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アーカイブ(加筆あり)/2023年6月号

ペットにやさしいすまいを考える

愛玩動物の室内飼養が当たり前の時代になってきて、昭和の犬事情を記憶する者としては嬉しい限りです。天候も昔と違い、暑い・寒いが過酷になっていますものね。ただ、動物が室内で暮らすために私たちがしなければならないのに、できていない配慮がたくさんありました。

見ている世界の違い

別に精神論のことではありません(笑)
要は体の高さの違いです。
私たち人間がだいたい150cmから170cmくらいのところで息をし、モノを見
ているとすると、動物たちは床面からせいぜい数十cm。ダックスフントのように体高の低い犬は、成犬でも床面から15cmほどの世界で生きています。
私たちが見て・聴いて・嗅いでいる世界と、動物たちのそれはまったく異なっています。人間基準で「ペットにもやさしい」と考えて作られたものが実はまったくやさしくないということを、今回は床材を例にとって検証したいと思います。

無塗装の無垢材に潜む罠

無塗装の無垢材。「最高の建材じゃないですか」と思います。でも製法を聞
いてみると「木の節の処理に接着剤を使う」のだそうです。編集長は化学物
質過敏症で、F☆☆☆☆(フォースター)のシックハウス対応品でも反応が
出ます。フォースター製品でも、揮発成分がないわけではないのですよね。
動物のいる家に使う場合は、あらかじめ十分にベイクアウト(揮発成分を飛
ばすこと)されたものを使うのがよいでしょう。

ペットのための床材を考える

日本でもフローリングの家がとても増えました。畳はカビやすかったり、メンテナンスが大変&費用がかかることから、最近は敬遠されがちです。い草にも農薬が使われたり、防カビ・防ダニ加工がされていたりすると健康を損ねます(これで化学物質過敏症を発症する人もいます)。
他方、フローリングは動物の足腰に負担をかけます。右の写真のようにワ
ックスをかけていればなおさらですね。
膝蓋骨脱臼や骨折、ヘルニアなどのトラブルも多いので、小型犬は注意が必要です。

推せる床材はあるのだろうか

これなら推せるかも!と思える床材に、一瞬出会ったのです。置床タイプのパネル。サンプルも取り寄せて問題ないことを確認し、ではまず2畳分買いましょう!となり、届いて開封した瞬間、結構な揮発臭にやられてしまいました。
2枚のサンプルを室内に置いていた時は、無塗装の杉無垢材が空気感を変えてくれるほど素晴らしかったのです。枚数が増えた途端、無理になりました。原因は表面に書いた「節の加工に使われていた接着剤」そして裏面の滑り止めのゴム臭、そのゴムを接着するための接着剤臭でした。
体感的に、接着剤もフォースターではなかったのでしょう。今回はメーカーさんのご厚意で返品を受けていただけましたが、双方にとって残念な結果となってしまいました。
犬の足腰に優しいコルクマットも、EVA樹脂の臭いや接着剤臭はあります。
床暖房対応とされているコルクマットもありますが、現実的には熱を受けると揮発臭がかなり高まります(ホットカーペットでも同様です)。
対策としては屋外で充分にベイクアウトしてから敷くのがベストです。先に書いた置床のパネルも、充分なベイクアウトができれば使えた可能性はありました。
ただ、都市部の家で何畳分ものコルクマットや置床パネルを広げて干せる場所ってないですよね。結局はコットンなどのラグを敷いてまめに洗濯、が「無難な結論」になるのかもしれません。

そもそも論なのですが

今回床材対策を考えたのは、今いる賃貸物件の床が柔軟剤臭いからです。これは前居住者の迷惑な残置物です。犬たちは床から15cmの世界を生きていて、受ける影響は人間以上です。
しかし床に漆喰を塗るわけにもいかず、犬に害のないVOC(揮発性有機化合物)除去剤などもありません。畳も絨毯も、農薬や接着剤の問題をクリアできません。壁なら漆喰を塗ればよいことが、こと床については対策が「詰む」のです。

しかしそもそも人間が柔軟剤等で家を汚染しなければ、このような悩みを持たなくても済むのです。賃貸物件に住んでいる人は特に、日用品はよく考えて選び、使う方が良いでしょう。
最近では柔軟剤や抗菌洗剤の残り香、しみついた臭いが物件汚損とみなされます。買い手・借り手がつかないため、退去した後に多額の原状回復費用を請求されるケースも出てきているようです。

結局、ペットにやさしい住まいとは

以上のことを考えると、良い家とは素材だけでは語れないものだ、という結論が見えてきます。もちろん素材はとても大事です。一説では「室内熱中症の一部はシックハウス症候群のケースもあるのでは」と言われています。塩化ビニルのクロスや接着剤は、この暑さで揮発してくるかもしれません、確かに…。
ですから、よく言われる「無垢材と漆喰で家を建てる」は本当にその通りなのです。気候風土に合った自然素材を上手に使うことで「呼吸する家」になります。今から家を建てるなら、自然素材+オールアース住宅にすることをお勧めします。
オールアース住宅についてはミタスライフ主宰の「電磁波軽減対策セミナー」でもご紹介いたしますので、ご興味のある方はこちらのサイトからお申込下さい。

素材や電磁波対策を整えた上で更に「質の良い日用品もまた、良い家をつくる要素」という意識が大切になってきます。いくらお金をかけて無垢と漆喰の家を建てても、高香性の柔軟剤や洗剤を使った瞬間「全部台無し」です。抗菌洗剤や消臭スプレーなども同じです。
家は建てておしまいのものではなく、あなたと共に、ペットたちと共に、長い時を生きていくものです。大切なペット、人生を賭けて建てた家を前にして、それでも「私は私の好きな香りを使う権利があるから、家やペットに害があってもかまわない」と言い放つ人はいない…と、信じたいものです。


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