見出し画像

Welcome Back 平野佳寿 その現在地とこれから

こんにちは、シュバルベです(๑╹ω╹๑ )

2月6日未明、オリックス・バファローズファンを喜ばせる一報が届きました。

2017年シーズン終了後に海外FA権を行使しアメリカに渡った平野佳寿投手が4年ぶりとなるオリックスへの復帰が決定しました。2014年には62試合に登板し40セーブを挙げ、これは今なおパリーグの日本人選手としては唯一の40セーブ越えです。

オリックス・バファローズ公式HPでも大々的にその帰還が取り上げられています!

今更ですが軽くオリックス在籍時代の経歴を書いていきましょう。

平野投手は2005年に京産大から大学生・社会人希望枠でドラフトにかかり、入団後四年間は先発として躍動。ルーキーイヤーから172イニングに登板し10個の完投、7勝を挙げました。2010年から中継ぎに転向し、17年まで通算549登板48勝69敗156セーブ169HP。特に転向後の8年間中、7年で年間50試合以上に登板したタフネスさが魅力です。

18年に渡米しダイヤモンドバックスに入団、2年のメジャー契約を結ぶと1年目から歴代日本人最多となるシーズン75登板。防御率も2.44と奮闘しました。2年契約が終わりFA権を獲得すると、20年はマリナーズに所属。しかし難しいシーズンの中で7月には自身もコロナウィルスに罹患してしまうなど外因的な要素も絡み、同年は13試合12イニングで防御率5.84と苦戦してしまいました。

以下では、直近二年間の平野投手のメジャーでのパフォーマンスを分析し、オリックスで求められる役割を考えてみましょう。

1.直近二年間の総合成績

まずはMLBでの19年と20年の成績を見ていきましょう。直近の2020シーズン、不甲斐ない結果に終わってしまいましたが、総合成績は次のようになります。

画像1

失点が多くなってしまっている原因は12イニングで被安打18と打ち込まれてしまった点でしょう。その中にはツーベース3本とホームラン2本を含んでおり、長打が目立ちます。与四球も多く、ヒット・フォアボールでランナーを溜めてヒットで返されるという展開が目立ちました。13度の登板機会で無安打・無四球に終えたのはわずか2回はやはり厳しいですね。

2本の被弾のうちの1本はこちら。

アウトコースいっぱいに投げ切っているのですが、ラム選手にうまく逆方向に放り込まれました。

左右別にみてもともに被打率.300を超え、特に対左に対しては出塁率5割と、2打席に一度は出塁を許してしまいました。

一方、19年の結果はこちらです。

画像2

防御率4.75も、53イニングに投げて被安打はイニング以下の51本、与四球率も20年より3%以上低くなっています。比較した時に目立つのはイニングよりも多い奪三振能力の高さでしょう。

例えばこちらの現DeNAタイラー・オースティン選手とのマッチアップ。

鋭く落ちるフォークボールでの三振。平野投手の真骨頂ですよね。

2.投球スタイル

続いては平野投手の投球内容を見ていきましょう。2020年の球種構成は以下のようになります。

画像3

19年よりややフォーシームの割合が減っていますが、フォークの割合の方が多いのは共通点です。より投球数の多かった2019年の方がよりボールの性質を捉えやすいと思うので、2019年の球種構成についても調べてみました。

画像4

特にフォークの被打率は.203と低く、40%もの空振り率を誇るまさにマネーピッチでした。こうして比べると、わずかながらフォークもフォーシームも平均球速が落ちている点は留意すべきでしょう。

2019年のコース別の投球割合とコース別打率はこちらです。

画像5

投球割合からして、低めのボールゾーンを振らせて打ち取るピッチングが目立ち、左下・右下ともに打率2割を切っています。その一方で、打者の目付けが低いこともあり、低めのストライクゾーンでは被打率が高くなっていることがわかりますね。

各球種のMLBの平均球速との差および変化量の差はこちらです。

画像7

MLB平均に比べて各球種とも遅いですが、特徴的なのはフォークボールの落差でしょう。右の表の薄い円がMLB平均の変化量なのですが、平野投手のフォークボールは明確に平均より落ちています。

また、シュート方向にズレながら投じられるこのフォークは、ストライクを取るためのカウント球にも、三振をとる決め球としても使われます

こちらはストライクを取るフォーク。

そしてこちらが空振りを取るためのボールゾーンへ落ちるフォーク。

右にも左にもベース向かって右下のコースの高低を軸としたフォークボールの制球力は流石のものです。

低めに制球されたフォークボールを振らせることができている要因の一つは、フォーシームと全く変わらないリリースポイントでしょう。

画像6

上の赤丸がフォーシーム、青丸がフォークなのですが、6.2Ftでほぼ完全に一致しています。全く同じフォームとリリースポイントから投じられるフォーシームとフォークボール、その落差は圧倒的でMLBでも2球種で通用して何ら不思議で無いですね。

もちろん、MLBでもこの特殊なツーピッチに着目し、fangraphsでの記事がFullCountで取り上げられました。

こうしたツーピッチは、この2球種であれば完全にコントロールできるという自信と実績からくるものです。実際、ツーシームのような他の球種の習得について、インタビューで次のように語っています。

日本での12年間で僕は一度もツーシームを投げたことがないんです。覚えたら面白い球になるとは思うけど、それを投げることによってここまで磨いてきたフォーシームに影響が出て、今のボールが投げられなくなるのがいちばん怖い

こちらに語られているように、ツーシームのような他の球種も投げられるかもしれませんが、それを習得することで既存のボールに影響が出ること及び、投げるからには左右高低で制球のできるレベルにすることを考えると、現在のフォーシームとフォークの二球種を高いレベルで操る方が優先順位が高いと判断しているそうです。

実際、菅野選手もかつてシンカーを新球として取り組みましたが、フォーシームへの悪影響が出てしまい18年途中から投げなくなっています。

指先の微妙な感覚で勝負する以上、新球の習得はリスクも含んだものになるというのは納得です。

3.オリックスでの起用法と影響

さて、4年ぶりの帰還となった平野投手ですが、オリックス・バファローズではどのような起用法になるのか考えてみましょう。

私としては、基本線はクローザー争いに食い込ませていくと考えています。

年齢こそ36歳ですが、球が良ければ年齢は関係ありません。昨年引退した藤川球児投手や晩年になってもクローザーを務めた上原浩治投手を見ればそれは明らかです。また、クローザーはある意味ツーピッチで乗り切れる役割です。絶対的に信頼できる球種が2つあればたとえランナーを出しても打者6人でスリーアウトを取ることはできてしまうからです。

オリックスにも漆原投手やヒギンス投手らクローザー候補に挙げられている選手はいますが、いずれもクローザーとしての経験はありません。9回の最後を締める守護神にはボールの良さに加えて強いメンタルが必要となります。平野投手がよく繰り返す言葉がこれです。

「その日の結果に一喜一憂はしない。目標は次の試合で抑えること。それが大事」(2018年7月19日Numbersイチローも「地味すぎて……」。平野佳寿の“滋味”溢れる大活躍。

この切り替えのメンタルこそクローザーにはなくてはならないものでしょう。先発ー中継ぎが必死に紡いできたリードをぶち壊してしまうこともある抑え投手は、たとえ一日打たれてしまっても次からの5試合で抑えればいい、それぐらいの気持ちで望んで欲しいですよね。

平野投手が帰ってくることは他の選手にも好影響を与えることになるでしょう。例えば先に抑え候補として名前を挙げた漆原選手はフォーシームが投球の6割、フォークが2割を占めています。

特にフォークボールは決め球として使用しており、落ちる軌道は平野投手ほどではありませんが球速は平野投手に近いものです。育成から昇格し、まだ支配下2年目の若手投手ですが、平野投手からぜひクローザーとしてのメンタリティとフォークの一層の磨きをかけて欲しいものです。中嶋監督からも次のように期待をかけられています。

中嶋監督は「(移籍前も)ブルペンの中心だったわけですからね。向こうでも活躍していますし、素晴らしい補強だと思う」と歓迎。経験値に加え、後輩の面倒見が良いなど人望も厚いだけに「ブルペンでいい雰囲気をつくってくれるというか、若手も準備しやすくなる」と“平野効果”を早くも期待した。

そしてもう1人、早生まれのため学年こそ平野投手が一個上ですが同じく現在36歳の増井投手にとっても大きな刺激になるでしょう。いうまでもなく、増井投手もクローザー時代はフォーシームとフォークのツーピッチで平野投手を上回る通算163セーブを挙げています。昨年半ばから先発転向となりましたが、歳の近い自分と同じ投球スタイルの平野投手が戻ってくることでもう一花という想いは強くなるでしょう。

そして、最後にこれから海を渡るかもしれない若手たちへも古巣に戻ってきたというモデルケースになるでしょう。平野投手は次のように語っています。

「オリックスには恩義がある。日本球界に戻るなら、オリックス以外には考えられない」

近年、NPB各球団の努力も実り、MLBから帰ってきた選手が古巣に戻るパターンが増えています。YS青木選手やT藤川投手のように、帰国後も培った経験を活かして一線で活躍する選手が目立ちます。今のオリックスの主戦選手もMLB希望を抱いている選手がいるので、海の向こうに渡った後再び戻ってくる魅力的なチームにすべく努力をしないといけないですし、平野投手のようなロールモデルは今後に向けて大きな一歩になるかと思います。

そしてそのロールモデルを完成させるための一つは私たちファンにできることで、古巣に帰ってきた平野投手に万雷の拍手と喝采を浴びせること。ファンから必要とされ熱狂させること、それは選手にダイレクトに伝わります。戻ってくる場所があると多くの選手に感じさせること、私たちにできる最大の努力はそれでしょう。いうまでもなく、私も平野投手に多くの声援を送りたいと思います。

早々に宮崎入りしキャンプで動く姿も見られそうですね。楽しみです!

■出典

なおTOP画はオリックス・バファローズ公式インスタグラムより拝借しています。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?