野田クリスタルの自己演出力の高さと誠実さ

M-1グランプリから数々の名言が生まれてきた。
敗者コメントでは、東京ダイナマイトハチミツ二郎の「昨日の夜にもしかしたら優勝できるかもしんない、みたいに思ってた自分を殺したいですね。」や、笑い飯西田の「思てたんと違ーう!」審査員松本人志に「笑いながらのツッコミが好きじゃない。」と言われたニューヨーク屋敷の「最悪や!」が魂の叫びといった感じで印象的だが、個人的に2020年に優勝したマヂカルラブリー野田クリスタルの勝者コメント『最下位を取っても優勝することあるので、諦めないで下さい。みなさん。』がすごいと思う。

最終ステージで「吊革」という革新的な漫才をして優勝が決定した後で変にボケず、瞬時にチャンピオンの振る舞いをした。そして、他の芸人、視聴者、人生で失敗をした人、悩んでいる人の心を熱くする、自分たちだから言えるコメントを言い放った。

M-12020で野田クリスタルを初めて見た人はマヂラブの漫才の印象から「この人はちゃんと会話ができるのか?」「テレビにうつしても大丈夫な人なのか?」と思ったかもしれない。だから、チャンピオンになってこれからテレビの世界で活躍していくことを見据えて『すごく真っ当』なことを言ったのだと思う。『ちゃんとした人』という印象を与えたと思う。

野田クリスタルは若い頃から自分の見せ方を気にしていたと思う。
学校へ行こう!では、セールスコントというコンビ名でスキンヘッド姿で『ヤンキーがポップなショートコント』をやっていた。
吉本でマヂカルラブリーというコンビを組んで初期は長髪、タンクトップにボロボロのジーパンでネタをやっていた。劇場やM-1の予選で目立っていた。この頃は、他の若手との差別化やネタの爆発力を考え『奇抜な変人』という自己演出をしていたのだろう。
M-12017で敗退した後からの『上沼恵美子との因縁』も過剰に作っていたと思う。

最近は『マッチョ芸人(クリスタルジムオーナー)』『ゲーム芸人(野田ゲー制作)』『ハムスター芸人』『大宮セブン』など様々な肩書きがあるのでテレビに出演する上ですごくキャッチーな存在になっている。

それは、野田クリスタルが戦略的に行なっているというよりかは、昔も今も自分の持っているパーソナリティーや芸人としてのあり方に対して、より誠実に突き詰めていった結果なのだろうと思う。
芸人としての誠実さからくる自己演出能力の高さだ。


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