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刑事コロンボ「うちのカミさんがね」 額田やえ子著「アテレコあれこれ」(中公文庫)より

 普段はこのようなエッセイの類は読まないのだが、最近読んだ本の中でこの額田さんの翻訳が絶妙と紹介されていたので早速図書館から取り寄せ読んでみた。「アテレコ」とは正確にいうと外国映画日本語版吹き替え。原版で話されている外国語を日本語に翻訳し、日本の俳優が原版の口に合わせてしゃべること(本書p13)だそうな。似て非なるのが映画の字幕。こちらは耳ではなく活字を読ませる。このアテレコ作業の面白さに加え、私が小学生のころ好きだった刑事コロンボのセリフがたびたび登場。あのキャラにぴったりのアテレコにうっとり。というわけで備忘録かねてお裾分けといきたい。ちなみに額田さんは、字幕で言語を聞きながら見るのがお好きだそうだ。

 で、コロンボといえば「うちのカミさんがね」である。この世代の人間だったら十中八九そういうだろう。額田さんが一番多く受ける質問がこの「うちのカミさん」の由来だそうな。筆者いわく、「コロンボ」をはじめて見たとき、やたらと「マイワイフ」という台詞が出てきた。これはアメリカの刑事ものでは珍しい。これは大事なセールスポイント。周りを見回して、戦中派で、要領が悪く、誠実で奥さんを愛しているが微かに畏怖の念を抱いてそうな男性が奥さんを何と呼んでいるか?かつ、コロンボを演じる小池朝雄さんにも合うのは?で、「うちのカミさん」になったという。(これは半分ホントで半分ウソだとか。詳細は本書で。)そして結果は大成功。私の中ではピーターフォークの声は小池朝雄の声である。
 で、この「うちのカミさん」なかなかいいじゃないか!額田さんいわく「私はカミさんという言葉が好きだった。江戸時代から生き続けてきた言葉で、愛嬌が会って、くだけていて、聞いていて気持ちがいい。」たしかに!!「畏怖の念」(本音は単なる恐れかも?)も感じられるのがなおいい!私も「うちの母ちゃん」から「うちのカミさん」に乗り換えるか?

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