見出し画像

VRアバタープラットフォームが一杯出てきた

2017年から2018年にかけて、vTuberブームを受けて色々なVRアバタープラットフォームが立ち上がりました。

どういった感じになってるのか紹介してみます。

1.カスタムオーダーメイド3D2 バーチャルアバタースタジオ

2008年にTecharts3Dから発売された「3Dカスタム少女」は、3Dの女の子キャラクターを着せ替えるアダルトゲームというジャンルを生み出し、カスタムメイド3Dやコイカツ!に繋がる系譜になりました。

3Dカスタム少女では有志のユーザーたちが2ちゃんねるなどで情報交換し合ってソフトを解析してキャラクターをさらに自分の好みに改造できるようなModが大量に生まれました。

MMD文化に似てるようで違うような独自の文化です。

カスタムメイド3Dでも同様に有志のMod文化ができてるようです。

そんななか、S-courtのカスタムオーダーメイド3D2にvTuberのように女の子キャラクターになりきって動画を収録できるバーチャルアバタースタジオが2018年4月に搭載されました。

HMDとコントローラ、ViveTrackerなどを使って女の子になりきれる機能で、この画面をキャプチャしてyoutubeに上げればvTuber活動ができます。

有志Modでかなり自由にカスタマイズできるこのソフトを使ってvTuberになれると聞いて、私はこれはキラーコンテンツたり得ると思ってましたが、あんまり盛んに使われてはいない気がします。

考えてみると、やはりアダルトゲームとvTuber文化の隔たりというか、このゲームで遊ぶ層は自分がエッチしたくなる理想の女の子のキャラメイクに燃えているのであって、自分がその女の子に成りきるというのとは違うのかもしれません。

それと、当初の利用規約では個人の収益化が禁止されていたのも利用に歯止めがかかった一因かもしれません。(現在の利用規約では個人の収益化OKになってます)

もう一つ言えば、この機能で有志Modを利用したキャラを使うには、それぞれのMod制作者から明示的な利用許可を得る必要があります。Mod制作者の権利を考えれば当然の規約ですが、これによりバリバリに色んなModを駆使したキャラクターを使う事は困難です。

この機能はゲーム内で完結しているものであり、VRMカルチャーとは関係ないものです。

2.エモモ

エモモはMirrativというスマホライブ配信プラットフォームアプリに追加された新機能です。2018年9月6日に全ユーザーに提供開始しました。

Mirrativ、9月より「エモモ」を全ユーザーで利用可能に 収益化導入の発表も

髪型や顔のパーツ、服装に沢山の種類が用意されていて、自由に着せ替えられます。

配信者の喋りに合わせて口パクしたり、画面スワイプでジェスチャや表情変化ができます。

アバターパーツは配信90分毎に引ける無料エモモガチャでさらに種類を増やせるようです。配信中に視聴者からもらったギフトポイントでもガチャが引けるようです。

ギフトというのは視聴者が課金して得たコインを消費して行う投げ銭的な物です。配信者が自分で課金してガチャを引くんじゃなくて、視聴者からもらったギフトでガチャを引くシステムは斬新ですね。

気になるのはギフトの収益化レートですが、ミラティブの収益化システムは、視聴者からもらったギフトポイントに応じて配信者にオーブが渡されて、配信者は1オーブ=1円レートでアマゾンギフトに換えられるそうです。

じゃあギフトポイント→オーブのレートは?

大体3割くらいが配信者の取り分みたいですね。10月までは5割だったけどそれ以降は3割にレートが落ちたという話もあります。

2213コインもらったのに50オーブになっちゃったという人もいるようですが、ハッキリした事はわかりませんが、有償コインの分しかオーブにならないみたいな仕様なのかもしれませんね。

取り分3割が妥当なのかどうなのかという話がありますが、ミラティブはギフト機能を開始するにあたって丁寧なメッセージを投稿しました。

これを読むと分かる通り、ミラティブのようなスマホアプリとして提供されるプラットフォームは、スマホOS(iOS,Android)プラットフォームの下にぶら下がるプラットフォームですので、ただでさえGoogleやAppleに3割取られてしまうのにさらにミラティブと配信者で分配するので、どうしても配信者の取り分は減ってしまいます。

直接Youtubeでスパチャを受け取る(取り分7割)よりもどうしても取り分が少なくなってしまうのがスマホアプリ上のプラットフォームの弱点です。

エモモはVRMカルチャーと関係あるのかというと、こちらのページによれば、現状はまだ機能は無いけど、VRMインポート、エクスポート機能は可能性を検討中だそうです。

3.Vカツ

Vカツはイリュージョンのコイカツ!という着せ替え系3DアダルトゲームのスピンオフみたいなPCゲーム?で、無料でプレイできてキャラクリエイトしてVRなりきりしてvTuber的な事ができてしまいます。2018年8月1日にリリースされました。

最初はエイプリルフールネタでしたが、反響が大きかったのか、実際にリリースされてしまいました。

最近でもユーザが自由にテクスチャ差し替え出来る機能が追加されるなど、活発にアップデートが行われています。

さらにiOSアプリもあり、PC版と同様なキャラメイクができて、iPhoneXのフェイストラッキングを使ったなりきりができて、MirrativやOpenRecと連携して配信ができます。

タダで全部できてしまって、じゃあ一体どうやって会社は利益を出しているのか?と疑問になりますが、Vカツで作成したキャラをニコニ立体にアップロードできる枠をもらえるVRMキャラチケットが1枠5千円で販売されてます。

これがVカツの収益源だと思います。

ニコニ立体にアップしたVRMモデルはダウンロードはできず、用途はバーチャルキャストのアバターとしての利用です。

ダウンロード可能にすると勝手に再配布されたりしてビジネスモデルが崩れてしまう恐れがあるので、仕方ないですね。

4.VRoid StudioとVRoid Hub


VRoid Studioはpixiv社がリリースしたPCソフトで、キャラクターの3Dモデルを作成できます。2018年8月3日にリリースされました。

カスタムオーダーメイド3D2やエモモやVカツが基本的に既製のパーツを組み合わせてアバターを作るのに対して、VRoidでは自分で作っていく側面が強く、どちらかというとモデリングソフトに近いものになってます。

髪型はタブレットで絵を描くように自在に作ることができます。顔はパラメータでバランスを変更するのとテクスチャを描き変えて表現する感じです。

作成したモデルはVRM形式で出力できます。

画期的なのはこのソフトで作成したキャラクターの権利はユーザーの物になるという点です。

ですので、作成したVRMをバーチャルキャストで使おうが自作ゲームで使おうがVRChatで使おうが自由です。真に自分のアバターとして使えると言えます。

VRoid HubはVRMを誰でもアップロード、ダウンロードできる3Dキャラクターのためのプラットフォームです。2018年12月21日にリリースされました。

VRoid Hubは開発用SDKが用意されており、外部のアプリケーションがVRoid Hubからモデルをインポートして使用できます。現時点でSHOWROOM VやVワールドが対応しているとの事。

VRoid StudioやVRoid Hubには、企業のマネタイズするポイントが現時点ではまったく見当たらず、まるで慈善事業でやっているように見えますが、pixivは本業での利益があるのですぐに利益を上げないといけないほど切迫しておらず、まずは沢山の人に利用されるプラットフォームに育ててからゆっくりマネタイズを考える戦略なのかもしれません。

5.SHOWROOM V

SHOWROOM VはiPhoneでフェイストラッキングを使ってバーチャルキャラクターになりきれるiOSアプリです。2018年11月13日にリリースされました。

SHOWROOM、スマホ1台でアバター配信ができる「SHOWROOM V」をリリース!

SHOWROOMと連携して配信できます。

アバターは既製の物が何種類か用意されてるようですが、いち早くVRoid Hubからのインポートに対応したため、ユーザーは自由にVRMファイルを使って配信できます。

ところでSHOWROOMの配信者のギフト収益取り分はどれほどなのでしょうか。

SHOWROOM配信収入!ギフティングによる収入の仕組みを徹底解説

こちらの記事によると、一般配信者が約30%で、公式配信者が35%ほどだそうです。

SHOWROOMもスマホプラットフォームの下にぶら下がってる配信プラットフォームなので、これくらいの取り分になってしまいます。

6.ツイキャス

ツイキャスは普通のライブ配信プラットフォームでVRアバターとあんま関係無いですが、vTuberで配信するとギフト取り分が優遇されるなどの支援があるみたいなので紹介してみました。

ちなみにツイキャスは配信者のギフト取り分が70%もあるそうです。

【ツイキャス】お茶爆50・100の収益はいくら?アイテムの意味や還元率を紹介

MirrativやSHOWROOMに比べると倍以上の取り分になってます。

こんな事が実現できるのも、ツイキャスはスマホプラットフォームにぶら下がらずに自前のプラットフォーム課金を行っているからです。

7.カスタムキャスト

カスタムオーダーメイド3D2のS-court社とドワンゴが2018年12月25日に共同でカスタムキャスト社を設立しました。

ドワンゴ、3Dアバターで新会社 「カスタムキャスト」のS-courtと共同で 男性アバター作成機能は来年1月公開

カスタムキャスト社が提供しているスマホアプリがカスタムキャストです。

カスタムキャストではカスタムオーダーメイド3D2のキャラクター資産を利用したキャラメイキングを行い、作ったキャラでスマホのフェイストラッキングを使ってのニコキャス(ニコ生)配信ができます。

さらに今後はVカツと同じように有償でニコニ立体へアップロードしてバーチャルキャストのみでアバターとして利用できるようにする予定だそうです。

VRMのインポートにも今後対応予定(これは無料)だそうです。

8.ニコニ立体とバーチャルキャスト

バーチャルキャストはニコニ立体にアップロードしたVRMをインポートしてアバターとしてなりきれるバーチャルキャスト社(ドワンゴとインフィニットループの関連会社)のPCソフトです。

アバターなりきりにはViveなどのHMDを使用します。

アプリの画面をyoutubeやニコ生に流せばvTuberになれます。

特筆すべき点として、バーチャルキャストを起動するとオンラインの部屋を開く形になっており、オンライン中は他のユーザーが凸と称して同じVR空間に乱入することができます。

Vギフトという投げ銭機能も実装されています。

こちらのツイートによると、Vギフトの配信者取り分は43~44%だそうです。

また、バーチャルキャストはエンタープライズパッケージという法人向けのサポートサービスも行っており、toBでのマネタイズも視野に入れているようです。

さらに2月下旬にはVRMなどのファイルをアップロードしてシェアできるザ・シードオンラインというプラットフォームを立ち上げるそうです。

ニコニ立体のVRMモデルはバーチャルキャストからの利用しかできませんが、シードのVRMはSDKを通じて提携アプリからの利用が可能になるようです。

また、春ごろにはストアを用意してアバターやアセットを販売できるようにするそうです。

つまり、提携アプリが増えていけばシードで購入したアバターをいろんなアプリでアバターとして使用できるようになって、どんどん便利になります。

9.VRChat

VRChatは簡単に言うと基本的に歩き回ってボイチャするだけのMMOみたいなVRアプリです。

VRヘッドセットがあれば身振り手振りのジェスチャーができてたのしいですが、実はヘッドセットが無くてもPCだけで遊べます。

VRChatの凄い点はゲームエンジンのUnityエディタを使って自由に自分のアバターモデルやワールド(ゲームステージ)まで作成してアップロードして利用できる点です。

なんかゴッチャになりそうですが、VRMに対応しているわけではなくて、Unityのアセットバンドル形式としてアップします。

ワールド作成も自由度が高いので、RPGみたいなゲーム性を持ったワールドを作られている方もいます。

私はためしに数回インしたくらいであんまり詳しくないのでこれくらいの説明しかできませんが、今年の初めごろは同接平均1万人、直近で同接6千人という人気っぷりで、大本命のVRアバタープラットフォームです。

不思議な点としてはVRChatは2017年2月にリリースして以来、ずっと完全無料で提供されており、どうやって利益を上げているのか謎です。

VRoidと同じようにプラットフォームとしてデファクトスタンダードの地位を得てからマネタイズする戦略なのかもしれません。

10.cluster

clusterはVRでバーチャルイベントを開催、参加できるプラットフォームです。

PC向けソフトで、HMDが無くてもデスクトップ版で参加できます。

clusterの長所はVRChatやバーチャルキャストよりも同じ部屋に沢山の人数が参加できるところです。

なのでVR音楽ライブ開催などに向いており、実際に輝夜月ちゃんのライブもclusterを利用して行われました。

ライブ体験の歴史を変えた「輝夜月 LIVE@Zepp VR」レポート 玄関開けずにVRで最前列ってヤバい!!

clusterではVRMをアップロードしてアバターに利用することも可能です。

clusterにもVアイテムという投げ銭システムがありますが、配信者の取り分が何%なのかはちょっと情報無いみたいです。

11.3Dカスタム少女

3Dカスタム少女はVRアバター云々よりはるか昔のソフトですが、おまけとして紹介します。

先述した通り、3Dカスタム少女界隈では活発なMod文化があり、ゲームからモデルデータを吸い出してMMD形式に変換する有志のツールなども存在します。

そういった状況を受けて公式からかなり自由にユーザーがモデルデータを利用する事を許可する規約が発表されました。

■ 「3Dカスタム少女」を用いて作成したデータや画像、動画等の使用について

これにより、3Dカスタム少女で作ったモデルデータで動画を作成したり、vTuber動画を制作して収益化する事が可能です。

ただし、”3Dカスタム少女のデータを利用できるのはソフトの購入者だけ”とあるので、VRChatやバーチャルキャストでの利用は他のユーザーのPCで利用させてしまう形になるのでアウトな気がします。

それに、規約には書いてないですが、Modを利用したモデルにはMod制作者にも権利が発生すると考えられるので、バーチャルアバタースタジオと同様にMod制作者からの明示的な許可が必要になると思われます。

12.セシル変身アプリ

セシル返信アプリは無料で使えるアバター制作ツールで、PC向けアプリです。

無料で使える3Dアバター作成ツール「セシル変身アプリ」VRMにも対応

Vカツやカスタムキャストのように細かいキャラメイクができて、VRoidのようにVRMを出力できて作ったモデルの権利はユーザーの物になるそうです。

13.Avatar Play

Avatar PlayはDeNAのアバタープラットフォームです。モバゲーサービスで蓄積された10万点以上のアバターアセットを活用できるとの事。

DeNA、10万点以上の3Dアバターを導入可能にするサービス「Avatar Play」をiOSアプリで導入できるツールを提供開始

現時点でGearVR向けにアバターを制作できる着せ替えアプリが存在し、iPhoneアプリも制作中だそうです。

SDKが用意されており、ユーザーが着せ替えアプリで作ったアバターを他のアプリから簡単に呼び出せるようです。

現時点ではSHOWROOM VがAvatar Playに対応予定だそうです。

VRMカルチャー云々とは関係ないみたいです。

まとめ

こうやって並べてみると、VRアバタープラットフォームはおおむね3種類のパターンに分類できそうです。

①アバター3Dモデルの製作を簡単にするサービス
自分のアバターモデルを用意すると言ってもイチからモデリングするのは大変なので、簡単にアバターモデルを作れるサービスです。

カスタムキャストやVRoid Studio、Vカツ、エモモ、セシル変身アプリが該当します。

②アバターモデルをアップロードして提携アプリから利用できるサービス
いわゆるアバター投稿サイトみたいな奴です。

VR上で2人のアバターが会話するような場合、お互いのPCにそれぞれ相手のアバターをダウンロードして表示させる必要があります。なのでアバターモデルはローカルじゃなく、サーバにアップロードしておく必要があります。

VRChatやclusterのように個々のサービスにそれぞれアップロードできてもいいですが、一つの場所にアップすれば全部のアプリから使えるなら便利になります。

VRoid Hubやニコニ立体、ザ・シードオンラインが該当します。

③アバターモデルを使ってVR空間上でコミュニケーションできる場を提供するサービス
VRChatやcluster、バーチャルキャストが該当します。

 

以上のパターンに加えて利用できるデバイスがPCだったりVRヘッドセットだったりスマホだったりそれぞれ違いますし、それぞれのマネタイズ方法も多種多様です。

でもこうやって概観しても、いまいちピンと来てないんですが、結局のところみんなはどんなアバターになりたいんでしょうね?そしてアバターになってどういう事ががしたいんでしょうか?

カスタムキャストやブイカツ、VRoidを見ると、「どうせみんな美少女になりたいんでしょ?」というのが前提になってる気がします(男性モデルにも対応するサービスもあるみたいですが)。実際人気のvTuberが美少女ばかりですからそう考えるのも当然ですが。

案外ゆるキャラのアバターが作れるサービスとか出してみると隠れたニーズがあって人気出たりするかもしれないですね。

そもそもVRアバタープラットフォームビジネスは自分の3Dアバターを使ってvTuberなりソーシャルVRやりたい!って人達が一杯いるはずだ!という大前提に立ってますが、実際そういう人が何人くらいいるんですかね?

蓋を開けてみれば数万人しかいなかったとなれば、ちょっとプラットフォームビジネスする規模感に足らないかもしれません。

しかし、サイバーエージェントのアメーバピグというアバター&仮想世界サービスが一時期は会員数1千万、アクティブユーザー数100万人だった例もありますので、アバターには大きな潜在ニーズが秘められている可能性も無くはないです。

しかし、今の時代、スマホはとにかく普及しまくってますが、VRヘッドセットはまだ普及しているとは言えません。

一般層までターゲットにするなら、VRMのサービスだからってVRヘッドセットを使うの前提にせず、例えばスマホだけでアバター作成、アップロード、ソーシャルコミュニケーションが完結するようになれば、アメーバピグのような大ヒットもあり得るのかもしれません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?