ホーム・アローン #パルプアドベントカレンダー2023

「せっかくのクリスマスだというのに家族はボクをおいてハワイ旅行に行って一人ぼっちだ」
 吾妻サダハルは一人、宅配ピザを食べていた。吾妻家ではつい先日、懸賞でハワイ旅行に当選し、厳正なるジャンケンの結果、サダハルがお留守番をすることになせったのだ。しかし、若いサダハルをずっと一人ぼっちにするのは酷なので吾妻家の親戚に面倒をみてもらうことになった。
 親戚が吾妻家にやってくるのは翌日なので、クリスマスの夜を一人で過ごすことになったのだ。
「虚しいから早く寝よう」
 サダハルは家族がハワイ旅行を楽しんでいることを羨みながらピザを片付けて、自室で眠りについた。

◆◆◆◆◆

 真夜中、サダハルは物音で目覚めた。今夜はサダハルしかいない部屋に誰かが入ってきた。
「誰? 誰かいるの?」
 サダハルは護身用のバトミントンのラケットを手に持って物音のする方に向かった。
「こそこそ……こそこそ」
 薄暗い部屋の中をしめやかにスニーキングして移動するサダハル。リビングにたどり着くとなぜかテレビがついているらしい音がしていた。
 サダハルはドアの影に隠れて様子を見てみた。
「これは……一体?」
 サダハルはリビングで繰り広げられている光景に驚いた。
 サンタクロース風の格好をした女がソファでチルしながら映画を見ていたのだ。
「……ど、どちら様ですか?」
 サダハルは困惑しながらサンタクロースに声をかけた。サンタクロースはサダハルの視線に気づいた。
「……メリークリスマス!」
「……メリークリスマスじゃないよ!」
 サダハルは素早くリビングに躍り出るとリモコンを奪って映画を再生を停止させた!
「あの、ここは僕の家なんですけど……なんで僕の部屋にサンタクロースがいるんですか」
 サダハルはサンタクロースになぜ自分の家に侵入したのか問いただした。
「サンタクロースだから子供のいる家に入ってくるのは当たり前だよね?」
 サンタクロースは首を傾げた。
「確かにサンタクロースが子供の家にいるのは当たり前だけど、どうしてソファで映画を見ているのかを聞いているの」
「面白そうな映画DVDがあったからね……『シン ブタゴリラ』凄いタイトルだ」
「見たことも聞いたこともないんだけどそのタイトル」
「他人の家でリラックスしてごめんね……これが終わったら出ていくからね」
 サンタクロースは立ち上がると懐からきれいにラップした箱を渡してきた。
「クリスマスプレゼントだよ」
「急にサンタクロースらしくなってきたな」
「中身を開けてご覧……びっくりするよ」
 サダハルは恐る恐る箱を開けてみた!
「これはモヤっとボール!?」
「今年一年頑張ってきた君にはモヤっとボールをプレゼントするよ」
「絶妙にいらない!」
「じゃあ、おまけするから」
 そう言って、サンタクロースは懐からまた何かを取り出した。
「クリスマス音楽に合わせて踊る武田信玄フィギュアだよ」
「何それ!」
「藤原道長フィギュアのほうが良かったかな?」
「クリスマス音楽に合わせて踊る歴史上の偉人シリーズなの!?」
「それじゃあ、よいクリスマスを」
 そう言ってサンタクロースはサダハルの前から消えた。
「ちょっと待ってよ!」
 サダハルは困惑したような叫び声を上げた。

「なんだったんだ一体」
 吾妻サダハルは困惑しながら自分の部屋に戻ってくると自分のベッドにプレゼントボックスがおいてあることに気づいた。
 サダハルは無表情にプレゼントを開けた。
 中身はちいかわのアクリルフィギュアだった。
「さっきまでのサンタクロースはなんだったんだ……」
 サダハルは困惑した。

この作品はパルプアドベントカレンダー2023の参加作品です



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?