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AKIRANAKAの眩しさ

AKIRANAKAの眩しさ

嫌味のない光沢、ドラマを感じさせる不思議な配色、全体的に大きめのサイズ感に詰まるようなカフス周り、うつくしい縫い代の始末、細やかなピッチ、一目見て素敵だと思う服というのは理由がある。視線のたった一秒を捉えるような服というのは、たいてい細部まで素晴らしい作品である。いつもそういう目で服を見てきたのでそういう勘は働く方だ。家に持ち帰って改めてまじまじと見て、自分の勘が間違いなかったことに安堵した。

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ファッションと日本製

ファッションと日本製

毎回、死ぬまで着るくらいの気迫をもって購入するヨウジヤマモトで、今季一番気に入って手に入れたニットが中国製だった。とにかく寂しくて、こみあげる悲しみを抑えられなかった。いつのまにかヨウジヤマモトで中国製が存在していたとは。

中国製だからといって糸がほつれていたり、始末が悪いという訳ではなく、袖を通すと期待通りの美しいシルエットが生まれる、大好きなヨウジヤマモトのニットだ。少しざらついてドライなウ

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靴と魂の関係

靴と魂の関係

靴は足を守るためのものだ。私たちが家から出て外への1歩を踏み出すために必要な道具だ。急いでもゆっくり歩いても靴底はすり減り、一生懸命生きれば生きるほど靴はくたびれていく。私の代わりにボロボロに傷ついていく健気な靴を、いつからか戦友のように感じるようになった。シューケアグッツを揃えたり定期的に修理屋に持っていくようになった。私たちは自分の足ではなく靴の裏で地面を感じて踏みしめている。靴が汚いと自分も

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”男性の服を女性が着る”をコンセプトとしているY'sの服には、独特のメッセージがある。
女らしく生きるのは嫌だけど、決して男になりたいわけじゃない。そんな卑しい欲望と浅はかさと悲しみを、力に変えてくれる服だ。
#ヨウジヤマモト #ファッション

LOEWEのCOOKIEというコインケースは、LOEWEの数ある革小物の中で、最も洗練された作品だと思っている。手の内に静かに収まるデザインは、限りなくミニマムで実用的でありながら、モードへの挑戦を感じさせるアクセサリーのようにも見える。
#LOEWE #fashion

ファッションと制約

ファッションと制約

ファッションに自信がある人が好きだ。ストリートやモードやロリータなどの限定したタイプのみならず、全身でやりたいイメージを体現している人を見ると、目が離せなくなる。色、素材、長さ、統一感と混沌性を織り交ぜ、「たかが服」を超える時、その人は特別な生き物になる。服が似合うか似合わないかは自分自身が決めるのだと、そんな気概に蹴倒されそうになってしまう。遠くから見つけ、すれ違い、後ろ姿を見送るまで、美しいア

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個性と無個性のあいだ

個性と無個性のあいだ

人間誰しも、特別扱いされたいものだ。ほとんどの人がオリジナリティや特別感を望んでいながら、結局は普通であることのあたたかさに微睡んでいるうちに人生が終わる。受け入れる覚悟なんてないのに個性を求める叫び声だけは立派だ。そして私も、まぎれもない1人なのだろうと思う。

ある環境の中で一般的でない格好をすれば当然目につく。しかし私は、個性とは、嫌でも「見つかってしまう」ものだと思う。制服のようにみんな同

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ファッションショーと流行

ファッションショーと流行

私の知らない絢爛豪華な世界が確かにある。世界中から選び抜かれた美しいモデルが、きらびやかな衣装を身にまとってランウェイを堂々と歩く姿や、衣装の一つ一つにしつこい熱視線を送る観衆の姿に、ファッションという産業が放つ力の強さを感じる。私はファッションブランドのコレクションのショーを見るのが好きだ。コレクションでは、そのブランドの今シーズンの力の全てが披露される。何が伝えたいのか分からないファッション広

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コムデギャルソンのシャツを着る

コムデギャルソンのシャツを着る

コムデギャルソンのシャツを着ると、なぜか毎回、自分自身とは一体どんな人物だったのかを思い返すことになる。窮屈な首回り、硬い衿芯、体勢を崩すと苦しいほど圧迫される背中のダーツ、デザインの全てが身体に負荷をもたらす。いつもの自然な自分じゃ居られなくなる。
それでも、このシャツを着ると、自分のなかのプライドのようなものがくすぶって、自分自身と向き合うきっかけとなる。自分らしくいる事とは、何かを無くすこと

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ヨウジヤマモトを着る

ヨウジヤマモトを着る

そもそも服に何を求めているのだろう。きっと人それぞれにファッションには譲れないものがあって、それが人の外見のほとんどを構成している。しかし人それぞれなんていうけれど、所詮服は衣類としての機能しか果たさないので、素肌を覆う為の布きれだと思えば街中を歩く人々は皆同じ格好をしている。ブランドものであろうがファストファッションであろうが自己表現とかフォーマルとか何であろうが、所詮服は服なのだ。自分の一部で

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