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「ジャイアンツを世界一のチームに」5年ぶり優勝に泣いた2人の男

原辰徳監督が宙に舞うこと8回。
9月21日、読売ジャイアンツがDeNAベイスターズを破って、5年ぶり37回目のセ・リーグ優勝を決めました。

久々の優勝はファンにとって大変うれしい出来事ですが、アンダーアーマーにもこの瞬間を待ち望んでいた人間がたくさんいます。今回は、その中から2人のストーリーをご紹介しようと思います。

刻み続けた、優勝記念Tシャツ

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ジャイアンツの優勝を弊社でもっとも喜んでいるのは、間違いなくこの男です。和田貴範、38歳。スポーツマーケティングを行う部署で、ずっとジャイアンツのプロジェクトに携わってきました。

和田はもともと、東京六大学野球でベストナインに選出されるほどの、将来有望な野球選手でした。しかし、ドラフト指名されることはなく、社会人野球へと進みます。ここでも都市対抗野球などで活躍し、ベストナインに選ばれるも、やはりプロから声がかかることはありませんでした。それでも野球が好きでプレーを続けていましたが、2011年にチームから戦力外通告を受けて引退しました。

和田
社会人3、4年目までは真剣にプロを目指していて、その後は何となく10年続けようという気持ちでした。夢だったプロ野球選手になることはできませんでしたが、好きな野球をやりきったという思いはあった。今度はスポーツビジネスの世界で頑張ろうとドームに入社しました。

和田は野球用品を取り扱う、アンダーアーマーベースボールハウス川崎の初代店長を経て、商品の企画と開発に取り組みます。この時、和田が開発に携わった商品は、アンダーアーマー初のグラブとバットとして、世に送り出されました。

2014年、アンダーアーマーとジャイアンツは、「世界基準」を掲げた5年間のパートナーシップ契約を締結します。担当となった和田にとって、怒涛の日々の始まりでした。

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和田
ジャイアンツのプロジェクトが動き出した時、「自分が今まで培ってきたことが生かせる」と本当にうれしくて、楽しみでした。しかし、いざ始まってみると、まず2015年2月1日のキャンプインに向けて、2万5千点ほどの商品をチームに提供しなければなりません。ニーズを汲み取って、何とかモノを準備しましたが、1月に栃木県の倉庫で行なった仕分け作業ではトラブルが多発。結局、4日間倉庫に缶詰めで作業し、何とか納品することができました。

初年度はノウハウがない中でもがき苦しんだ和田ですが、パートナーとして掲げた目標を一つ一つ形にしていきます。ジャイアンツに関わる「オレンジ色」をすべて統一するなど、年を追うごとに取り組みも商品も進化していきました。しかし、常に前向きな和田にとって、年に一度だけやりきれない、辛い瞬間がありました。それは優勝記念Tシャツと帽子を処分する時です。

和田
2015年から4年間で、何百枚という優勝記念Tシャツを処分しました。万が一世に出てしまってはいけないので、でき上がったTシャツやキャップに、デスクで1枚1枚ハサミを入れている時が、一番切なかったです。特に、帽子ってなかなかハサミが入らないんですよね。。。
先日、アンダーアーマーがパートナーになってから、5年目にして初めて優勝記念Tシャツを納品することができました。感慨深いというか、ズシンときました。

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私たちとの取り組みについて、株式会社読売巨人軍、営業企画部の本城直貴さんはこう語ります。

本城さん
アンダーアーマーさんとはサプライ、プロモーション、マーチャンダイジング、すべての面で密にコミュニケーションを取らせていただいていて、信頼関係ができています。担当者の方はみなさん素晴らしい方たちばかりですが、特に和田さんはずっと野球を一線でプレーされていた”野球人”。誠実で柔らかい人柄もあり、現場の選手やコーチ陣からも全幅の信頼を得ています。
私たちも5年ぶりに優勝して、あらためてパートナーのみなさんに支えられているのを感じました。さらに強固な関係を築き、お互いもっとコミットして取り組んでいきたいと考えています。

一方の和田は、この5年間でジャイアンツに対する思いが変化したと言います。

和田
ジャイアンツの選手たち、何か納品などをした際に必ず「ありがとう」と言ってくれるんです。プロ野球選手にとっては、そんなのやってもらって当たり前だろうという感覚だったのですが、全然違いました。商品に対するヒアリングに対しても、とても丁寧に答えてくれます。

2014年に初めて視察した際、ジャイアンツというチーム自体が憧れのすごい存在だったので、不思議な感じがしました。今ではチームも球団の方たちも、パートナーという枠を超えて、家族のように思っています。

野球を現役で長いことプレーさせてもらいましたが、引退した後にもこうして大好きな野球に携わっているのは、本当に幸運なことだと思います。パートナーのジャイアンツに対してはもちろん、これからも自分を育ててくれた野球界に恩返ししていきたいと思っています。

和田さん

和田さん2

1グラムでも軽く

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もう一人、ジャイアンツについて、人一倍の思い入れを持っているのが、商品の企画と開発を担当している矢澤隼人です。矢澤は3年ほど前からジャイアンツのプロジェクトに携わっています。
彼は入社以来、営業としてずっとサッカーチームを担当していました。野球の仕事に関わるのは、ジャイアンツが初めて。野球についての知識もほとんどありませんでしたが、選手たちの言葉がきっかけで、取り組み姿勢が変わります。

矢澤
東京ドームのロッカールームで選手にヒアリングをしていた際、投手陣をはじめとした選手たちから「汗をかくとユニホームが重い」、「明確にパフォーマンスに影響する」という声が出ました。それまでは、正直、野球のユニホームについてあまり深く考えていませんでしたが、選手たちの強いこだわりを聞いて、野球選手にとっていかにユニホームが大事なのかを知りました。すぐに会社に戻って、どうすれば軽くできるか検討を重ねました。


2015年にアンダーアーマーが初めてジャイアンツのユニホームを作ることになった際、参考にした二つの言葉があります。

一つは
「巨人軍は紳士たれ」
という正力松太郎初代オーナーの遺訓。

そして、もう一つが
「ジャイアンツのユニホームは、戦闘服でありタキシード」
という原監督の思いでした。

これらをコンセプトとして、アンダーアーマー は胸番号のないシンプルかつオーセンティックなユニホームを作りました。デザインについては好評をいただいていましたが、“戦闘服”の部分で改善の余地が残されていたのです。

また、ここはパフォーマンスブランドとして絶対に譲れない部分でもありました。ユニホームの軽量化について、当社のCEOである安田秀一は、すぐに矢澤に以下の指示を出しています。

「生地は他よりも軽くあるべき。世界一の商品を出すのがアンダーアーマーの使命なので、そこに立ち返って何ができるか考えてみてください」

矢澤
生地の加工に様々な工夫を凝らすことで約50グラム、ユニホーム全体の重量の20%ほど軽くすることはできました。しかし、もっとも重要なのは水分を含んだ状態でいかに軽く、快適に着てもらうことができるかです。グラウンド上の選手たちは、常に汗をかきながらプレーしているのですから。

矢澤はユニホームを水に濡らした状態、それを絞った状態での重量を量り続けました。アンダーアーマーの得意分野である、吸汗速乾性の真価も問われていたのです。徹底的にこだわり抜き、半年以上かけてようやく軽量化したユニホームの開発に成功。今シーズンの途中から、選手たちは新しいユニホームを着用して試合に臨んでいます。

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軽量化されたユニホームについて、8月15日付のスポーツ報知にこのような記事が載りました。
【巨人】菅野で広島に勝ち越し!最短20日にM点灯…ユニ軽量化でチーム加速
※以下、記事より抜粋
「マウンド以外でもチームのために常に動いた。今季、巨人ナインの“戦闘服”に改革を起こした。今夏からアンダーアーマー製の試合用ユニホームを改良。約50グラム軽量化された。素材は変えず、編み込みの密度を変えることで軽量化を実現。体感温度の低下、汗を吸って乾きやすい効果もあるという。本拠地の東京Dは屋内だが、ビジターでは横浜、神宮、マツダ、甲子園と屋外球場で戦う。真夏は大量の汗をかくだけに、選手たちからは「感覚が全然違う」と大好評だ」

矢澤は苦労が実を結んだことについて、このように話します。

矢澤
「僕たちモノ作りをしている人間にとっては、自分たちが携わった商品を選手やファンが喜んで身につけてくれている姿を見た時に、一番やりがいを感じます。この記事を読み、実際に選手から喜びの声を聞くことができて、ユニホームの軽量化に本気で取り組んで良かったと感動しました」

8月6日の時点では2位のDeNAに0.5ゲーム差まで詰め寄られたジャイアンツ。しかし、猛烈な暑さが続く中、8月の残りの試合を15勝6敗1引き分けという、7割を超える勝率で乗り切り、一気にリーグ優勝を手繰り寄せました。汗をたくさん吸っても軽くて快適にプレーできる、新しいユニホーム。アスリートのパフォーマンスをより良くしたいというアンダーアーマーのミッションが、形になって現れたのだと私たちは信じています。

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ジャイアンツ関連商品のデザインを手がける山﨑守(左)と矢澤

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アンダーアーマークラブハウス 東京ドーム

ジャイアンツとアンダーアーマーが目指しているのは、日本一ではなく世界一のチームです。私たちはこれからもその目標に向かって、読売ジャイアンツとともに歩んでいきます。