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『少女邂逅』のアンビバレントな魅力。

映画部・宮嶋です。

去年映画館で観て、とてもとても心惹かれた映画『少女邂逅』。

23歳の若い女性監督・枝優花さんと、保紫萌香(現・穂志もえか)さん&モトーラ世理奈さんのW主演が生み出した世界は、瑞々しくて少し痛くて、可愛くて残酷です。大人になりきる前の柔らかさを武器にしたような、したたかさ。

そして、触れがたいような孤高の美しさもあるのに、妙に生々しくて。なんたって、保紫さん演じる主人公の唯一の友だちは、蚕(カイコ)なんです。もちろん、イモムシ的な意味での蚕です。繭を作り、人間のために絹を生み出してくれる、蚕です。それがまたシンボリックでもあったりするのですけれど。

一方で、丁寧に組み立てられた構図や、まったくタイプの異なる魅力を持つふたりの女優さんの並びには構築的な美しさもあります。枝監督、スチル写真も撮られる方なので、画づくりがハッとするほどフォトジェニックなんです。でも、映像的にも、ラストの余韻の残しかたなんかには手練れ感さえも感じられます。作品に求められてるものを、しっかり意識的にクリアしているというか。

この絶妙にアンビバレントな感じが、私は大好きなんです。

私が受けた印象ですが、リアルな10代からまだ年月を経ていない若い女性監督が、その感性を失わないままに、撮影・編集のスキルに加えて、自分の中に蓄積されたかたちのないものを他人に響きやすいかたちに置き換える、ある種の「したたかさ」という武器を手にした、ちょうどその瞬間だからこそ生み出せた作品、っていう気がしました。

だからこそ、枝監督自身がこれから、その瞬間だからこそ撮りあげるであろう作品も追いかけて観ていきたい、と思わされました。彼女自身の成熟とともに、どんな作品を観せてくれるのか?楽しみです!

私はこの作品、劇場公開まもない頃に新宿武蔵野館で拝見したんですが、もともとは「MOOSIC LAB.」という、新進監督とミュージシャンの登竜門的映画祭で、観客賞を受賞した作品。

つまり、インディーズで生まれ、映画祭で観た映画ファンに高く評価されて、後追いで商業ベースに乗った映画です。

私が映画館で観た時には、MOOSIC LAB.での評判を聞きつけたと思われる客席には大人の映画ファンもたくさんいたのですがですが(私もそのひとりですが…笑)、徐々に女子高生たちのあいだでクチコミが広まり、ちょうど夏休みに入った彼女たちが劇場に集まったことで、ロングランヒットとなりました。

今の10代は、シネコン育ちの世代。ミニシアターに足を運ぶ子たちは、多くないと聞きます。この作品が、そんな世代をも劇場に向かわせたのは、やはり同年代たちを共感させるパワーのある作品だということ。

枝監督自身のこれからの作品も楽しみですし、それと同時に、『少女邂逅』でミニシアター文化に出会った女子高生たちが、また小さな劇場にも足を運んで、規模の大小にかかわらず自分の好きな映画を発見する喜びを知ってくれたらいいなぁ、と、大人の映画ファンとしては願わずにはいられません。

そしてそして!先日から他サービスに先駆けて、U-NEXTだけで、『少女邂逅』の配信を始めさせていただくことができました!自分が惚れこんだ作品を、こういうかたちで配信できるのは、バイヤーとしては大きな喜びです。

大人も10代も、男性も女性も、ぜひ彼女たちの小さくて残酷な、美しい世界に触れてみてください!


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