燃素人形の夜


  真夜中の摩天楼を少女を模した人形は空を飛ぶように駆け抜けていた。その足取りには迷いは存在せず、ただ矢のように目的地に向けて走っていた。
 少女人形の後方には黒ロープの男たちが追いかけていた。
「人形を捕まえろ!」
 怒号に似た指示が飛び交うが少女人形は気に留めずに駆けていった
「糸を放て!何重にだ! 虫けら一匹逃さないようにしろ!」
 黒ロープ集団は一糸乱れずに糸を空に放った!
 糸は中空で網を精製するとまっすぐ少女人形を絡め取った!
「……動けない」
「ようやく捕まえたぞ!」
 黒ローブのリーダーは少女人形に進み出た。その動き獲物を捕まえたハンターのようだった。
「人形の身体はゆっくり解体するとしよう……俺は疲れてしまった」
 リーダーはタバコを吸った。
 対照的に少女人形は無表情に黒ローブを睨みつけた。
「なんだ……俺が恨めしいのか?」
 黒ローブは不敵に笑った。
「…………」
 少女人形は無表情だ!
「残念だったな……お前が自由に動き回れると困る連中が多すぎるのが悪いんだよ」
「……違う。あなた達がほしいのは私の心臓でしょ」
 少女人形の言葉に黒ローブのリーダーは眉を動かした。
「ほう、物分りがいいじゃないか」
「……あなた達にこの心臓は渡さない」
 少女人形はそう言うと網に絡み取られた腕を動かした。
「リーダー! ヤバいですよ!」
 少女人形の腕に熱を放つ
「ククク……この糸は強力な魔術で構成されている簡単に壊れはしないぞ」
 直後、黒ローブの表情が驚愕に包まれる!
  少女人形の指先から発火して網を焼き切ろうとしてるのだ
「こいつ空気に火をつけやがった!」 
 指先の炎はじわじわと網の繊維を焼いていく!
「総員で抑えつけろ!」
 黒ローブは少女人形の動きを封じようとした!
 しかし、逆に黒ローブに引火してしまった!
「クソっ! なんて人形だ!」
 もはや、黒ローブのリーダーは少女人形が網を焼き尽くすのを見届けるしかなかった!

【続く】

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