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あたしのソレがごめんね

一つ足りないのと、一つ多いのだったら、どっちがいい?
「あたしは一つ足りないの」
「私は一つ多いの」
同じ部屋の中で、あたし達はそれぞれの運命を選んだ。


一章 ーあたし達のことー

あたしら双子はずっと一緒だった。
小さいころから人前では全然話さない妹に変わってあたしが周囲の大人に代弁してきた。
おなか痛いんだって。この本が欲しいんだって。あなたと一緒に遊びたいんだって。
でもある日からそれはやめた。妹に向けられる周囲の目が気になりだしたから。

あたしは右の肩から先が無い。誰がどう見ても身体障碍者だ。
片腕がないあたしが妹の世話を焼きすぎるから、周りの大人から妹は甘ったれていると白い目で見られるようになってしまった。
妹は他人の顔色にとても敏感で、何を思われているか考えて尚更自分の口で発言できなくなってしまうのをあたしは知っていた。

あたしは右腕がなかったけど、これで苦労していると思ったことはなかった。両手がある人生を送ったことがないし、それはもうあたしの人生じゃない。
それにもう一つ、「あたしに右腕が生えてれば」なんて思えない事情があった。
あたしの右腕は妹の股間にくっついてしまっているからだ。
そのせいで妹はずっと自分に自信が持てなかった。

あたし達がお母さんのお腹にいた頃、妹の股間にはソレがあったからお医者さんは「男女の双子です」と両親に言ってたらしい。だから先に生まれたあたしには朝美、後に生まれたこの子には夕也って名前にする予定だった。でもあたし達は女の姉妹だった。妹の名前は夕希になった。

あたし達が高校に上がった頃には、正反対の双子と言われるようになった。天パで一重瞼のあたしに比べて、夕希は目鼻立ちが良くて髪もサラサラで、誰もが振り向く正真正銘の美少女だった。でもどのスカウトや男子からの告白も受け入れなかった。そのうち「調子に乗ってる」と陰口まで叩かれるようになって、あたしはむず痒かった。
あたしのソレが夕希についてなければ、今頃アイドルになったり超イケてる彼氏と放課後デートしたりしてるかもしれないのに。

ごめんね、夕希。あたしのソレがごめん。




続く


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