっと世界に出ていくべき」、「ピンチのときこそがチャンスだ」との力強いメッセージを発信された柳井さん。

ファーストリテイリングの海外事業は、2018年度に売上高、営業利益ともに国内事業を上回り、成長ドライバーになっています。
保有する約1兆円の現金は「海外進出のための資金では?」と噂されていますが、「世界は一つの巨大なマーケット」という今日のお話から、海外事業に対する強い思いが伝わってきました。

個人の時代・企業の時代

(ファーストリテイリングCEO 柳井 正氏)

いま、世界中が大半な状況にある。
国や地域の深刻な対立が世界的に発生。解決策も見えない。
第二次世界大戦以降、最大の危機にある。
その中にあって、個人や企業は勇気を持って世界中に出ていくべき。

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学校を卒業した後、ジャスコで数年働き、家業の紳士服の商売を引き継いだが、ショッピングセンターの進出などにより、とても厳しい状況。このままは将来性はない。仕事のやり方を変えないといけないと思った。
この時の厳しい環境や危機感が、ファーストリテイリングという会社や、ユニクロというブランドをつくった。

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経営というものは、常にピンチである。
そのような状況において、危機から逃れずに、真正面からぶつかるのが大事。
必死に考えれば新しい考え方がでてきて、一段成長する。

ピンチこそがチャンスである。

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今、世界中を見回しても、情報格差やライフスタイルの差はほとんどなくなった。
街を歩いている人の服装がほとんど変わらなくなった。
一つの大きなグローバルマーケットが出現しようとしている。

そんな中、国家が様々な規制を導入し、企業や個人の自由な活動を阻害しようという動きがある。
企業や個人が国の覇権争いに利用されようとしている。
自国ファーストというのはその象徴の考え方。

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最近のGAFAへの批判は、ちょっと違うと考えている。
GAFAは優秀な人材とデータで国を超えようとしている。これは一般の企業にとってもチャンスである。
GAFAがやっていることはインフラの構築。
デジタル化に正面から対応するためのインフラをつくってくれることに感謝しないといけない。

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明確なルールは必要だが、各国の都合で設けている規制は不要。
そうした規制によって、新しい企業が出てこなくなったり、国を超えてビジネスをすることができなくなる。

もはや世界は、個人や企業が国を超えてビジネスできる環境にあり、その流れは短期では止められても、長期では止められない。
力でもってそれを止めようとするのは、もっとも愚かなこと。
企業経営する人は、「それは違うんじゃないか」と、もっと言わないといけない。

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希望を持って経済活動ができる世界をつくらないといけない。
そのために大事なことは、企業や個人が自分の事業で周りをよくすること
国とかは関係なく。

世界中の企業や個人が協力し、社会がどうよくなっていくかを合理的に考えて、正面から向き合ってやっていく必要がある。
国籍、年齢、宗教を超えて、もっと世界がよくなるにはどうなるかを考える。
単純に国の指示だけでやっていると滅びてしまう。

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企業に求められることの質が変わってきた。
売っている商品そのものが、

・世の中にとって本当に必要な商品かどうか
・社会をよりよくするために貢献しているかどうか

で考えないといけない。
そのためには、社会の仕組みや働き方から是非を判断していく。

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「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」

これは、ファーストリテイリングのステートメント。
売れる商品を売っていく、小銭を設けるのではなく、本気で世の中のためになる服を売っていこうという考え方で、毎日やっている。
それを表した言葉がライフウェア。

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世界中で服に対する価値観が大きく変わりつつある。
物質的に豊かになることを追い求めた時代は終わって、ファッッションだけの服から、上質な生活なための服に変わってきた。
上質な生活のための服を、自分で組み合わせるという時代に変わってきた。

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人々の中に漠然とした不安感があった。
アパレルの業界でも、使い捨ての服に対する不安感があった。

社会が発展しないと企業も発展しない。
社会にとって一番大事なことは、長く成長できること。
サステナブルであることを最優先にして成長にしていかないといけない。

ファーストリテイリングでは、東レと一緒になり、再生ダウンを使ってダウン以上の商品をつくろうとしている。
ペットボトルを回収し、新しいドライEXという、ゴルフの選手が着れるくらいの品質の商品をつくっていこうと考えている。

世界中の企業や人と、高品質でリーズナブルな服つくっていく。

その第一弾として、今年ロンドンでイベントを開催した。
ロンドンは海外進出一号店の場所。サンセットハウスは歴史的な建造物があり、クリエイティブな拠点。
そこで、「アートとサイエンス」をテーマにしたイベントを開催した。

サステナブルであることを最も重要視しており、世界中の人々な間で大きな注目を集めた。

ミラノにイタリア初の店舗をオープンしたが、開店前に数百人の行列ができた。
特別なセールなどはしていない。ほとんどの商品がプロパー価格だが、注目を浴びた。
デザインの街で好評をえたことは、大変な自信になった。日本の伝統とイタリアの美的感覚が一致したのはうれしい。

デリーにインド初の店舗を出した。
インドは13億の人がいて、平均年齢が27歳。
オープン当初から多数のお客様に来ていただいた。今後、2号店、3号店を出すつもり。
また、インドで生産を始める。本格的にやっていこうと。

インドのように、さまざまな国から「ぜひ、うちの国にきてくれ」と言われている。
ライフウェアというコンセプトが定着してきたと思う。

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これまで海外でたくさん失敗してきた。
その結果見つけた3つの問いがある。

1.あなたは何者ですか?どこが他の人と違うのですか?

2.あなたはこの国に、どんな良いことをしてくれますか?

3.あなたは世界中で、どんな良いことをしていますか?

これらは考えてみれば当然のこと。
これまでの他の人とは違うということ、そして、その国に取ってプラスにならなければ出店してはいけない。

また、いきなり良いこと始めようというのは不可能。
プラスになることを、日常的にそういうことをやってない人は信用されない。

ファーストリテイリングでは、これらを社員に毎日お願いして実践してもらっている。

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世界では、現状にも、将来に対しても不安感が高まっている。
世界で力による分断が起こっている。
そういったときこそ、市場原理に基づいて、合理的で冷静な行動が必要。「世界にとって役に立っているか」という観点が必要。それを受け止めて世界に出ていくことが重要。特に、日本の企業、個人は。

国連で16歳の少女の発言が波紋を呼んだ。
賛否両論があるが、彼女のように、勇気を持って発言することが重要
世界を変えようと思ったら、世界中の企業、経営者、個人がもっとすべきこと。
それをしないと世界は変わらない。

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ファーストリテイリングの根本的な理念は、

「真、善、美」

人間の普遍的な価値に対し、妥当性をもってやっていく。

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自立した個人と企業が世界でつながって、世界で発展していくことが重要。

今のピンチこそがチャンス。

ロシアに40店舗以上出店しているが、すごくチャンスがある。
ヨーロッパがの企業が撤退する中で、価値のある商品を提供していくことで、ロシアの人に感謝される。
国民の本当の生活がよりよくなるために、ピンチをチャンスに変えていく。そういった時代になった。という決意をみなさんの前で言いたかった。

「世界は日本の企業を待っている」

モデレータとのQ&A

Q.今のファーストリテイリングに足りない点は何か?

(柳井CEO)
外国人、女性の経営幹部を増やしていく。
現地の人を経営幹部にもっていくことが必要。世界中で経営ができる人材がいれば、世界で事業ができる。
それを短期間で実現しないといけない。

Q.それを実現する上で壁になっていることは?

(柳井CEO)
言葉の壁、生活や文化の壁。
そういったことをお互い理解して、向こうに日本の文化や習慣を理解してもらわないといけないし、こちらも相手の文化や習慣を理解して、それに従って行動しないといけない。
「Global to Local」、「Local to Global」の両方が必要。

Q.海外展開がうまくいった国とうまくいかなかった国の違いは?

(柳井CEO)
経営者の違い。
与えられた条件が違っても、経営者がうまくやれば成功する。成否を分けるのは、現地の経営者、グローバルヘッドクォーターの質。
質を上げるには、現地に行って経営すること。実際に経営をするOJTを通じてしか、経営は勉強できない。

Q.サステナビリティに対するマインドチェンジを社員にどう植え付けていくか?

(柳井CEO)
スウェーデンの代表(?)から、「サステナビリティな服をつくって欲しい」と言われた。サステナビリティは必要条件だと。
社会の要請に応えた服を作っていかないといけない。

そのため、環境の負荷になることはできるだけ小さくする、例えば再生素材をもう一度、繊維にするとかをやっていこうと思っている。

Q.国内で外国人の受け入れも始まったが、政府はどのような役割を果たすべき?

(柳井CEO)
日本の場合は、世界に出ていく必要がある。そういった企業をもっと応援してもらいたい。そういった企業が世界に出て稼がないと日本は発展しない。

また、日本に来た海外の人が高度な仕事をするための環境をつくらないといけない。
政府には、単純労働ではなく、高度な仕事をできる環境、法的な整備をやってもらいたい。

感想

このセッションが始まる前、たまたま会場に入る柳井さんをお見かけしました。
その時は「思ってたよりも小柄な方だな」と思いましたが、壇上からメッセージを発信される柳井さんは力強く、大きく感じました。
世界の第一線で戦う経営者の言葉の重みを、ひしひしと感じました。

柳井さんのお話を聞きながら、海外で仕事をしていたとき、「あなたは何ができるのか?どんなことをしてくれるのか?」と、よく問われていたことを思い出しました。

「世界にとって役に立っているか」

シンプルですが、海外で事業をする上でとても重要なこの問い。
グローバルで活躍するためには、日々の中で、この問いをもっと解像度高く、強く意識しないといけないと思いました。





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