書評『星か獣になる季節』

・初出2015「宝島」
・2018年に文庫になった

 あの頃、僕はずっとある人に恋をしていた。
 その人はとても魅力的でみんなに好かれていた。
 だから僕以外のひとたちもみんな彼女のことが好きだった。だけど僕らは彼女に触れることすらできなかった。
 なぜなら、彼女は人間ではなく、アニメのキャラクターだったからだ。
 僕は本当に彼女のことが好きだった。だから、その気持ちが、ただの「好き」という言葉になることが許せなくて、誰もが使わない言葉でその気持ちに名前つけようとした。けれど、それは無理だった。

 冒頭から一気にこの小説を読み終えて、どうしようもない気持ちになった。
 これは、あの頃の僕が読むべき物語だった。
 僕はもうあの頃の年齢ではない。青春とは精神の若さのことだ? ふざけるな。そんな言葉を免罪符にしてにせものの若さを誇るクソみたいな大人になることを一番きらってただろ? 老いたなら死ぬべきだ。
 かつて、子供の僕にむかって大人達は、「大人になればわかる」とか「大人になれば楽になる」と言った。けれど、今ならわかる。それは嘘だった。
 思春期が終わって大人になり、思春期よりもはるかに苦しくてどうしようもない季節が来た。
 絶望の水銀にまぶされて毒々しいほど輝いて見えたあの頃の世界。もう僕には、この本を読んで涙する資格すらない。この小説のことをうまく言葉にしようとすればするほど、間違っていく気がする。
 それはあの頃の気持ちに似ているけど、全然違う。
 願わくば、あの頃の僕のような人に届きますように。

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