#3 「伝統工芸やものづくりを行う作り手と取引するとき、はじめは大変だったことが多いんじゃないですか?」とよく聞かれます。どうでしょうか?お答えしましょう。

タイトルにあるように、地域の伝統工芸などを取り扱っていると「伝統工芸やものづくりを行う作り手と、取引するときは、はじめは大変だったことが多いんじゃないですか?」という質問を受けます。その答えは「そんなことは特にありませんでした。」というものです。その理由を述べてみようと思います。

うなぎの寝床では、九州ちくごのものづくり・約90件の作り手の商品を取り扱っております。商品点数で見ると1000点弱にはなります。

うなぎの寝床 オンラインストア 参照(全て掲載はしておりません)

そのほとんど全ての商品は「買取」という形態で行なっています。なぜか?雑貨屋さんや、なんとなくお店をはじめようという方は「委託」と言って、作り手から商品や作品を借りてお店に並べるという形態をとることもあると思います。

うなぎの寝床は、全くお金がない(いまもそんなにありませんが)当初から、作り手の物はほぼ全て買取で行なっていました。その理由は二つあります。

1.作り手に対する誠意と役割分担。
買取、支払いサイクル、リスペクト。

お店をはじめると決めて、買取で行うことはハルと話し合って決めていました。そして、作り手のところに話をしにいくときに、小売も何もしたことない坊主二人組が「お店をしたいので、取り扱わせてください。」とお願いしにいったのです。作り手は、最初、なんだろう?この若い子たちは(容姿は当時から順調に老けてましたが。。。)。と思ったに違いありません。僕は26歳になろうかとしていた時でした。

多分、不審に思われたとは思いますが「買取でやらせてほしい。」と伝えたことで、おそらく「こいつらは、よくわからないけど、真面目なやつらには違いない。」と思ってもらえたことは間違いないかなと思います。よく、こういう地方でお店をしていると「伝統工芸やものづくりの作り手と、最初取引するときは、大変だったことが多いんじゃないですか?」と質問を受けることも多いのですが、実はあんまり大変だったことはなくて、買取でやっていたし、支払いのサイクルも早いので、そういう買手に対して、作り手が拒否することはありませんでした。最初は30件ほどの取り扱いからでしたが、どの作り手も快く取引を受けてくれたことを覚えています。

そして、その背景にどういう考え方があるかというと「僕らはつくれない。」ということです。僕らは作り手ではなく、あくまでも「伝える」という軸が仕事になるだろうという認識がありましたので「作り手に対しての、自分たちがやれないことをやってもらっているというリスペクトと役割分担という意味」を持って仕事に取り組もうというのが前提の考えとしてあったように思います。

「小売店の責任が曖昧になる。」
これも、大きな一つの要因でもあります。委託で商品を取り扱うと、パッケージが破けたり、布が日焼けしたり、食品だと賞味期限が切れたりいろんな問題が生じます。委託で扱っていると、そこに対する責任も曖昧になります。

買取で取引を行うと、買い取った時点で、それは小売店側に責任が移っているので、小売店側が、このようなパッケージや日焼けや賞味期限などに対しては責任を持つことになります。それが非常に重要だと考えています。

前職で、地域活性化の仕事をしていた時に、そのような委託でのトラブルを何度か見てきました。自分がそのようなことはしてはいけないなと心に決めたことを覚えています。

「買取の方が、委託よりも、もちろんだが卸値は安い」
これは、当然だと思うが、買取でものを取り扱う方が、委托で取り扱うよりも卸値は安いです。そして、最近は、委託での取り扱いはしない作り手も多くなってきているのではないか?と思います。それは、全然良い傾向だと僕は考えています。百貨店などは基本催事と呼ばれるイベントで回していくため、それは委託となります。

うなぎの寝床においても、イベントとして一時的に取り扱う商品などに関しては、委託という形態で取引することもあります。

2.リスクがあるから頑張れる。逆に言うと、リスクがないと頑張らない。
買取じゃないと売る気にならない。なぜなら怠け者だから。
もう一つは、買取という形態をとるのは、僕の性格が起因しています。僕は元来怠け者であり、リスクがないと頑張ることができません。委託でもし商品を取り扱ったら、多分怠け者なので頑張って売らないような気がします。買取でやることで、自分のお金を突っ込むことで、売らないと生活ができない状況をつくる。ということで自分を心理的に追い込むという作業でもあります。

なぜこういう方法をとったのか?というと、やはり、ものづくりを回していくためには、作り手も売り手も生活がしっかりあるという事実を認識することです。ものづくりや伝統工芸は情緒や感情で語られることも多いですが、やはり、みんな1人の社会人でり、生活がある親だったりもします。想いがいくら強くても、しっかり売れて生活できないと、後継者問題も、いろんな金銭的問題も解決しません。

その意識を自分の中に埋め込むためにも、委託ではなく、買取でやり、そのリスクをプラスに変えれるように頑張るためのモチベーション作りでもあったと思います。

まとめ
1.買取で取引を行うことで、作り手に誠意をきちんと示す。
2.買い取った時点で、小売店に商品の責任は移る。しっかりと責任を持ち売る。
3.買取の方が、委託よりも当然仕入れ値は安い。
3.買取でやることで、作り手、売り手、買い手と資金循環をしっかりもたらす。

終わり。


本質的な地域文化の継承を。