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Color Shift v2 試してみた <第3刷>

LUT の次は DCTL?!DaVinci Resolve の色調整の自由度を高めて、自然で上質な色を作り出せる DCTL を活用したプラグインとして話題の Color Shift v2 を試していきます。ケミカルな発色に頭を悩ませてる方は、必見です。

当記事は、動画制作のオンラインサロン UMU TOKYO で公開されたものです。限定公開を目的に有料化をしています。公開日:2023.8.17
https://community.camp-fire.jp/projects/view/231393

1. DCTL とは?

DCTL(DaVinci Color Transform Language)は、デジタルシネマ業界の色管理システム ACES を策定する業界団体 AMPAS が開発した、デジタル映像の色管理をするためのプログラミング言語 CTL(Color Transform Language)の DaVinci Resolve 版となるものです。

Introduction to DCTL Creation with DaVinci Resolve Webinar Cullen Kelly

ただ単に色を変換するだけの LUT に対して、DCTL を活用したツールの場合はパラメーターの調整ができるという点に違いがあり、FilmConvert Nitrate などの プラグイン に近い感覚で調整をすることができます。

DaVinci Resolve 18 では、この DCTL のデータ(.dctle)を LUT と同じフォルダに格納することで、Node Editor 画面の右側に表示される Effects タブにある DCTL のプルダウンリストから、エフェクトの 1 種として利用できるようになります。

以降、この記事では DCTL を活用したツールとして、欧米圏のカラリストの間で話題の Color Shift v2 を試していきます。

Color Shift v2 - MONONODES

2. Color Shift v2

Color Shift v2 は、ドイツ拠点のカラリスト Stefan Ringelschwandtner 氏が開発した、DaVinci Resolve のプラグインとして機能する DCTL を活用したツールで、DI ソフトとして有名な BaseLight に搭載されている Hue Shift の機能を参考に設計されています。

Color Shift v2 - DaVinci Resolve DCTL

Color Shift の機能はおもに 5 種類あり、❶ Hue Shift、❷ Sat、❸ DeSat、❹ Brightness に加えて、色の濃度をコントロールできる ❺ Density という機能があります。

下の画像は、通常の Saturation ツールと Color Shift の Density の効果の違いを表しています。Saturation ツール(左の画像)で彩度を上げると、鮮やかでケミカルな質感になるのに対して、Density(真ん中の画像)を使うと、色の濃度を濃くするような自然なニュアンスで、彩度の調整ができるようになるという話です。

Color Shift を使用する環境としては、一般的な Rec.709 の色空間ではなく、DaVinci Wide Gamut、ARRI Log-C など広い色域での使用が推奨されています。公式サイトでは、Color Space Transform(CST)を利用して、作業用の色空間を DaVinci Wide Gamut に変換するフローが紹介されています。

Color Shift v2 - MONONODES

また Color Shift v2 のフォルダ内には、似たような名前の DCTL ファイルがたくさん並んでいますが、NE(No Emoji)の文字があるものは、DaVinci Resolve の Mini Panel を使用する際に最適なもの、T の文字があるものは、色の補完形式に Tetrahedral(テトラヘドラル)を使用したものを意味しています。

参考までに、DaVinci Resolve の 3D LUT の補完形式(interpolation)の設定は、デフォルトでは Trilinear になっていますが、一般的には Tetrahedral を選択した方が、色の破綻が起こりにくくなると言われています。

以降、Color Shift v2 の各機能を試していきます。


3. Hue vs Hue と比較してみる

まずは、特定の色の位相(Hue)をシフトする Hue Shift の機能を試してみたいと思います。

一般的に、DaVinci Resolve で映像内の特定の色の色相をシフトするには、色域選択(Qualifier)で特定の色だけを抜き出して調整することが多いと思いますが、Hue vs Hue のカーブを利用することで、それを手軽に処理することもできます。

Color Shift v2 の Hue Shift 機能は、それをさらに簡略化したものになりますが、DaVinci Resolve の Hue vs Hue 機能よりも、自然な効果を得ることができるとされています。試しに、その効果を HLS のカラーチャートで比較してみます。

まずは Hue vs Hue の機能を使って、青色(B)の位相をシアン(CY)方向にシフトさせると、以下のようになります。

Hue vs Hue
Input Hue:136.00
Hue Rotate:50.00

一方、同じ処理を Hue Shift で実行してみると、 以下のようになります。

MONO-HueShift-T-B-v2.0
Blue to Cyan:0.250

Hue vs Hue で色相をシフトさせると、数値を上げるにつれ 色の濁り が発生していますが、Hue Shift の方はそうした濁りもなく、色相がスムーズに変化していることが分かります。こうした Hue vs Hue の色の濁りは、B(青)だけでなく、色相の数値を上げていくとあらゆる色で発生します。

続いて、これを実際の映像で試してみたいと思います。調整前のイメージはこちらになります。

Sony a7SII
XAVC-S 4K H.264 4:2:0 8bit
S-Log3/S-Gamut3.Cine
ISO: 1600 / F11

これに対して、Hue Shift 機能の Blue to Cyan のパラメーターを上げて、B を CY 方向にシフトしてみると、結果は以下のようになります。

MONO-HueShift-T-B-v2.0
Blue to Cyan:0.250

一方、Hue vs Hue で青色の領域を選択して、ベクトルスコープ上で色の方向性が同じになるよう、カーブを上方向に引っ張る(色相を変える)と、以下のようになります。

Hue vs Hue
Input Hue:106.00
Hue Rotate:10.00

どちらも同じように色の方向性はシフトできますが、Hue vs Hue では明るさの変化がほぼないのに対して、Hue Shift の場合は、輝度がより明るくなる ような反応が見られます。またこの場面では、色相を大きくシフトしていないのであまり目立ちはしませんが、Hue vs Hue の方の処理をよく見ると、雲のあたりに緑色の濁りが感じられます。

続いて、彩度(Sat)と濃度(Density)の機能を見ていきたいと思います。

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