猫が歩いていた。
明るい茶色の、毛並みのいい猫だ。
猫は私の横を通り過ぎ、市場の奥へと歩いていく。

私は猫についていくことにした。

騒がしい市場だ。
色とりどり、ごちゃごちゃになった色彩で銀と金がきらめく通り。
石畳。
見た目も背丈も違う人たちがたくさん行き交う。
頭に荷物を乗せた女性とすれ違った。

猫はゆっくりと歩き、やがて路地を曲がる。
私も路地を曲がる。
狭い通り。
土産屋が左右に並ぶ。
太陽の光が遮られて少し暗い。

店の人に声をかけられながら奥へと進む。

昼下がり、異国の路地だ。

ふと気がつくと、猫の姿が消えていた。

息をふう、と吐き出して、目の前にあったカフェに入る。
私はそこでコーヒーを飲んだ。