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”日本の夏”に最適なバックパックが生まれるまで

暑い。。。

毎日とにかく暑いです。
猛暑を少しでも涼しく過ごすために、みなさん様々な工夫をされていると思います。今回ご紹介するのは、そんな暑い夏にぴったりのバックパックが誕生するまでのお話です。

主役はこの二人。商品企画担当の六川永一(写真左=28)と、デザイナーの日髙寛之(51)。

いきなり本題に入ります。
六川は、日々の生活で使うバックパックについて、ある悩みを抱えていました。

「夏場にバックパックを背負うと、汗で蒸れて不快・・・」

夏でも快適に使うことのできる、高機能のバックパックを作りたい。日本国内での企画会議で自らのアイデアをプレゼンし、見事に採用。アメリカのボルチモアにある、アンダーアーマー本社の開発チームに製作を打診しました。

しかし、帰ってきた答えはノー。。。

六川が作りたかったバックパックは、高温多湿な夏の日本で使われることを想定した機能が多く、欧米を中心としたグローバルに展開することへの理解が得られなかったのです。

六川はあきらめません。「グローバルとローカルのニーズが必ずしも一致しているとは限らない。日本の蒸し暑さを考えた時、このバックパックはお客様にとって絶対に必要な商品」。

そうです。私たちのブランドミッションは、

「UNDER ARMOUR MAKES YOU BETTER」

なのです。

六川は信念を貫いて周囲を説得し、日本の開発チームによる製作が決まります。ここから、商品企画の六川とデザイナーの日高による、二人三脚でのバックパック作りがスタートしました。

まずは六川のアイデアを日髙がデザインに落としました。そして、実寸大の紙のサンプルを作って、様々な検証作業に入ります。

日髙
今回のケースでは、アイデアをデザインに落とすまではそれほど大変な作業ではありませんでした。しかし、デザインができただけではただの「絵に描いた餅」。これを素材の選定も含めて実際の商品に仕上げていくまでには、多くの難題が待ち受けていました。

涼しく、頑丈に

まず、”夏でも快適”という最大のテーマを実現するための難関が、肩紐部分の素材でした。背負った時に涼しく感じるためには、メッシュ素材にして通気性を良くしたい。しかし、メッシュ素材にすると強度が落ち、荷物をたくさん入れると、肩紐が切れてしまうリスクがあったのです。

あらゆる素材にトライし、肩紐の形状や位置を変えるなど、試行錯誤を繰り返しました。二人がたどり着いた答えは、メッシュ素材の中に入っているウレタンを改良することでした。丈夫なメッシュ素材を採用することで強度を確保しつつ、内部のウレタンに1センチほどの穴を開けることで、通気性の高さを兼ね備えることに成功したのです。

次に、背中が当たるパッド部分についても、「何個がいいのか?」「素材の硬さは?」「最も快適な位置はどこか?」と一つひとつ検証を積み重ねて、涼しくて丈夫なバックパックの屋台骨ができあがっていきました。

満員電車で目にする、あの光景

これで、一番大事な課題はクリアしました。
さらに六川がこだわったのが、バックパック上部の開閉部分でした。

朝夕の通勤通学の時間帯をはじめとして、満員電車に乗っていると、みなさんバックパックを前に背負っています。他にも、切符やチケットを買う時、席に座る時などバックパックを体の前に背負ったり、抱えたりする場面は意外と多くあります。


そんな時に、中のものを取り出すのに苦労した経験はありませんか?

六川は、多くの日本人が日常生活で直面していると思われる、この潜在的な課題に注目したのです。

六川
「中が見えてものが取り出しやすいよう、カバーは外しました。そして、外側にコンパクトに開閉できるようにしたのです。また、ユーザーは右利きの人が多いので、バックパックを右肩にかけた時にものが取り出しやすいように設計しました。他にもPCやボトルの収納など、隅々までこだわっています」

最高のバックパックを作る。
六川と日髙が試行錯誤を重ねた商品の設計仕様書が、ついに完成。それを実際の商品へと形にして、ようやく完成したのが、「UAクール バックパック30L」です。

横浜育ち、23歳差のコンビ

なぜ、二人は多くの課題を乗り越えて、ここまでこだわった商品を作ることができたのでしょうか。そこには二人の強い絆がありました。

六川が新卒で当社(アンダーアーマーの日本総代理店である株式会社ドーム)に入社した2015年、彼の研修を担当したのが日髙でした。

日髙
「最初に会った時、物静かでおっとりとした印象で、これから大丈夫かな、、、とちょっとだけ思いました。しかし、話していくと内に秘めた熱いものがある。質問も的確で、アスリートの悩みをよく理解しているなと、すぐに見方が変わりました。六川とは地元が同じ横浜で、共通の話題も多かった。時代は違えど、ものの見方や価値観が合っていたのかもしれません」

六川
「日髙さんの第一印象は、真っ黒で、しかもムキムキ、、、です(笑)。
その後、私が体を鍛えるのが好きということもあり、終業後に社内のジムで、いつも一緒にトレーニングを行っていました。また、休日にはサーフィンを教わったり、ご自宅にお邪魔して、仕事に対する姿勢など多くのことを学ばせていただきました」

そして月日は流れ、二人がタッグを組むこの機会がめぐってきました。
日髙は六川から最初に企画の説明を受けた時のことを、こう振り返ります。

日髙
「六川が信頼できる人間だということは、よく知っています。そして、彼が作りたいと考えている商品も、本当に世の中に必要なものだと感じた。だから、これはとことんやろうと思いました。
商品企画とデザイナー、両方の情熱が完璧に同じ方を向いた時、良いものができるんです。何十年もこの仕事をやっていて、そこまでぴったりハマった相手って3人くらいしかいないんですけどね。もちろん、六川はその一人です」



「UAクール バックパック30L」を発売してから、半年ほどが経ちました。



おかげさまで、売れています。

過去に1万円を超える高価格帯でこれほど売れた商品はなく、バックパック全体の売上をけん引しています。カスタマーレビューでは、5段階で4.7という高評価をいただきました。

さらに、
「夏でもあまり暑くない」
「過去最高の商品」
「サイドからも出し入れ可能で気に入っている」
など多くのお褒めの言葉も寄せられています。

たとえアメリカのアンダーアーマー本社に却下されようとも、日本のお客様のためにより良い商品を届けたい。そんな二人の思いが一つのバックパックという形になって、お客様に伝わったのかもしれません。