THANK YOU FOR YOUR DARKNESS

ロウソクの火が小さく震えながら消えた。もしかして命の終わりの瞬間もこんな感じだろうか。炎に寄せていた後悔と怒りが行き場をなくして、息が詰まりそうになった。やがて少しずつ視界ががぼやけて何も見えなくなり、涙がこぼれ落ちると、残酷なほど、世界がいっそう鮮やかに見えた。

毎晩寝る前に、夢であってくれと唱えるのに、朝目覚めても現実は現実のままだった。夢では想像できることしか起こらなくて、想像できないことが起こるのが現実だと、誰かが言っていた。まさにその通りだった。私の脳では思いつかないようなことが現実では起こりうる。混沌に思える夢ですら、私の限りある小さい脳の中の小話でしかない。

父を亡くして2週間が経ち、呆然とする日々が続いている。夢にも思わないとはこの事を言うのかと実感した。この歳で父を失うなんて、考えもしなかった。他ならぬ父に、もっと見せたいものがあった。見せなければならないものがあった。これから、長い時間をかけて。

いつまでも醒めない夢の中にいる気分だ。父がいないことが現実で、父がいるのは夢の中だけだと理解はしている。でも、どっちが夢で現実なのか、私の願望なのか事実なのか、今はよく分からない世界に生きている。

でも、父の声、足音、口癖、笑い声、最後に握りしめた父の指、何一つ消えることなくここにある。お父さんが居ても居なくても私のなかに確かにあるよ…これからは私の血と身体と心臓が、あなたの手足であり魂であり鼓動だ。夢や想像に奪われてたまるか。

#エッセイ

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UNBILICAL

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