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何がトリガーになるのか〜あの頃の自分もあいつもクソだ!〜とにかく契約書は良く読んで〜

街を散歩していて飲食店の前を通り過ぎると
『あ〜、この店昔行ったことあるなぁ』
と思い出すのですが、実際どんな状況で誰と行って何を食べたのか???
という詳細が全く思い出せないのです。
思い出したいか?と聞かれれば、まぁ思い出したいけど思い出したところでなんなのだろうか?
ちょっと懐かしい甘酸っぱい気分にはなるかもしれないけど、それ以上でもそれ以下でもないことでしょう。
脳の甘酸っぱい気分に浸る快楽の部分が壊死しているのかもしれませんな。

ただ、何かのきっかけでいろんなことを思い出すというか、出してしまうこともたまにあるのです。

そして甘酸っぱさよりも若さのダサさや感性の鈍さに気づいたときに、甘酸っぱさとは違うベクトルの胸の痛さを感じることもあったりします。

前にちょっと書いた松村雄策さんの話で思い出したバットフィンガーというバンド。ビートルズの弟分的なバンドで氏のエッセイにビートルズ、ストーンズ、アニマルズ、ドアーズ、ジャックスなどとともにたびたび登場していたような。

最初に買ったのはStraight Upという音源だったかな。
高校生のとき、地元のCD屋さんで買いました。
その時聴いた印象は今でいうパワーポップなんだけど、なんというか良くも悪くも壮大な感じがあって、そこまで熱烈に好きにはなれなかったんだけど、少ないお小遣いで買ったCDだったので、まぁその後聴き続けて大学に入った頃もよく聴いてました。

春のこの時期、上京したての頃のBGMとして印象に残っているような感じ。

しかし、上京してしばらくすると地元にはなかった色々な文化に影響されて、それまで良く聴いていいた60〜70年代のロックからどんどん離れていったような気がします。
今ではそんなことは全く思いませんが、当時は
『典型的なロックってどうなん??』
とでも思っていたのでしょう。

そんなことから、お金に困った際に上京したてに買っていたロックのレコードを一掃したことがあったんだけど、その際に盤面の状態が傷だらけのバッドフィンガーのレコードだけ買い取ってもらえなくて返品されたことがあったのです。

その夜は青山の今はもうなくなったクラブに友達と行くことになっていたので、その返品されたレコードを持って行ったわけです。
入り口で荷物を預ける際に、店員にその返品されたバッドフィンガーの入ったレコード袋を渡したら、DJとおぼしきその店員は
『こいつ、どんなの聴いてんだ??』
とボクになんの許可もなく目の前でそのレコード開けて中を見たわけです。
ボクが売りに行って返品されたレコードではなく、クラブに来る前に買ってきたと勝手に思ったそいつは
『お洒落なクラブにバッドフィンガーのレコードなんかを買ってきているこいつはダサい』
と明らかに蔑んだ目で見て来たような気がします。

その時の正直なボクの気持ちは
『いや、違うんだ!もっとイケてるR&Bやフリーソウル系のレコードも家にはあるんだけど、これは売りにいって返品されたやつなんだよぉ』
という気持ちでした。
がしかし、そんな反論をするタイミングもなく、花の大都会・大東京の大青山でバカにされたような気分で帰って来たのを覚えてます。

んで、そんな出来事もとーーーっくに忘れていた2022年。
松村さんの死からバッドフィンガーを思い出して久々に聴いてみたのです。

バッドフィンガー、最初は懐かしさでふむふむと聴いていたけど、よく聴くとめちゃくちゃ曲の完成度も高いし、構成も演奏も素晴らしいやん!!

そして不意に青山のクラブでの出来事を思い出して、あんな風に思っていた自分を恥じ、そしてボクを蔑んだクソDJ(なのかどうか知らんが)、ファーーック!!

君の音楽事情は存じてないけど、ひと昔前の音楽だから、今流行ってないからという理由だけでバッドフィンガーを蔑んだオレたちは完全にアホでした。

都会の夢に敗れ実家の山形に帰ってしまったDJ志望の彼(憶測)。
今でもお洒落なレコードを聴いとるか?
たまにはバッドフィンガーも聴いてみろよなっ!

うーん、実際なにがトリガーになるかわからんね。。

しかし、改めてバッドフィンガーというバンドを調べてみると、まぁ悲劇ですなぁ。

なにか言えることがあるとするならば、人と状況をよーく見極めて、契約書はとにかくよく読め!ということでしょうか。

とはいえ、過ぎた出来事を客観しているから言えることなのであって、もし自分が同じような状況だったらそんなクールな判断ができたかどうが、定かではありません。

とにかく、悲劇すぎてそれくらいしか言えないけど、でもバッドフィンガーの残した音楽は(人によって紆余曲折はありますが)、決して色褪せないんです。

写真:事情により著者近影となります。

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