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将棋系Vtuber三宮の軌跡

このNoteの内容。
将棋系Vtuber三宮の経緯

1.構想はいつから?

どうやら2022年12月ごろから。
この時期の私のツイート

将棋系Vtuberには宮真純さんと宮式さんがいます。
両者とも特に関係はありませんが、それなら三とか二が頭文字のVtuberを想起します。そして私にとってそれは『源氏物語』の三宮でした。

三宮は『源氏物語』でもややマイナーなキャラです。
有名なキャラは主人公の光源氏、そして正妻にして正ヒロインの紫の上でしょう。

これに対して三宮はやや不遇なキャラです。その家柄(源氏が大好きな母親の家系)に注目し源氏が結婚したキャラです。
なお当人は自由奔放に育ってきたようで、貴族の子女が持つべき教養を持たないキャラでした。なので結婚しておきながら光源氏は「紫の上の方が良かった……」とだいぶ最低のことを思いながら過ごすのでした。

そんな不遇なキャラを活かす障害は2つありました。
外見です。
まず声は最近のボイスチェンジャー「RVC」で解決しました。

これが今回使用した音声モデル。かなり自然な声になります。

そして外見。これは強いッ!と言わざるをえない外見です。
素直に和風の3Dモデルという定跡に従う構想もありましたが、
戦闘力の前には些細な問題であると言わざるをえません。

2.プロジェクト三宮始動

さて、これで外見と声が用意できたので、あとは配信をすれば良いだけになりました。
本当にそうか……? 本当にそんなことで私は満足できるのか……?
私の中の英国人がそう囁いたのでした。

まずサブチャンネルを作りました。
これはノーリスクでほぼほぼ手間もかかりません。

更にTwitterも作成(転用)しました。
アカウントの作成日が2011年11月となっているのはその名残りです。
元々は「Unferth名言bot」だったアカウントを有料サービスでツイートを全消しし、三宮のアカウントを用意しました。

さて、これで新人Vtuberの体裁は整いました。
あとはこのアカウントを私が拡散し、数人程度の人間で鑑賞して終わり……
本当にそれで良いのか?」そう私の中の英国人がまたしても囁いたのです。

このあたりで私は一宮さんと四宮さんに連絡し、「1回配信するかもわからないアカウント」と説明していました。なのでこの時点で私は本気ではありませんでした。だが、今は違う。私は渇いている、ユーモアに!

3.新人Vtuberとして

ユーモアの大原則はいくつかありますが、大事な点があります。
それは直接は人を傷つけないことです。もしそれが騙すことにつながるにしても、笑って済ませられるようでなければいけません。
そしてもうひとつの大事な点は感づかれないことです。秘密は多くのものに価値を与えます。

三宮が最初にフォローしたのはVtuber向けサービスのサササーチさん、将棋ウォーズ公式、V名人戦公式でした。
まあVtuberで将棋ファンなら順当なフォローです。
そこからが重要です。

将棋系Vtuber及びそのリスナーにはすでに周知のことですが、Vtuberが将棋を指すと必ず気づく人が二人います。一条しゃおさんと美野辺さんです。

この二人はどこからともなく将棋を指すVtuberを見つけ出し、共有する情報通として知られています。なのでこの二人に気づかれずに接触できればそれだけで十分と言えましょう。

では三宮アカウントでこの二人をフォローすればいいか? いいえ、それは少し品がないと私は紅茶を飲みながら考えました。
なので私はさりげなく美野辺さんとしゃおさんのツイートに「いいね」だけしました。

さて、二人の目に触れるならその前に三宮の立ち位置を示さなければいけません。という訳でしたツイートがこちら。

すでに書いたように、三宮とは名前的には因縁がある二人のVtuberです。
ですが、この二人を尊敬するって言う人はまずいません。
理由は色々ありますが、大きな所ではどちらも「いじられキャラ」で、大真面目に「尊敬してます!」って言われるタイプの人ではないことです。
これで三宮が只者ではないということは十分にアピールできたでしょう。

そのうち美野辺さんとしゃおさんが気づきフォローしてくれたので、もちろんこちらもフォローバックしました。更に、大きな反応とセットで。

このツイート以降、じわじわ将棋系Vtuberや視聴者からのフォローが続きました。以降、三宮の正体への言及が散見されるようになります。

以降はフォローしてもらったらフォローバックしていくのが基本なので、省略します。

4.三宮として

さて、アカウントを立ち上げた所「キャラクターが一人歩き」し始めました。これは創作者なら経験のあることでしょう。

最初はこういう「いわゆるVtuber」的なツイートを流していました。

しかし、一人歩きした三宮はまず和歌を詠み始めます。
もちろん、三宮は不勉強なので有名な和歌の引用です。

また、『源氏物語』の話をし始めます。

以降も平安時代のお話をちょくちょくしました。

しれっと書いているが、牛の刻とはだいたい江戸時代まで続いた日本の時間の区切りである。だいたい午前10-午後2時を指す。↑のツイートでは12時を指して使っているが、まあ便宜上というやつである。

このツイートはだいぶ真に迫ったツイート。
三宮は説明なく

私も賭博場に出入りしてないので、やっぱりわかりません!

と書いているが、暗に「賭博場ぐらいでしか将棋は指されていない」ことを意識している。そして続くリプライで当時の将棋事情について補足している。

この辺は遊戯史の知識を元に三宮が語っている。

番外.セクハラについて


話を聞いてる感じ、もっと露骨にセクハラされるのではないかと警戒していたが、三宮が受けたセクハラはこの1件だけであった。「女子」とかプロフィールに書いているともうちょっと激しくセクハラされたのかもしれない。

5.将棋の指し方について

配信では将棋ウォーズを行うことにした。

なお、将棋ウォーズは複数アカウントが禁止である。
もし新しいアカウントがほしければ古いアカウントは削除しなければいけない。ということで三宮のために私はだいたい3-4年ぐらい使っていたアカウントを削除したのであった。

冗談こそ本気にならねば面白くない。

で、本題の指し手の方だが「将棋を習い始めたころの私」の指し方を意識した。すなわち、まず棒銀、次に棒銀、そして囲いその他は入門書レベルということである。要するにこの辺の本の知識しかなかった。

三宮は触れていなかったが、この本が攻めの基本だった。中原名人の棒銀本だが、今や定番の井上九段の棒銀本よりわかりやすい。三宮は将棋初心者なので、この本が限界だったろう。

総じて、三宮は「将棋を習い始めたころの私」として将棋を指した。囲いもエルモ囲いより舟囲いを優先して組んだり、かなり無理めに棒銀を仕掛けている。とはいえ初心者時代にはこれで1年は棒銀を続けたので、それなりに形になったように思う。

キャラクターは創作者の一部と言われるが、三宮も私の一部である。

6.話し方について

話し方はボイスチェンジャーのことも意識した。今回使用したボイスチェンジャーは音声を認識して声を変換する。なので普段使わない単語や笑い声の変換は安定しない。特に苦手なのは「金」や「銀」で、ちゃんと文章で言わないと金が「ひん」に変換されたりする。

なので意識して「金で取って」や、「銀を打って」などの文章で喋るようにした。また私は早口なのだが、三宮はゆっくり喋るよう心がけた。印象の問題もあるが、これもボイスチェンジャーの関係もある。

おかげで配信中、「音質が悪い」という感じの反応がなかったのはとても良かった。

7.ロールプレイについて

さて、三宮は一宮さんと四宮さんを尊敬している。
私は尊敬していない。
(部分的に尊敬すべき部分がある、ぐらいならYes)
こういう場合にどうすべきかだが、本当ではないが嘘でもないことを言うべきである。言い換えればキャラクターと私自身の意見をすり合わせておくとでも言えるだろうか。

配信の風景

さて、私と三宮の間で合意できるのは以下の点である。
1.一宮さんは雑談が上手かったり芸人として尊敬できる
2.四宮さんは陰キャだが執筆能力は本物で尊敬できなくはない

更に三宮の事情として
3.光源氏のせいで男性恐怖症気味。性的な話題に疎い二人は相対的に高評価
がある。これは私も特に違和感なく飲み込める事情だ。

という訳で即興で一宮さんと四宮さんを擁護する一幕も配信内ではあった。
今後、色々とロールプレイをする人が出るかもしれないが、
根本的に自分と合わない設定は作らない方がいいだろう。とっさの質問に回答できない。

三宮に関しては『源氏物語』と史実の平安時代のおかげで、彼女の視点をおおむね共有することができた。
他方「歴史が嫌いなキャラ」のロールプレイは私にはできないだろう。

8.設定崩壊と知識について

Vtuberにおいて初配信で設定は崩壊するものだと知られている。
e.g. お嬢様キャラなのにアパート住まい、女子高生設定なのに20年以上前の話をする

しかし私がそうした逸脱を嫌う性質だというのはなんとなく想像がつくように思う。さて、ではそうした設定崩壊を避けることができるのは、知識である。

すでに書いた和歌を読むというのも、平安時代は和歌が力強い時代だったという知識からきている。和歌の成立も軽くは抑えている。

次にこういう問題が出てくる。

これには即興で返したが、いい返しだったように思う。

安倍晴明は平安時代に活躍した人物で、貴族のお付きとして様々な逸話を残している。細かいことを言えば安倍晴明と紫式部は200年ぐらい差がある人物だが、まあ違和感がない設定でもある。

ここからの派生で安倍晴明という「なんでも屋」が三宮の配信をサポートしているという着想を得た。便宜上、私が安倍晴明に収まったが、これもなかなか上手くいったように思う。既存の形式なら「三宮のプロデューサー」のような表現になっただろうが、それより「お付きの陰陽師」の方がはるかに良い。

他にもちょっとした知識は会話の役に立つ。

『水鏡』は鎌倉時代成立と想定されていて、時代的にやや足が出るがパッと見て違和感に気づくのは困難だ。

以上、結果的に知識が役に立ったが、おそらくなにかを演じる上で知識は必須ではないだろう。だが以上のような「広げ方」ができるのは知識のなせる技である。想定したキャラクターの時代の常識は抑えておいた方が、できることが増えるのでおすすめしたい。

9.最後に

以上の通りである。当初はどっきりで始めた構想だったが、もとより私はクリエイター寄りの人間である。三宮を冗談で終わらせるのではなく、私の創作キャラクターの一人として今後も活躍してもらうつもりである。

おわり。