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デジタルシネマのお金の話 Vol.1|仕組みを理解する<第2刷>

映画・CM・TV はどんな “仕組み” で作られてるのか? 第1回は、広告代理店、制作会社、テレビ局、各クリエイターの関係(業界構造)から、制作予算、市場規模まで、動画ビジネスの全体像をまとめていきます。


1. はじめに

日本の “動画” に関する数字で、最も重要な指標となるのが「広告費」です。一部、ライブイベントや映画のチケット代など、個人のお金に支えられてる部分はありながらも、YouTube・TV・CM・映画など “動画” のほとんどは「広告費」など、企業が出資するお金で制作されています。
 
この記事では、お金の流れを追うことで、TV・CM・映画など日本の “動画制作” のリアルな全体像を見ていきたいと思います。

当記事は、動画制作のオンラインサロン 『UMU TOKYO』で公開されたものです。限定公開を目的に有料化しています。公開日:2020.10.15
https://community.camp-fire.jp/projects/view/231393


2. 日本の動画業界の“現在地”を知る

YouTuber が公開するバブリーな広告収益だったり、5G 関連のニュースの延長線上にある “動画の時代” の本当の意味はなんなのか?

日本経済の全体像をあらわす名目 GDP 約 550 兆円の中で、広告市場は 7 兆円、ざっくり全体の約 1.2% となります。これを TV・CM・映画、その他を含めた “動画” 全体で試算してみると、ざっくり 3 兆円(約 0.5%)の市場規模になります。ビジュアルで見ると、こんな感じです。

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図は市場規模 10 兆円以下の日本の産業(2019)をまとめた市場規模 MAP ですが、日本の“動画市場”を経済全体で見ると、中規模(化粧品・たばこ・パン類と同じ)であることが分かります。

<年間の動画制作費・まとめ>
TVCM制作費・・・2,000 億円
民放番組制作費・・・18,000 億円
NHK番組制作費・・・3,600 億円
映画製作費・・・1,500 億円
映像メディア・ソフト・・・3,300 億円(※1)
Web動画広告制作費・・・640 億円(※2)
※ 1 ライブイベントを除く
※ 2 Web広告制作費 3,354億円 × 動画広告の構成比 19.1% による概算

参考までに、全世界では、広告・映画とも 1 位はアメリカ、2 位が中国、日本は世界 3 位の市場規模となります。

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Statista

3. 動画の“予算”は景気と連動する?

日本の “動画” の実態をなんとなく理解したところで、次にそれが今後どう変化していくのか? を見ていきたいと思います。まず、ひとつシンプルな法則としてあるのが「日本の広告費は日本の名目 GDP に連動する」というものです。

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日本の“動画市場”の未来に関しては、日本の「名目 GDP」の数字を見ることで、ある程度の予測ができます。先日、コロナ自粛の影響が懸念される 2020年 4-6 月期の GDP に関して、名目 GDP の伸び率は ▲ 26.4% という発表が内閣府からありましたが、

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NHK

たとえば、同時期のテレビ番組制作費を見ると、名目 GDP の変化とほぼ同じ数字が並んでいることが分かります。

テレビ番組制作費 2020年 4-6 月期
・日本テレビ:185億6,800万円(▲24.9%)
・テレビ朝日:149億7,800万円(▲28.8%)
・TBSテレビ:131億8,600万円(▲31.9%)
・テレビ東京:71億7,300万円(▲24.8%)
・フジテレビ:138億1,800万円(▲25.9%)

マイナビニュース

4. 動画広告のお金のしくみ

ここから、動画制作の仕組みをジャンル別に整理していきます。まずは TVCM をはじめとする、動画広告 に関するお金の流れを 3 つのトピックで見ていきたいと思います。

❶ TVCM 制作の流れ
❷ 日本の Web 動画市場のいま
❸ 世界の Web 動画需要の流れ

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