これ絶対恋じゃん、恋でしょ。
というどうしようもない衝動に襲われたので書く架空女子会について。
架空女子会、知ってますか？
知らなければ知ってください、俺もまだ名前と曲くらいしか知らないけど名前と曲知ってれば十分ですよね音楽家なんて。
サンクラのランダム再生に身を委せてたら聴こえてきてなんじゃこりゃと思ってる内にヘビロテしてました。
とりあえずコレ↓聴いてください。
https://soundcloud.com/user-207800474/i-love-you

はい、ヤバいですね。やばいです。
久々にこれ、バチクソ喰らった訳です。
まずね、ラップが上手い。これ本当上手いんですよ。スキル高けえ。
んでトラックが激オシャじゃないですか、それを完全に乗りこなしてて。
その上でこのリリックっすよ？　ヤバいでしょ。
もうね、無事に三十路も越えさせて頂きまして。
今更そんなね、「この歌詞いい！」みたいな。ないでしょ。
もう殆ど惰性で生活に馴染んでいく日々の繰り返しで、
そういう鈍い痛みは確かにあるんだけど、
そんなの一々真に受けてたら死んでしまう訳で、まあ慣れる訳ですよね。
少なくとも慣れたフリをして生きれる程度には我々、器用になってしまいます生きていると。
そこへきて架空女子会。
どんだけ鋭い心の痛みを歌ってやがんだよっていうとそういうことじゃないんですよね。
いや勿論心の痛みはあるでしょう。
あるんだけど、それをこう「痛い痛い！！」って言っててもやっぱ、もうそんな簡単にその痛みを想像はできないっつーか、「まあみんな痛いよね」っていう一般論に溶かして飲んでしまえる、その中に千本の針が溶けていたってそんなもの気付かずに飲み下せてしまえるくらいには喉も太く硬くなり声も嗄れてくる訳ですよ、チバユウスケほどじゃないけど。
前置きうざいな。
とにかく言いたいのはタイトルにも引用した
「屋上が立ち入り禁止な理由　世界が僕と君の仲を認めないからだって聞いたんだ
　戸締りしっかりすれば来れないピーターパン」
のラインが神懸ってるってことですよ。
何が凄いって言葉のチョイスが凄い訳ですけど、まずキーワードとして「屋上」と「ピーターパン」がある訳ですね。
これらが象徴するものは何か。
そう、まさしく「青春」ないし「ロマン」であります。
高校生時分、校舎の屋上というのは狭い世界を見下ろしながら広い世界に思いを馳せる場所であったり、放課後に自主映画を撮る舞台であったり、友達や恋人と秘密の会合や逢瀬を重ねる場所であったりする。あるいは授業をサボって一人でタバコを吸ったり(これらはすべてフィクションにより鍛え上げられた想像力であって必ずしも現実の高校生の生活の実態に即したものではないことをお断りしておきます)。
　で、その屋上が「立ち入り禁止」ということでロマンは断絶されている。そしてその理由は「世界が僕と君の仲を認めないから」だと「聞いたんだ」、と他人事のように流し、その上「戸締りしっかりすれば来れないピーターパン」と繋げることでダメ押し的にロマンと距離を取る。ピーターパンに迎えに来て欲しいとか、ピーターパンになりたいとかいうことではなくて、むしろ屋上が「立ち入り禁止」であることを嘆くどころか自ら積極的に「戸締りをしっかりする」ことによってピーターパンを来れなくする。ここに逆説的に表現されるロマンの濃度、お分かり頂けるだろうか？
　大人になることの不/可能性、メタモルフォーゼ、自分が自分でなくなること、ここではないどこかへの憧憬、世界が変わる/変えることへの期待、革命の匂い、未知への陶酔。そういったロマンは身体の変化と連動してやはり思春期の少年少女を強く駆り立てるものだと思う。上手くいけばそれで“成長”できる。しかししくじれば、その後の人生をすべて棒に振ってしまうかも知れない。ロマンとはやはり「生活」の対極にあるものだからだ。そんなロマンにむしろ自ら背を向け「ピーターパン」が来れないようにする、しかもそのことを特に悲観もせず飄々と歌う。そのカッコ良さに痺れる。
　そして最後のバース、

「πで済ます円周率
異文化交流　秘密基地の原住民
ねえムーミン？　こっちむいて？
無視。
マジウケるって笑い合ってまた明日
8月32日　ナツの終わり
僕のとなりの席もアキ
君はどこかにフユうする天空城
青春よ、まだ僕はプールに沈んでいる」

の言葉遊びと押韻のセンスも凄い。
「8月32日」だけならそれ程目新しくもないのだけれど、
「πで済ます円周率」という投げやりな雰囲気から
「原住民」と「ねえムーミン？」で踏みつつ「無視。」、「マジウケるって笑い合っ」てまた明日、という流れがもう完璧じゃないですか。
ネクラが過ごした青春の光と影がギュッと詰まってる感じ。
いやーこんなリリック書けねえわ。書きてえわ。
てなところで満足したのでおしまいです。
架空女子会、聴いてくれよな！